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異世界で時代劇やってます  作者: ぽぷねこ
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迷宮都市ラビリーネ

第4章 迷宮都市ラビリーネ

トチバラ領、東には商業都市シーファームがある。広大な土地に、魔除けの宝石の産地故か魔獣や獣がいない。天災などの被害が少ない土地のため田畑が一面に広がっている。さらに海岸で取れる魚介類も豊富で、帝都の台所を担う重要な都市の一つとされている。また、西には迷宮都市ラビリーネがある。2000m級の連山その麓にぽっかり空いた洞窟は、ジャポン有数の大迷宮となっていて、そこで取れる魔石は良質で豊富。必然冒険者が押し寄せ、人が増え、それに伴う商売も多い。また、通年登山家が押し寄せるは、冬はスキーヤーで賑わったり、観光目的の客も多い。その東西の都市の中心に領主が住う城塞都市トチバラがあり、東西どちらへ行くにもここを通らなければいけない。他にも道はあるにはあるのだが、整備されていないわ、獣、魔獣まで出ることがあるわで、この道を通るのが当然なこととなっている。そのおかげで、城塞都市は潤い東北随一の裕福な都市となっている。

そこに住まう領主ゴーヨク・ナリキーネは、当然左うちわで、何の悩みもない幸せな暮らしをしていると思いきや、最近になって一つの悩みが出てきた。

それは、一人息子のボンボのことだ。いづれは私の代わり領主になる息子には、何不自由ない暮らしをさせてきたし、自由奔放、悪く言えば好き放題に育てた。それがいけなかったのか、突然「冒険者になる」と、言って、家出した。いちよう腕利きの護衛を付けているから、安心ちゃ安心なのだが、万が一ってことだってある。そのことを考えると、イライラしてくる。

「あーーもう、しんぱいだ~~」


一方、破壊された宮廷の修復作業は遅々として進まないなか、皇帝と宰相は密談していた。

「勇者の動向はどうじゃ」

「はぁ、本日中にはトチバラ領に入られるもようです」

「それで」

「おそらく、迷宮都市へ向かわれると思います」

「ほう、何故だ」

「今後旅を続けようとするならば、何処かで路銀調達が必然、よって迷宮に入られると思います」

「ほう、迷宮とな」

「御意。そこは初心者でも攻略できる迷宮ですが、なにぶん広大な迷宮のため上級者でも迷うことがあるそうです。迷宮で迷って、魔獣に殺されることも少なくないとか」

「そうか、魔獣にのう。そうか、そうか、魔獣にのう」と、言って皇帝は笑い出した。声は大空へと消えていった。


迷宮都市ラビリーネ、石積みで出来た防御壁は高く、優に20mはあろうかと思われるほどで、延長に至っては肉眼で判別できないほどに続いていた。正門は高さが防御壁の半分くらいはあり、幅に至っては人間十人が横に並んでもゆうに通れそうな幅があった。

その正門の横には人が一人通れる通路があり、左側が『入』で右側が『出』になっていて、徒歩で通る人はみんなここを通らなければならない。僕たちは当然左側に並び順番を待っていた。僕たちの順番になると、来た理由を聞かれただけの拍子抜けするほどの簡単なものだった。

無事中へ入ると、すぐ左手に『迷宮都市ラビリーネへようこそ』の看板があった。中を覗くと、そこはこの都市の案内所になっていて、奥のカウンターには綺麗なお姉さんが三人いた。スケさんは「すごいです」の連発で意味不明だし、カクさんといえば、借りて来た猫然としていた。

ここはとりあえずリーダーってとこで、カウンターの真ん中の女性のところへ行き、正直に言った。すると彼女はとても素敵な笑顔で

「これが、この都市のマップです。それとこれは、この都市での守らなければならない法律となっています。よく読んで、楽しい旅にして下しいね」と、言って、とびっきりの笑顔をくれた。


「で、でかい」

冒険者ギルドを近くで見ると、デカさに圧倒された。看板がなければ旅籠屋と間違えるところであった。

ドアを開けると、テーブル席がいくつかあり、パーティー同士の情報交換や四方山話に花を咲かせているものが数グループいた。正面奥がカウンターとなっていた。右側は壁いっぱいがクエストや連絡事項等の掲示物でいっぱいだったし、左のほうを見ると、防具や武器、アイテム等の小さな店がいっぱい並んでいた。冒険者ギルドと言うからもっと殺伐としているかと思っていたが、案外敷居が低くくて安心した。

