黄色い小人のまん丸な家
子供に読み聞かせられるお話を目指しました。
家を建てた赤い小人が言いました。
「三角の家を作ったぞ。どうだ、ツンッとしていてかっこいいだろう」
それを見た青い小人は、次の日家を建てました。
「四角い家を作ったぞ。どうだ、広くて良いだろう」
それを見た緑の小人は、次の日家を建てました。
「つつの家を作ったぞ。どうだ、カドが無くて柱みたいだ。オシャレだろう」
始めは自分の家を自慢していた三人の小人たちでしたが、やがて自分の家こそが一番だとケンカをし始めました。
「四角なんて、広いだけで全く面白みがない」
と、赤い小人。
「つつの家なんて、縦に長くて不便じゃないか」
と、青い小人。
「三角なんて、頭がすぼんだ家、ちっとも良くない」
と、緑の小人。
お互いの家を悪く言う三人。
そこに黄色い小人が遊びにやって来ました。
「こんにちは。みんなが家を作ったって聞いてね。さっき、ぼくも家を作ってみたんだ」
それを聞いた三人の小人は、黄色い小人がどんな良い家を作ったのか、見てやろうと言いました。
黄色い小人は喜んで三人を招待します。
「これがぼくの家だよ」
「何だこれは」
「まん丸じゃないか」
「こんな変な家見たこと無い」
黄色い小人の家は、ボールのようにまん丸でした。
三人の小人は黄色い小人をバカにしたように笑います。
「でも、ぼくはこの家が好きなんだ。中だって意外と広いんだよ」
黄色い小人は三人を家の中に案内しました。
その時です。
強い風がピューウと吹きました。
「わ、わ、わぁぁ」
四人の小人が入ったまま、まん丸な家はコロコロ、コロコロ。
転がり出してしまったのです。
「目が、回るー」
「なんて家だー」
「ひえぇー」
しばらくして、まん丸な家は、草やぶにぶつかって止まりました。
「良かった、止まった」
四人の小人は、ここはどこだと、窓の外をのぞきました。
すると何ということでしょう。
窓の外にはキラキラと光りかがやく湖が広がっているではありませんか。
湖のほとりには、色とりどりの花が咲きほこり、キレイな蝶が飛んでいます。
「何て美しい場所だろう」
黄色い小人はため息をつきます。
「こんなステキな景色を見られるとは」
赤い小人もうっとりとしています。
「まん丸な家に入らなければ見られなかったな」
青い小人は小鳥のさえずりに耳をかたむけます。
「散歩する家か。素晴らしい家だ」
緑の小人も胸に手を当てて感動しています。
どれ位そうしていたでしょうか。
しばらくすると、また強い風がピューウと吹きました。
黄色い小人のまん丸な家は、またコロコロ、コロコロと転がり出します。
「わあ、まただ」
「また来よう」
「次はまた違うところが良い」
「またみんなで行こう」
すっかり仲直りした四人の小人たちは、上機嫌で転がります。
しばらくして、まん丸な家はコツン、と何かにぶつかって止まりました。
「ここはどこだろう」
黄色い小人は窓の外を覗きます。
窓の外には三角の家、四角い家、つつの家が見えます。
「戻ってきたようだ」
赤い小人が少し残念そうに言いました。
「しかし楽しかった」
青い小人は黄色い小人と握手をしました。
「散歩に行くときは声をかけてくれ」
緑の小人も黄色い小人に言いました。
「もちろんさ。でも一つ、頼みがあるんだ」
黄色い小人は三人の小人に、あるお願いをしました。
────────────────
ある原っぱに、小人たちの住む家がありました。
ツンッとした三角の家。
どっしりした四角い家。
オシャレなつつの家。
そしてその三つの家とヒモでつながれた、ボールのようにまん丸な家。
何も知らない旅人が見たら、変だと思うでしょう。
でも、小人たちは、これで良いのです。
天気が良い日は、ヒモをほどいて四人で仲良く、コロコロ、コロコロ。
楽しくお散歩しているそうですよ。