12-5
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周りは全て敵、敵、敵。完全に敵に囲まれた。仲間は既になく、ただ一人。ジョットキは悔しさに歯ぎしりしていた。この時を幾千万日と待ち望んだことだろうか、それが……、犬死にとなると思うとやりきれない。悔しさに涙が滲んで来た。その時だ、天使たちの後方で何か異変が起きたようだ。天使たちもその方向に視線を向けているようだが、動揺が走り、囲っていた陣形が崩れた。その崩れたところからこちらへ向かって来る者がいる。倒れていった者たちだ。
「お前たち……」
ジェットキが驚いていると、さらに後方よりこちらへ来る者がいた。
「よっ、ジェットキのだんな。応援に来たぜ」
鬼族のキンザンが笑っていた。その後ろには大勢の鬼たちがいた。
「お前たちどうしてここに」
「話は後、ちゃっちゃと終わらせようぜ。だんな」
キンザンがジェットキに背を向けると一気に闘気をみなぎらせた。キンザンの体がみるみる赤くなり、しまいには、炎に包まれた。
キンザンが棍棒を振り回すと、近くにいた天使たちが炎に包まれ落ちていった。
キンザンは振り向きどうだという顔をした。すこし余裕を持ったジェットキはまだまだだと言って、一つブレスを吐いた。一瞬にして前方の天使たちが消える。キンザンがヒューと1つ口笛を吹いて、野郎ども行くぞ、おう、と鬨の声とともに戦いが始まった。
ジョットキはミカエルを見ていた。アイツだけは、この俺の手で殺す。再度燃え上がった闘志をみなぎらせ、奴の方へ飛んで行った。
上方で、高みの見物と決め込んでいる、いけ好かない奴。俺が近ずいても振り向きもしない。
同じ高さまで到達した時ようやく振り向いた。
「君はヤーマン台国を知っているのかね」
「ああ知っているさ。俺はそこに居た」
「ほう、生き残りがいたとは思わなかったな。禍根は残さない、が俺の主義だったのだがな。しょうがない、ここで絶つか」
ミカエルが切りかかって来る。スピードでは圧倒的の俺たちだ。軽く避け体制を整える。おっ!避けたと思ったが頬に違和感がある。ミカエルが笑っている。あの剣か?、くそ、変な物を持ち出しやがって、迂闊に接近できないな。
一定の間隔をあけブレスで対抗する。ミカエルの奴、ブレスを避ける程にはスピードがありそうだ。カスリもしない。そうなるとこちらもリスクを犯しても接近戦に持っていかなければならない。
接近戦で、傷は浅いがどんどん増えていく。あの剣のカラクリが分からない。厄介だな。
ジェットキは人に変身して剣を持つことにした。多少スピードは落ちるが剣技には自信がある。
接近して剣と剣を合わせる。剣同士のぶつかり合いでは、傷を負うことはなかった。そうと分かれば戦いようがある。今度はこちらから斬りかかる。激しい剣技に受けるのがやっと、といったミカエルが距離を取ろうと退がるも逃がさない。さらに激しく斬り込むと一瞬だが隙ができた。ジェットキはそれを逃さず渾身のブレスを吐いた。
ミカエルがブレスに包まれ落下していった。湖面に落ち沈んでいくと、空が明るくなり陽が差してきた。
キンザンがジェットキの方へやって来た。
「よう旦那、やったじゃねえか」
「お前ら。飛べるのか」
「こっちとら、修行したからね。今ならジェットキさんといい勝負できますよ」キンザンがニヤリと笑うが、ジェットキは一言。
「100年早い」




