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異世界で時代劇やってます  作者: ぽぷねこ
23/43

9-6

 ♢♢♢9-6

「やーえがった、えがった。やっぱ、歌姫の歌は癒されるのう」

「遠路はるばるきた甲斐があったのう婆さんや」

「また来ような」

 信者たちがぞろぞろ出口へ向かっている。

 それをいつものようにウラミサカは見送っていた。

 みんなが出て行ったことを確認しようとしたら、片隅にポツンと座っている人を視認した。

 その人に近づき声を掛ける。

「どうされましたか」俯いた姿勢に、具合でも悪くなったかと心配そうに尋ねた。

 その者は俯いた姿勢のまま「殺しの依頼をしたい」聞き取れないほどの低い声で言った。

「え?」予想外の返答に疑問符を返した。

 男は顔を上げ、今度ははっきりと言った。

「殺してくれ」

 ウラミサカは周りを見て誰もいないのを確認してから、奥の方へ案内した。

 ピーチ・タロウは贅沢三昧で緩みきった中年の体をソファに沈め、相手を待たずに切り出した。

「デカイ男だ、あいつ俺の頭を踏みつけやがって蛆虫呼ばわりした。許せん、ギッタギッタに殺してくれ」

 男の顔がゆでダコのようにみるみる赤くなってきた。

 ウラミサカは合図を送り、後方にいる全身黒ずくめの人物に冷たいお茶を持って来させた。

 男はそれを受け取り一気に飲み干すと、ホッと一息をつき落ち着いたようだ。その様子を伺い、納得したウラミサカは商談に取り掛かることにした。

「標的ですが、こちらから1人出しますので確認させてください。金額は」と、言い、指一本立てた。

「一万両?」

 コクリと頷くと「それが、最低条件です。難易度や条件次第て価格がかなり違います。よろしいでしょうか」と、相手の顔色を伺う。

「うむ」と、一言納得の顔。

 そのあと男は2、3質問してから席を立った。

 立ちぎわに右手を伸ばしたが、ウラミサカはその手を無視した。

 男はムッとしたようだが、ウラミサカはその男に「今度会うときは初対面です。その時に初めましての握手しましょう」と、笑った。

 男は納得したように、挨拶もせず去って行った。

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