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「お客さんたちここは初めてですかい」髷を結い、如何にも町人といった和服の怪しげな男が話しかけて来た。
「間に合ってます」と、関わりたくないので冷たい言葉を返すと、僕の耳元で「お客さん、つけられてますぜ」と、囁いてきた。
そんなことはとうに知っていたが、親切に教えてくれるところをみると、仲間じゃないみたいだ。
僕が何者だろうと探るよな目をすると、相手の方から名は『金公』、これこれの事情で協力してくれと正体をばらしてきた。
成る程、そういうことなら協力しようと、一緒に行動することにした。
客との商談が成立して、あの変態に仕事を任せることにした。
本来なら『死神五人衆』に任せるところだが、今はいない。
ウラミサカは猟犬を離した気分になっていた。奴は性格に問題がある。仕事に関しては一流だが、それが元で……、と考えると心配になる。そのこともあってサポート役に10名ほどつけた。
大丈夫だ、しくじらないだろう。そう心の中でつぶやき、酒でも飲みながら知らせが来るのを待つことにした。
僕たちは金公に従って歩くことにした。
女子たちは旅籠屋に居る。つまりここには僕とジェットキ、タイポイ、それと金公だけだ。
金公は人気のない如何にもってところへ僕たちを連れて行った。で、やっぱりというか当然というか、退路を断つようにぞろぞろとフードを目深に被った怪しい連中が現れて来た。
僕たちが慌て騒がず冷静でいると
「あれれー、恐怖で声も出ないのかあー。叫んでもいいんだようー」と、一人だけ異なる格好の男が気色悪い声色で言った。
「ほざけ、お前ら雑魚ごときに何騒ぐ必要があるか」タイポイがリーダー格らしい格好の男に強気な声で言い返した。
「ならば恐怖で泣き叫びながら死ね」
怒気のこもった低い声を発すると、その男は素早く剣を抜きタイポイに詰め寄った。
金公が危ないと心配そうな声を発するも、男の剣はタイポイの身体には届かず、左手で受け止められていた。
男の顔が理解に追いつかず間の抜けた顔になる。そこへタイポイの右手の拳が迫り、顔がみるみる驚愕と恐怖に歪む。
タイポイの拳が男の顔面にヒット。男が地面にバウンドしてボーリングの球のように転がり、後方に並んでいるフードを被ったピンへと向かって行った。
ピンたちに動揺が走り逃げ出す者もいたが、時すでに遅しであった。ピンたちの後方にはすでに同心や岡っ引、その手下が待機していた。
「御用だ!、御用だ!」の声に、ピンたちの戦意は失せていった。




