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異世界で時代劇やってます  作者: ぽぷねこ
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悔恨と希望


「流石ですな、アカト殿」

 白髪の英雄の通り名を持つドワーフの王コウル・マイン・キングが、魔王四天王最強と言われたルシファを瞬殺したことで、感嘆の声を漏らした。ルシファーはそんなに弱くはない。この部屋に入った時に感じたプレッシャーからもそれはわかる。それが瞬殺となれば、ルシファーが弱いのではなくアカトが桁違いに強いのだとわかる。アカト以外の4英雄が異口同音に呆れの言葉を発しているとのを無視して、アカトは「さっさと終わらせて帰ろうぜ」と、奥の部屋に入って行った。

 みんなが入ると、突然ドアが閉まり、床が光り出す。魔法陣が浮かび出してきた。

「これは、罠だ」と、エルフの王ウッド・ユナイト・ガバンが叫ぶも、時すでに遅しであった。

「みんな落ち着いて」と、皇女にして稀代の魔法使い、キャス・ゾウズリビング・エンペーラが叫ぶも、罠の正体がわからないのでは、動揺を隠しきれなかった。

「きゃー」と、突然、聖女マリア・セント・ピュアリティの叫びにみんなが振り向くと、マリアの体が黒い霧に覆われ出した。そこへ破壊を目的としていた邪神のコアが現れ、マリアの体内へと吸収されていく。

 マリアの金髪が黒く染まっていく。緑と青のオッドアイも黒く染まる。背には黒き羽が現れる。マリアの体が乗っ取られていくが、みんなにはなすすべがなかった。

 マリアが狙われたのか、それとも偶然に襲われたのかは定かではなかったが、最悪の事態となった。

 もし、それが他の誰かなら、マリアの聖魔法で容易に対処できたものを、マリアを傷つけずにコアを破壊できるものは一人もいなかった。

 迷っている時ではないと、ドワーフの王が地の最大魔法ブラックホールを部屋全体にかける。この魔法は、別名永久牢獄と言われ、その場にいたものは何人も出られないようにする魔法だ。すぐに察したのかエルフの王も風魔法タイムロックをかける。タイムロックは時間を止める魔法というよりも厳密に言うと時間を伸ばす魔法だ。1秒を1分に、10分に、そして、1時間、1日へと伸びていく。それが時間をロックしたように見える魔法だ。皇女が念話でアカトに話しかけてくる。時間がないから念話で言うね。

「お願い。アカトだけが頼りなの。魂を転生させるから、だからみんなを助ける方法を見つけて」

 僕の魂が体から分離して渦中へ吸い込まれていくさなか「絶対みんな助けるからそれまで…まっ…て……」と、みんなに念話を飛ばした。


 僕は自分の声で目覚めた。

 目覚めると、右手は天を指していた。目尻が濡れているのを感じた。久し振りに見た夢。心臓が高鳴り興奮していた。その後に来るのは決まって自責の念。僕の慢心がみんなを窮地に陥れた。僕の油断がみんなを死なせるかも知れない。そう思うと、自分を切り刻みたくなる。

 僕を好きと言ってくれたマリア、そしてみんな、もうすぐだ、もうすぐ助けるからな、ぜったいに…、ぜったいにだ…。

 

 朝の目覚ましはとても不愉快だった。まだ夢に引きずられていた。ドロドロになった頭を洗い流そうと、バスルームへと向かった。

 ある程度すっきりしてからバスルームを出て、着替えてから、一階のレストランへ向かった。

 レストランはそれほど人は多くなく、すぐに二人を見つけることができた。二人は受像機(TV)が見える位置に並んで食事していた。バイキング形式の食事、パンとコーヒーそれとサラダを取り二人のところへ行くと、スケさんは「おはようです。お寝坊さんです」と、元気一杯の挨拶くれた。カクさんも「おはよう」と、一言いっただけだが、声には張りがあり、体調は良さそうだ。食事の量も僕より多いくらいだ。

 僕は、二人の反対の席に着き一緒に朝のニュースを見ながら食事した。ニュースは昨日の迷いの森消滅を報道していた。スケさんはキャッキャッ他人事みたいに笑っているけど、あなたがやったんですからね。

