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「いやぁ、よかったよかった。歌姫の歌は癒されるのう」
「あの歌は最高だで、また来ような婆さんや」
「教祖様も立派なお方だ」
異口同音に絶賛の言葉を残し、信者たちが去って行く。
それを見送っていた教祖ウラミサカのもとへ、教会とは似つかわしく無い男がそっと近づき、下卑た笑いを漏らしながら「次、いつ殺るんだい?俺さぁ待ちきれないよう。あのさあ、恐怖に歪む顔見ると勃起しまくりで、もう最高。頼むよう、はやく殺らさせてよー」
「しー、黙れ!ここは教会だぞ」ウラミサカは表情を変えず、前を向いたまま、威圧的な声で横にいる男に言葉を投げつけた。
男は後頭部に両手を添えながら「あーあ、つまんないなあ」と、言いながら去って行った。
その男を目で追って、ウラミサカはこのど変態がと吐き捨てた。それから、信者がすべて去ったことを確認してから、歌姫ことミズイレに、もう下がって良いぞと言い、自分も奥に下がりながら、戸締りはきちんとしておけ、と振り向きもしないで門番に言い放った。
日中でも薄暗い呪われた地、カースグランド。その中心部にビーワン湖がある。
かつてこの地にはヤーマン台国があったと言われている。
その国が神の逆鱗に触れ一夜にして沈めらた。そこにできたのがビーワン湖だと言い伝えられている。
それが真実かどうかを知る者は今はいないが、時折風に流され聞こえてくる何かのうめき声、湖面に現れボット光っては消える光球が、かつて何かあっただろうと想像するのは難く無い。
そのビーワン湖に人が住める島が一つある。
ウラミサカが訪れた時には1家族が住んでいた。
その家族がそこにいる原因は長女のミズイレにあった。
ミズイレは陽に当たると皮膚がただれる呪われた病気のため、家族はここに留まっていたのだ。
家族にはここを出て行く理由が欲しかったのだろう、ウラミサカが娘のミズイレを引き取ることを約束すると、両親としての責任というよりホッとした感情が先に立ちさっさと出て行った。
こうしてウラミサカは一文も使わず島を手に入れたのである。
島への出入口に教会を建て、表向きは『赤い血教団』の運営にあたる。裏では貧民から子供を買い取り、暗殺の教育を施し、『黒い血暗殺団』を設立。暗殺を生業にしていた。
ここは全く理想的な場所である。島から陸に続く道は一つしか無く、そこには教会が建っている。呪われた湖に飛び込むバカはいないし、船さえ浮かべる者はいない。ここを出るには、一握りの暗殺者にならなければならないのだった。こうして、幾人かの優秀な暗殺者を輩出してきた。
ミズイレはというと、歌という特技のおかげで死なずにすんだ。彼女の歌は、口コミながら評判になり、遠路はるばるから訪れる人もいて、教団の顔になっていた。それに、特殊な体質のせいでどこも行けず、行動の自由が与えられていながらも、行動は限られていた。
こうしてウラミサカは表向きは歌姫ミズイレと教祖ウラミサカで赤い血教団を運営し、それを隠れ蓑として、裏では黒い血暗殺団を運営していた。




