第9章カースグランド
第9章 カースグランド
天使たちが下界を見て、また馬鹿騒ぎしている。
何を見て騒いでいるのだろう。
俺が下界を覗くと、そこにあったヤーマン台国が消え、大きな湖になっていた。
「そ、そんな馬鹿な……」俺の口から驚きが飛び出した。
にやついた天使が近付いて来て、聞いてもいないことをべらべら話し出した。
「人間のくせに神様気取りしやがってさ、神様のお怒りに触れたのさ。何様のつもりだ、地面に這いつくばっている虫けらのくせに」それも俺への当て付けだろう。俺の方が上位の天使だから、神に託けて話してきたが、口振りや仕草に嫌味が滲み出ていた。
「ルシファ、下界へ行くのか」ベリアルは問うた。
「ああ、このままでは気が治らない」
「しかし、最上級の天使が下界へ行くのは……」
「禁忌ではないよ、前例が無かっただけだ。なら……、前例を作れば良い」最後の方は怒気の含んだ物言いになっていた。
止めても無駄だろう、ベリアルは感情を抑え見送ることにした。
「帰って来いよ」
「ああ」ルシファは一言残し、下界へと飛び去った。
闇に包まれた巨大な湖、その最深部に沈んでいるヤーマン台国をルシファは認めた。
ルシファはそこへ降下して行った。ヤーマン台国に近づくにつれ怒りが沸々と沸き起こってきた。
人々の魂の叫びがルシファに聞こえてきた。
「苦しいよう、苦しいよう」
「助けて……、助けたください、お願いします」
「お母さん、苦しいよう」
「お願いです、この子だけでも助けてください。お願いします」
「我々は何をしたというのだ……、おお、神よ!あんまりではないか」
死んで魂となっても、この牢獄から逃がさない、神のやり方に怒りは頂点に達した。
「死してなお苦しめるのか……。神だと?、お前は神の仮面を被った悪魔か?、ゆるさない、絶対に許さない、お前がその気なら、俺はお前に仇なす不忠の臣となろう」
ルシファはこの地に残り、神に仇なす不忠の臣になることを誓った。




