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カースグランドへ入ると薄暗くなってきた。目的のビーワン湖へ着く頃はすっかり暗くなっていた。日が暮れるには早い、するとこれが神の呪いってやつか?。
驚いたことにビーワン湖のほとりに大きな街があり、賑わっていた。
街の人に聞くと、真っ暗なビーワン湖に時折光る蛍火がムード満点で、観光の名所になっていて、特に恋人たちに人気だそうだ。
僕たちも人気のある旅籠屋に泊まることにした。
部屋をキープすると早速タイポイとジェットキが「じゃ」と言って、街に遊びに出て行った。いつから2人はそういう仲になったのだろうと見ていたら、部屋割りが決められていた。僕の心がドキドキしているところをみると、相部屋はナミさんかと思ってたら、正解だった。わかり易いが、これどうなんだろう?複雑な気持ちになる。結局部屋割りは、僕とナミ、オギンとビリー、スケさんとカクさん、ジェットキとタイポイになった。
ジェットキとタイポイは大人の男性で、当然こういうところへ来るとハメを外す。とくにタイポイは飲み友達のベリアルがいなくなってから、ハメを外すほど飲んだことがない。必然的にテンションも上がる。何軒かハシゴした頃には酔いが回り、気分が高揚してきた。
「よし、もう一軒行こう!」タイポイが、陽気に叫ぶ。
ジェットキは、苦虫を潰した顔をしながらも付き合うことにした。
薄暗い店内のボックス席にどかりと座り、ウイスキーをオーダーする。今日これで10本ですよ、そう思いながらジェットキも飲み始める。
すぐに女性がサイドにつき、ドリンクをおねだりした。
タイポイがじゃんじゃんいいよって言うものだから、いつのまにか女性が4人に増えていた。
ジェットキもやれやれと思いながら、コップに注いでもらったウイスキーを飲もうとした時、鋭い視線を感じた。
視線の先を振り向きもせずにサーチする。
探り当てると、隣の女性に尋ねた。
「俺の斜め後ろに座ってる人、よくここへ来るのかい?」
女性が後ろを見て、ああ、と納得した顔になり「最近、ちょくちょく来るよ」と、まだ幼さの残る顔をこちらに向ける。
「名前知ってる」
「うーん……、ピーチ…」眉間にシワ寄せ考慮中。
「ピーチ・タロウ」
「そうそう、そう言う名前だった」と、スッキリ笑顔。
「ありがとう。この事は秘密にしておいてね」
「わかった」と、ニッコリ。
「それじゃお礼に、なんでもオーダーしていいよ」
「え!本当に」と、薔薇色の笑顔。
「ああ、いいよ」
「じゃ、フルーツ頼んでいいかな」と、キラキラお目目。
「どうぞ」と、一言いうと、嬉しそうにオーダーした。
よく表情のコロコロ変わる娘だ。




