第11章 デス・デューン
第11章 デス・デューン
神の元へ天使長ミカエルが訪れた。
「何事だ」神が訝しみミカエルに問うた。
「はっ、緊急のことゆえ非礼をお許しください」ミカエルが跪き許しを請うた。
「うむ、して何事じゃ」神は意地悪に許しを与えず問うた。
「ルシファーが反旗を翻しました」ミカエルが、当然下を向いたままの姿勢で答える。
「ほう」と、一言いって、沈黙が時とともに流れる。
神の口元がいやらしく歪む。
「ミカエルよ、こちらに来い」やっと許しが出て、ミカエルは神の元へ行く。
神が小声で御心を伝えた。
ミカエルは臣下の礼をして神の元を去っていった。
それを見送る神の顔に、神らしくない微笑みがあったが知るものはいない。
皇帝の玉座にミカエルは座り、跪いている皇帝に、神の御心が伝えられた。
「仰せのままに」皇帝は俯いたまま随順の意を示した。
それを聞いたミカエルは満足に歪み悦に入った笑みを浮かべていた。
もし、皇帝に頭を上げることが許されていたなら、皇帝は何を見ただろうか。それは神族の微笑みだろうか、魔族のそれだろうか。
「陛下よろしいのでしょうか。彼らは種族を代表する英雄ですぞ!」参謀が陛下に詰め寄る。
陛下は黙して語らない。焦れた参謀がなおも詰め寄った。
「相手はあの神をも凌ぐと言われた大天使ルシファ様ですよ。我々人類がどうこうできる相手ではありません。それを……」参謀は声を詰まらせたが、一呼吸おいてなおも続けた。
「我々に押し付けるなんて、これが神のやり方ですか」最後の方は怒気を含んでいた。
「言葉が過ぎるぞ」皇帝が鋭い叱責の声を参謀に向けた。そして意を吐露した。
「我に何ができる、これは神の御心だぞ。我が述べたなら罪だろう、しかし、これは神の述べた事だ、誰が裁くというのだ」皇帝の目から滂沱の涙が……、西日を浴びて赤く染まって見えた。




