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「ねえ、はやく~」グリズグマは上機嫌でタイポイの腕を引っ張る。それに反してタイポイはというと、駄々をこねた子供のように拗ねている。
アカトとグリズグマのわだかまりが消え、グリズグマはアカトたちについて行くことにした。
タイポイは猛反対したが、彼はタイポイと同じ4豪傑の一人、つまり強い、そんな人が目的も同じくしているのなら反対する理由がない。少しくらい性格に問題あっても我慢できるだろう。
それより昨日グリズグマが言ったことが気になる。入れ知恵した奴、僕が勇者であり、その仲間まで知っている。それに何故ここを通るとわかった。
「なあジェットキ、つけられていると感じたことあったか」僕が横を向くと、ジェットキが首を振っているのが見えた。
ーー僕やジェットキがわからないというと、相手は神族か。それも上級天使、神まで関係しているとなると厄介だな。僕たちに勝てるか?、厳しいだろうな。
僕たちがやって来たのは、魔族と神族が戦った最終決戦の場と言われ伝説となった場所だ。ここで神が勝利し、悪魔が滅んだ。だからこの世界には悪魔がいない、そう言われている。
その戦いがいかに壮絶であったか目の前の防護壁を見ればわかる。
今なお続く死の砂の侵食、その防護として建てられた擁壁は高さ20m厚さ5mもある壁で延長に至っては20kmにもなる。
そこにある監視塔は、防護壁の頂上にあり、中心にある塔はひときわ大きく、そこだけは幅10mの防護壁となっている。
監視塔は5km毎にあり、そこへ行くには、中心の監視塔からのルートしかない。毎週左右に分かれ交代の兵士が監視塔へ向かうのである。
もちろん各監視塔にも宿泊設備が整っていて、不足分については交代要員が持参して行くことになっている。
こんな地にも人が集まるとなると、商売が成り立ち、多くの人が集まり、町が形成せれていった。
また防護壁からの眺めも絶景で、観光地として賑わい、兵士たちに払う給料以上の収益となっている。それゆえ観光客には親切な町とも言える。
僕たちは入場料を払い頂上へと向かった。かつて知った記憶を頼りに左側の出口から外へ出る。眼下を見下ろすと、驚いたことに砂の侵食がすぐそこまで迫っている。僕の記憶によれば、はるか先のはずだが……、それだけの歳月が流れたと言うことか……。
ノスタルジックに浸っている暇はない。透明化の魔法を使い、頂上より『デス・デューン』へと降り立つ。
デス・デューン、この地に入った者は、生きて出られないことから、この名が付けられた。
アカトが以前来た時は、この砂丘の先に村が見えた。
旅人は村が見えることをいいことに、近道とばかりに、警告の看板を無視して入って行く人たちが後をたたなかった。
入った者は、歩いても歩いても遠く遥か先にある村を見ることになる。異変を感じた旅人が、引き返そうとしても後の祭だ。もし、上空より旅人を見ることができたなら、同じ所をぐるぐる回っている旅人を、あるいは、行ったり来たりしている旅人を見るになるだろう。やがて旅人は、疲れ果て倒れ、人生の近道をすることになる。
この地を今、アカトを先頭に進んでいる。もし上空より見ることが出来たなら、迷いなくまっすぐに進んいる一行を見ることが出来るだろう。




