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ビリーが恥ずかしそうにシュンクの後ろについて来た。
老師がシュンクに試して来いと言い、僕にはこっちに来いと、歩き出した。
老師が地下に続く階段を降りていく。意図が知れずアカトは黙々と従う。最下層に着いた時、転送の魔法陣が発動して、別の空間に出た。そこはドーム球場のような空間で、僕たちは最上段の位置に立っていた。中央には長方形の黒い箱がある。そこへいく階段があるのだが、老師はそこで止まり、アカトを促した。老師にはここから先は、アカト一人で行くようにと僕を促した。
幾重にも張られた結界を抜け、箱の前に立つ。
蓋を開け中を覗くと、金色の髪、白蠟のような肌、黒一色のゴスロリファッションのまるでお人形のような小さな女の子が眠っていた。
生きているのだろうかと見ていると、突然パチリと目が開き、起き上がる。
僕が手を出すと、女の子は、僕の首に手を回して来た。そのまま抱っこして、老師の元へ行く。
「老師この子は?」
「魔王の子じゃよ」
魔王の子?、魔族は確か神々との戦いで滅んだはず。その時に魔王も死んだはずだと聞いていたが……。今から数百年も前の事だ。そうなるとこの子は数百歳ってことになる。言い方が悪いがババアだ。そうには見えない。ってことは、時間停止?、いや違うな。僕が結界を通り抜けた時、そのような感覚はなかった。じゃ何だろう。
「なあ、老師。この子は何歳だ」
「見た目じゃよ」
見た目って、この子10歳くらいにしか見えないぞ。
「わからないって顔しているな。簡単に言うと、アカト、お前は過去へ行ったんだ。そして過去からこの子を連れてきた。そういうことだ」
益々わからなくなったぞ。
「なあ、老師。それじゃ成長したこの子もいたのか」
老師が首を振る。
「いいや、この子はおそらく、魔王が倒された後に、この子も殺されたと思う。それは魔王も想定済みだったのだろう、結界に仕掛けをしていたのさ。この子が亡くなった時に発動する魔法をな」
「つまりこういう事か。僕は、幾重にも張られた、タイムマシーンのような結界を通り抜けて、あの子を連れて来たと……」
「うむ、当たらずとも遠からずじゃな」
成る程、それは凄いな。とても真似出来ない高等技術だな。ん!、あれ?、おかしいぞ。
「老師、何でこの子が魔王の子だとわかった。それにこの結界、そうそう作れるやつはいないと思うのだが……、なあ、老師教えてくれないか」
老師は少し迷っているのか、考えるような仕草をしてから話し出した。
「魔王と私は友でな、昔はよく一緒にお酒を飲んだものだ。その時、神々の動向が不穏で、わしに調べて欲しいと言われたんだ。わしはそれを軽く見ていたのじゃ。他にやることがあってな、わしが知った時は、全面戦争になっておった。なんとか魔王のところへ行った時、魔王はこの子をよろしくと言って、出撃して行った。その時はわからなかったのじゃが、この戦いは仕組まれていたのじゃよ。魔族を滅ぼそうという陰謀のな。今となっては主謀者はわからないがな」
「それでこの結界を……」
「ああそうだ、我が子だけでも助けたかったのだろう。結界の細工は、わしがやったけどな」
「それじゃなんで、僕なんだ。老師が……」老師が首を振り、僕は口を噤む。
「わしはここから出られないんだ。あの子を見守る事で生きてきた。それがわしなりの魔王に対してのケジメだ。この子に見せやってくれ、世界を」