僕たちは、奥のカウンターの方へ行き、受付の女性に冒険者登録をお願いした。受付の女性が奥の方へ消え、しばらくすると戻ってきて「お名前をお願いします」と、言ったので、先にカクさんが「エリザベート・ジュレリュール・カクラートだ」と、言うと「エリザベート・ジュレリュール・カクラートさんですね」と、一発で言った。さすがだ。

「では、このカードのこの部分に指を置いてください」

「こうか」と、言って、カクさんは人差し指を言われた所に置いた。

すると、カードが光り出しステータスが表示された。

「レ、レベル37ですって」と、ちょっと大きめの声を発した。当然声は室内を駆け巡り、聞き取ったものが幾人かいた。

「おい、きいたか。レベル37だってよ」

「聞き違いじゃないのか」

「いや、たしかにレベル37って言った」

「おい、レベル37だってよ」

「レベル37だぁ~」

「レベル37、レベル37、レベル37」あっちこっちで噂している。

ーーまずい。嫌な予感するぞ。

何人かはこちらへとやってきた。

「次はわたしでーす。ミレネディス・セレナティス・スケートです。よろしくです」と、スケさんは相変わらずの能天気で言った。

「ひぇー、こ、今度はレベル39ですって」って、受付のお姉さんも驚きすぎだろう。周りにはさらに人が集まった。

「次は僕です。ミト・アカトです」そう言って手を置いた。

「おいおい、まさかレベル50ってことないよな」

「おれ、レベル50って見たことないっす」

「ここにレベル50以上の冒険者はいねぇよ」

「そうだよな」

「あいつどう見てもまだ子供だもんな」

みな、ゴクリと唾を飲み見つめる。

「こ、これは、レベル1です」そう、受付のお姉さんが言うと、みんな一斉にこけた。

「なんだ、なんだ、期待させやがって」

「ある意味びっくりだわ」など等さんざんけなしながら、みんな散っていた。ホッとしていると、鋭い視線に気付く。その方向を見るといつのまにか、一人の老人が目の前に立っていた。

「ほっ、ほっ、ほっ。中々面白い子たちじゃないか。ナキさん」

「あっ、マスター。いつの間にいたんですか」と、ナキさんと呼ばれた女性は、びっくりしたという顔をして、マスターの方を向き言った。

「ナキさん、あまり大声出すのは感心しませんよ」

「すいません。つい、興奮しちゃって」と、今度はしょんぼり顔をして、マスターに言った。表情がコロコロ変わる人だなと思っていると

「私はここのギルドマスター、ジョーン・ワンリー・タスマと言います。部下がとんだ失礼をして、すまなかったのう」と、それほど失礼をしたと思っていなそうに言ってきた。

先程から黙っている二人の方へ視線を向けると、カクさんはマスターをガン見していた。カクさんも、この老人がだだものでないと思っているのだろう。すると、マスターが「お嬢さんや、そんなに見つめないでくれるかのう。わしに惚れるのはかまわんが、つれがいるでのう。この歳で夫婦喧嘩はつらいからのう」と、言って、笑って去っていった。

カクさんが赤くなって下を向くと、スケさんは去っていく老人見て、カクさんを見て、また老人を見て「恋ですか、一目惚れですか」と、相変わらずドジっ子なことを言い出した。

僕はカクさんに「カクさん、わかりますか。あの老人相当強いよ」と言うと、カクさんは一言「ああ」と、言った。

去りゆく老人のステータスを見ると

種族 ヒューマン

ランク?

生命力 ???

攻撃力 ???

守備力 ???

魔法力 ???

素早さ ???

器用さ ???

運 ???

感 ???

職業 ???

個性 ???

となっていた。


ボー。

「カクさん、カクさん。そんなにドレッシングかけるとしょっぱいですよ」

ボー。

「カクさん、カクさん。それお塩ですよ。お砂糖はこちらですよ」

ボー。

ーーひひひ。これ、ドラゴンが火を吐いてるラベルのデスソース。これを、とろり、とろりと。

「カクさん、このホットドック美味しいよ。さぁ、食べて食べて」

パクパクパク。ボー。

ーーあれ?辛くないの。と、パクリ。

「ドハー」僕は、天に向かって、火を吐いた。辛いやんけー、死ぬかと思ったわー。それにしても、これは重症やな。

ボキッ。

「あらあら、カクさんカクさん、割り箸は、横にポキリと折るものじゃありませんよ」と、言うと「ウッ」と、言って反応した。あれ?もしやと思い、割り箸を取り、ポキリと折って「あ、折れた」と、言うと「うっ」と、また言った。ついでにもう一回ポキリ「うっ」ワンスモアポキリ「うっ」あっ面白いと思っていると、刺さるような視線を感じた。顔をあげると、スケさんの目が三角になっていた。

