10-2
♢♢♢10-2
暗闇の中、三度傘にカッパ姿の怪しい4人が、「KEEP OUT」と書かれた黄色いテープでがんじがらめにされている教会の前で立っていた。
さらに一人が加わり「頭」と、小声で呼んで、その者に耳打ちした。
頭と言われた人物がみんなを集め、もたらせた情報を教えた。
みんなに狼狽の色が見え「どうします」と、明らかに意図がこもった口調で一人が尋ねた。
ここで軽はずみな事は言えない。慎重に答えないと今後に支障きたす恐れがある。ただでさえ実力がずば抜けた5人だ、我が強く一人だってやっていける自負もある。それがこうして5人まとまって行動しているのは、ここ黒い血暗殺団があったからだ。それが今、無くなっている。いずれはバラバラになるだろうが、今はその時では無い。
それが計算を狂わせたのか、計算高く石橋を叩いて渡るほど慎重派の頭が、いつもなら言わないことを口にした。
「チカヤマを殺す。黒い血暗殺団健在をアピールする」その一言にみんなが意気込んだ。
ヒョウサカ領レオダイクに入ると頭が「耳」と声を掛ける。
そう呼ばれた彼、いや彼女が街中に消えていった。耳と呼ばれた彼女は、自分の容姿を使い、情報を収集する技術が卓越している。それ程の美女かと言われればそうでも無く、彼女には男を魅了する天性の才能があるのだ。あの地獄から抜け出そうと必死であみだした彼女固有の技術である。
夕刻になる頃にはチカヤマの行動が手に取るようになっていた。
情報を聞いた頭が「目」と、呼ぶ。
心得たとばかりに目が姿を消した。
目と呼ばれた彼女の卓越した能力は、もちろん目である。どんなに遠くても、どんなに速くても、暗かろうが壁があろうが、マークされた人物は見通す事ができる。子供の頃から一目置かれる能力の持ち主であった。
コフーパレスから出てくるチカヤマを捕らえた。これで、どんなにあがこうと逃げることは出来ない。口元が笑いで歪むのを感じながら去っていった。
目と耳の情報で彼には決まった行動パターンがあり、その時間帯になるとチカヤマは二人で行くところがあった。おそらく明日もそこへ行くだろうことは、予想するのに難く無い。頭は「足」と「腕」の二人を連れ念の為に下見をしておいた。人気も少なく、決行するにはお誂え向きの場所。頭の一言で、決行が決まった。
頭は慎重にかつ綿密な計画だと思っているが、歪み狂った思考回路では所々見え隠れしている綻びを見つけることができなくなっていた……。




