12-2
♢♢♢12-2
賑やかな声が、僕たちが入っていくと止まった。それはそうだろうな、みんな、この子誰?というように見ている。
僕は中に入ると、椅子に座り、この子を膝の上に乗せ「僕の娘だ」シーンと3秒、稲光の後の雷鳴が轟く。「冗談だ」の声が届かないほどの大騒ぎ。
騒ぎがやっと鎮火したところで、魔王の子で名前が「ミルナ」と、みんなが知る。
ビリーが駆け寄り、ミルナの頭を抱きしめて泣き出した。自分の境遇とオーバーラップしたのだろう。ただ、バニースーツだと、滑稽に見えるのは俺だけだろうか。
「そろそろ時間が来たようだ。ここはもう直ぐ崩壊する。みんな出て行ってくれないか」突然老師がそう言った。確かになんかヤバイ気がする。そのことを老師に尋ねると、
「ここはもともとミルナを守るために作られたもの。そのミルナはもうあそこにはいない。結界が崩壊するのは自然なことだ」
「老師はどうするおつもりで……」僕は尋ねる。
老師はニコリと微笑み
「わしはこの日のために生きてきた。もうそろそろあっちへ行って、久し振りに魔王とお酒を飲みたいよ」老師の顔には、重荷を下ろした、ホッとした喜びに満ちていた。あんな顔されたら何も言えないじゃないか、僕は背を向けて手を振った。涙を見せないために……。
結界を抜けると、そこは荒涼とした砂漠地帯で、何の変化もない。だが、アカトには、崩れ去った結界を感じ取っていた。
結果的に得るものはなかった。それでもアカトはここへ来てよかったと思った。老師、魔王と酒を飲めるといいな。さようなら。そう言ってその場を後にした。
デス・デューンを出たところで、僕はみんなにカースグランドへ行くことを話した。
ジェットキが僕のところへ来て、尋ねる。
「大丈夫なのか」
「分からない。それでも、もう待つのは嫌だ。それに、老師がいない今となっては、奴に対抗できる手段を知るものはいないと思う」ジェットキはアカトの迷いない目を見て信用することにした。
「うん、迷いないいい目している。俺も付き合うぜ、アカト」ジェットキはアカトの肩を軽くポンポン叩き、一つ頷いた。
グリズグマがアカトのところへ来て、
「アカト、コール・マイン様に会えるのか」
「ああ、会えるよ。ただし、足手まといになるようなら、置いて行くぞ」
「本当だろうな」グリズグマは涙目になっているが、嬉しいのだろう。気合いがみなぎっている。
タイポイも同意の右拳を出したので、僕も拳をつくりコッツンする。
そのあと僕は女子のところへ行く。
「ここからは危険だ。もし嫌なら言ってくれ。好きなところへ連れて行こう」
女子たちは互いを見て、頷き、一緒に行くことを決めたようだ。
「ジェットキ、頼む」ジェットキがドラゴンに変身する。若干一名、引きつった悲鳴をあげるが、容赦なく全員搭乗させる。
決戦の地カーグランドのビーワン湖へ。