「ミトさ~ん」

「はい」

ーーやべー、スケさんってこんなキャラだっけ。

「あのねー。カクさんは剣が折れてショックなの」

「うっ」

「それを、先なからポキポキと、まるで剣が折れたみたいに」

「うっ」

「女の子はデリケートなの。それを折れた、折れたとバカの一つ覚えみたいに」

「うっ」

ーースケさん、さっきからカクさんダメージ受けていますよ。

「ミトさん、どこ見ているんですか。たしかに、やわな剣だから折れたのかもしれないけど」

「うっっ」

ーーわーこえー。スケさん、マジこえー。天然容赦ねー。

「ミトさん聴いてますか。この際、剣なんかどうでもいいのよ。要は心よ心」

ーーあちゃー、今度は剣、どうでもよい宣言しちゃったよ。カクさん、魂抜けちゃってますよ。こえー、天然マジこえー……。


事の発端は昨日のことである。

迷宮の1層2層3層とスルーして、4層より僕たちは探索に入った。先頭はカクさんで、スケさんは後方でマッピングのお勉強。出てくる魔獣は、ほぼ瞬殺のカクさん。この層では無双っぽい。僕は魔石をせっせと拾う役。スケさんは、最初は、あーとかむーとか言って唸っていたけど、1時間もしないうちに順調にマッピングできるようになったみたいだ。ついでにリサーチで4層全てマッピング成功。順調順調。さて5層へ行きますか。これがいけなかった『好事魔多し』先人の言ったことは肝に命じておくべきだった。最悪の結果となってしまった。いや、むしろ不幸中の幸だったかもしれない。

5層への階段を降りてすぐ、一体の魔獣に遭遇。4層を無双したカクさんは、余裕と油断を持った状態で対峙した。一発で決めようとした上段からの大振りの剣先を軽く躱す。アルマジロに似た体型で二足歩行のわりに素早い。予想外の展開に、気を引き締めて身構えたのはさすがにカクさんといったところか。今度は全力、素早い動きで剣を繰り出す。さすがに魔獣は防戦一方で、手も足も出ない状態。致命的なダメージはないものの、コツコツと魔獣の生命力を奪っていく。頃合いを見計らって決めにいく。大振りの決め手の一撃。カキーンと音がする。

「あっ、折れた」

「折れましたねー」

と、僕とスケさんが言うと、当のカクさんは茫然自失。やばい。素早くカクさんの手を取り、4層への階段へ向かう。

とまあこんな感じでカクさんは立ち直れない状態でいる。


しかし昨日のあの魔獣は異常だ。剣が折れるほど硬いはずはないのだが、剣が折れたのは事実で、するとあの魔獣は強化系の魔法を使えるのか?疑問だ。もしそうだとすると、5層以降は魔法が使える魔獣が出てくることになる。当然戦い方も変わってくる。それに、一番重要なことだが、鑑定ができなかった。相手のステータスが見えないとなると、迂闊に手出しできなくなる。戦ったらめっちゃ強かったでは命がいくつあっても足りない。これから先へ進むなら保険をかける必要がある。『転移の腕輪』『守りの腕輪』結構高いけどみんなの分購入する必要がありそうだと考えを巡らせていると「今日は一日ぱぁっとやりましょう。気分転換、気分転換です」と、大はしゃぎのスケさん。相変わらずの能天気だが、それもいいかもと賛成した。


とりあえず冒険者ギルドへ行くことにした。昨日預けた魔法石の代金を貰いに行くのと、ギルドマスターに会うのが目的だ。

スケさんはカクさんの手を引っ張りニコニコ顔で元気いっぱいだ。それにひきかえカクさんは、生ける屍然としている。

冒険者ギルドに入ると正面にナキさんがいた。ナキさんはこちらに気がつくと、奥の方へ声をかけた。僕たちがカウンターに近ずくと、奥から男の職員が布袋を持って出てきた。

ナキさんが明細書を読んでくれた。

「ダイヤ魔法石3個で大判金貨3枚。カラー魔法石は赤魔法石が30個、青魔法石が25個、緑魔法石が25個、茶魔法石が20個で合計大判金貨5枚です。確認してください」と、言って、明細書と布袋をこちらに寄越した。僕は明細書を確認し、布袋の金貨を確認して「確かに、間違いありません」と、一言。スケさんは、金貨を見ながら目をキラキラさせ、今日はこれでパァーとやりましょうと、テンションアゲアゲです。当の立役者というと、相変わらず魂が散歩中のようだ。