 続いて、帝都でのテロ事件のニュースで、カクさんがイキナリ噴き出した。映像では、火柱が宮廷を直撃して行く映像が流れ、玉座の間が真っ二つになっているとことが映し出された。スケさんは、更にテンションが上がり

「カクさん、カクさん凄いです。宮廷が半分瓦礫になってますよ。カクさんテロリストですよ」と、言って、またキャッキャッと笑い出した。

 その当の本人は「私がテロリスト、過去には皇帝が出たほどの名家カクラート家、そのご息女として生を受けたこの私が……」と、ブツブツつぶやきだした。その落ち込んでいるカクさんに、日頃の恨みととどめを刺してやった。反対の席から、立ち上がり肩をポンと叩き

「よ、テロリスト」と、声かけてやった。

 カクさんは、眼を白くて、魂が抜け出して昇天した。僕は「はい、ご愁傷様です」と、合掌してやった。


「ミトさん、ミトさん、今日も良い天気ですねー」

「そうですな、スケさん。今日も楽しい一日になりますよ」

「そうですね、今日もドカンとどこか吹っ飛ばしましょうか」

「おういいね。そのあとは宮廷炎上だな」と、言うと、後ろからウッという声が聞こえた。内心「いひひ」と笑いながら、これ以上のダメージは後々のことを考えるとトラウマになりそうなのでやめることにした。

しばらくトボトボを歩いていると、遠方で不穏な行動をしている集団が、こちらへとやって来るのが見て取れた。近ずくにつれ、はっきり見えると、和服姿の町娘を浪人風の侍が追いかけているように見えた。僕が鑑定でステータスを確認する。

先頭を行く町娘(仮)

種族 ヒューマン

ランク 1

レベル 25

生命力 2500

攻撃力 2700

守備力 1300

魔法力 5

素早さ 2900

器用さ 2900

運 7

感 10

職業 詐欺師LV15

個性 ぶりっ子LV3

レベル25で詐欺師LV15。ヤバイ、ここは関わらないでおこうと、路肩の方へ寄ってやり過ごそうとしたら、なぜか僕の後ろに回り込んだ。そして「悪い人に追われています。助けてください」と、言って、僕の背中に隠れた。

そこへ、ようやく追いついた五人の悪者(仮)だが、はぁはぁ言って息絶え絶えだ。先頭の悪者のステータスを確認する。

種族 ヒューマン

ランク 1

レベル 17

生命力 750

攻撃力 700

守備力 650

魔法力 5

素早さ 700

器量さ 700

運 5

感 5

職業 詐欺師 LV5

ーーあちゃ、こいつらぐるだな。面倒なことになったな。

と、考えていたところに、やっと落ち着いたのか先頭の悪者が

「そこの小娘渡してもらおうか」と、いった。

「え!」と、驚き後ろの町娘を確認。

「小娘です」と、言って、ニコッとする。

はぁーーーん。どこが小娘だ。どう見たって、ババァーだろうということで「はい」と、差し出した。

「え!」と、小娘(仮)。悪人も「え!」と、言って、しばし両者固まる。固まりが溶けて「渡すの」と、言ったので「はい、どうぞ」と、言ってやった。

「俺たち悪人だよ。あーーんなことや、こーーんなことしちゃうよ」と、悪人宣言までしちゃった。

「僕たちには、関係ないので好きにしたください」と、言うと

「ああーーん、私、あーーんなことや、こーーんなことわかんない」と、ババァーのくせにぶりっ子しだした。

流石の僕も、かちーーんときたので「カクさんお願いします」と後方にいるカクさんに声かけた。

「うむ」と一声あげ、前に出るカクさん。悪人五人も抜刀して構える。その刹那、みな、刀を落とす。なにが起きたかわからないが、手に痛みを覚えたのだけはたしかで、みな、周りをキョロキョロしだす。後方に剣を鞘に戻すカクさんの姿を見つけたみんなは「ば、化け物だー」と、言って、元来た道を駆け出して行った。それを、呆気にとられて見ていた小娘(仮)も「ありがとう」と、言って、元来た道を駆け出して言った。なぜか、追われていたのが、追う立場になった小娘(仮)を見て「詐欺師と言うより新手の漫才か」と、一人ツッコミをしたアカトであった。

その後の旅は順調で、一行はトチバラ領へ入って行った。



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