「あっ、そうだ。タスマさんいますか」と、尋ねると

「今日は、午後からです」と、ナキさんが言った。

「それじゃ、午後また来ますから」と、言ってギルドを出た。

*レクチャー6

この世界には魔法石というものがあって、需要度が非常に高いんだ。魔法石は大別するとカラー魔法石とダイヤ魔法石があるんだ。

カラー魔法石はその色にあった魔法が貯めることができるんだ。

例えば赤は火魔法、青が水魔法、緑が風魔法、茶が土魔法といった感じだ。ダイヤ魔法石はどの魔法でも一つ貯めることができるんだ。中には二種類の魔法を貯めることのできるものもある。価格はダイヤ魔法石が桁違いに高い。高いといえば、超レアな魔法石もあるんだ。それだと一国と交換したという伝説もあるから凄い。


ギルドを出て右に進むと『ラビリーネ商店街』のアーケードがあり、それをくぐり左へ曲がると一直線の道路両脇にいろんな店が並んでいた。

スケさんはお目々キラキラでキャッキャッ言って楽しそうだ。一方カクさんは相変わらずテンションだだ下がり状態。ちょっと魔法の言葉をかけてやる「この商店街に確か剣や防具の修復できる職人がいるそうだよ」と、言うと、若干目に輝きが戻った。一時的なものだけどこれでよしとしよう。

スケさんは早速アクセサリー店の前で目をキラキラしながら眺めている。つられて見ていると、アクセサリーには小さいけれど魔法石がはめ込まれている。それを尋ねると、一回こっきりしか使えないけど魔法が込められているそうだ。魔法種類を尋ねると意外と多い。照明の魔法、水を出す魔法、治癒魔法、解毒魔法、魔法耐性、物理攻撃緩和などで、持っていて損はないので買うことにした。スケさんは物理攻撃緩和で、カクさんは魔法耐性のを購入した。二人とも自分の弱点をよく知っているし、良い買い物だと思う。価格はしめて6両。商店街に入って早々6両が飛んで、出口までお金がもつか心配だけれど、二人とも嬉しそうなのでこれで良しとしよう。

その後、何軒か寄っていたら、カクさんが『剣、防具の修復承ります』の看板を見つけたので入ることにした。

中は、新品というより使い古された商品で一杯だった。奥の方にこの店の主人らしき人物がいたので、カクさんを先頭に奥の方へ行った。

カクさんは早速剣を出し修復できるか尋ねた。店主(?)は剣を受け取りじっくり見た後、店の奥に声をかけた。奥の方からこちらへ駆けてくる音がして、30歳を過ぎたくらいのこの人の奥さんらしき人物が現れた。店主(?)が「サキ、これ修復できるか」と、言って、剣をサキさんに渡した。サキさんは剣に手をかざし「修復は可能ですが、強度はこのままですとまた折れますよ」と、言った。カクさんが何か言いたそうなのを手で制し「強度はこのままで良いから修復お願いします」と、言って、代金を聞いた。代金は100両とちょっと高いがお願いして店をでた。店を出ると早速カクさんが聞いてきたので僕の考えを言った「強度を上げると材質をもっと良いものにしなければならない。それだと、金銭面でダメだ。同じ材質だと剣が太くなるし重くなる。それだとカクさんの持ち味のスピードが削がれる。これもダメだ。だからもとのままにして、戦い方を変える」

「戦い方を変える?」

「そう、僕に考えがあるから、まかせて、だから、今日は楽しもう。お金はないけどね」

しばらく、ブラブラ歩いていると、どこかで見た一団が向こうから歩いて来た。向こうはこちらに気がついてないみたいなので、近ずいて声をかけた。

「よう、こんにちは」

「……」

「わからないですか。ほら、街道で」と、言うと。

「あ!」と、言って、ソワソワし出した。

「あっ、あの時は助けていただきありがとうございました」なぜか後方の五人も「ありがとうございました」と、口を揃えた。慌てて去ろうとするみんなに「悪さするなよ。こんどはただじゃおかないぞ」と、とどめをさしておいた。


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