サンド島-5
♢♢♢
戦力分析は重要だ。
今すぐにでも戦える者を集めてもらった。
鬼97名、タヌキはダンシロウ含め5匹、合計で100名以上になる。予想以上の数に満足だ。
敵は海を渡って来る。数万人は不可能だろう。すると1万人弱となる。単純に計算して一人で100人相手にすれば計算が成り立つ。元々能力値は人間より上位の鬼たちだ、100人位なら相手できるだろうと値踏みしている。
鬼たちのステータスを確認
種族 鬼
ランク 3
レベル 5
生命力 600
攻撃力 700
守備力 600
魔法力 200
素早さ 500
器用さ 600
運 5
感 5
職業 金職人
個性 金棒使用時ランク+3
平均するとこんな感じだが、金棒を使うとランク+3は凄い。今のままでも金棒を使えば人間たちより強いかも、だから金棒を奪ったのか……。
次はタヌキだ
種族 タヌキ
ランク 1
レベル 1
生命力 5
攻撃力 7
守備力 5
魔法力 8
素早さ 8
器用さ 6
運 1
感 1
職業 穴掘り職人
個性 タヌキ掘り、化かすLV1、化けるLV1
こちらはあまり期待できないと思っていたら、個性の『化かす、化ける』が面白い。ひょっとしたらひょっとするかも、期待を込めて鍛えよう。
僕には一つ考えがある。ジェットキとスケさんにその考えを打ち明けた。
二人のOKが取れたので、明日から実行しようとツノカケを呼んできてもらった。
ツノカケがナミさんを連れてやって来た。しかしナミさん綺麗だなあ。青く透き通った長い髪、綺麗だなあ。ブルーの大きな瞳、吸い込まれそうだ。何故だろう、心臓のドキドキが止まらない。
「それではよろしくお願いいたします」と、頭下げて行ったが、何を言っていたかわからなかった。
翌朝、城門前の広場に10人の鬼がいた。
それでは頼むと、ジェットキとスケさんにお願いした。
ギルドマスターのタスマさんには事情は説明してある。いきなりドラゴンが現れても騒ぎにはならないだろう。
例のフランスパンには僕とビリー、スケさんに10人の鬼が乗った。カクさんも来るか、と言ったら「ムリムリムリムリ」と、蒼い顔をして、ループした。
ビリーは置いて行くつもりだったが、まだ無理そうなので一緒に連れて行くことにした。
機内?は鬼に合わせ、さらにゆったりサイズの座席になっていた。スケさんがスッチーのコスで現れ、何故かみんなにフランスパンを配っていた。
僕も一つもらい齧ってみたら意外と美味しかった。
第一陣が迷宮に入った。
午前中にはみなLV50をクリアしていた。昼からは魔石を換金して鬼たちを連れ買い物に出かけた。
物珍しくキョロキョロしていたが、欲しい物があると、スケさんが買い物を手伝ってやっていた。
僕も来たついでに、ビリーに色々買ってやった。ビリーも欲しいものがあると自己主張するようになった。
ビリーはブローチを何点か買った。プレゼントかいと聞くと、ニコニコ笑って嬉しそうに頷いた。表情も豊かになり、僕はついビリーの頭をぽんぽんしてしまった。
帰って来てからみんなを見て驚いた。防具を取ると、髪が赤、青、緑、茶に変わっていた。そのことを長老に聞くと、能力が高くなると、精霊の加護が得られるそうだ。それによって髪の色が変わるらしい。
前にいる赤髪のステータスを確認した。
種族 鬼
ランク 3
レベル 56
生命力 1300000
攻撃力 1350000
守備力 1300000
魔法力 1000000
素早さ 1100000
器用さ 1000000
運 1000
感 1000
職業 火の戦士
個性 金棒使用時ランク+3、火の加護
これは驚きの副産物だ。火が使えるのか、使いようによっては戦闘に幅が出る。面白い。ちょっとウキウキしてきた。
順調にみな目標のLV50を達成した。これならいつ攻めて来ても楽勝楽勝。
僕が上機嫌でいると、ツノカケがナミさんと連れ立って来た。
そしてツノカケが爆弾発言。
「アカトさん、ナミをもらってくれないか」
「へえ!」その後の言葉が出ない。
「アカトさんはナミを見てどう思った」ニタッと、ツノカケは笑った。
「それはナミの気持ちだ」
「ナミの?」
「そう、ナミの気持ちだ」一呼吸置いて
「鬼の女は好きな人に、自分の気持ちを移すことができるのだ」
「自分の気持ち?」
「そう、自分の気持ちだ。アカトさんがナミに抱いている感情は、ナミがアカトに抱いている感情そのものなんだ。ナミがどれだけアカトさんに好意を抱いているかわかるだろう。どうか応えてやってくれないか」
僕はチラリとナミさんを見た。ドキリとして、心臓が張り裂けそうだ。顔が赤くなるのがわかった。これが、ナミの気持ち。僕のじゃなくナミの気持ち。わからない、どうすればいいのか僕にはわからない。
自問自答していると、ツノカケが割り込んだ。
「この子の両親は、人間に殺されたんだ。だからこの子は人間が嫌いだ。それなのに、なぜかアカトさんを好きになった。これはもう運命としか言いようがないよ」ツノカケは横にいるナミの頭を撫で、口をつぐんだ。
僕はまたナミを見た。偽りの感情じゃなく、自分の感情を確かめようとした。
ナミのステータス
種族 鬼
ランク 5
レベル 1
生命力 55
攻撃力 40
守備力 50
魔法力 100
素早さ 40
器用さ 40
運 3
感 5
職業 水魔導師
個性 金の杖使用時ランク+5
僕は叫んでしまった「この子ください!」と。
突然ナミが泣き出した。外見も気にせず、大粒の涙を流しながら……。
僕の心が、身体が、嬉しさに震え張り裂けそうだ。これがナミの気持ちか、そう思うと、利用しようとしている自分自身に腹が立った。
ナミも、ビリーも、幸せにしよう。ぜったいに……。
♢♢♢
鬼族の髪が綺麗に4色に分かれた。
ラストはビリー、ナミ、タヌキ5匹だ。
ビリーには魔法の杖を買って渡した。言葉を喋れないビリーに、魔法が使えるかわからないが、問題ないだろう。父の血を受け継いでいるのだ、不問だな。
ナミはツノカケから貰った金の杖を持っている。
ツノカケはこの杖の由来を教えてくてた。
「この杖はな、200年?いや300年だったかな?前に、名匠と謳われた伝説の鬼『ミギジン・ゴロー』が、1000年に一度といわれた日光に晒し、精魂込めて作られた逸品じゃ。この杖を使えるものは、わしが生まれてからナミ以外に見たことが無い。だからこれはナミのものだ」
杖は眉唾ものだが、金の杖を使えばランク+5は事実だ、ツノカケさんありがとう。
タヌキ5匹には短剣を渡した。何がいいかはわからなかったので、様子見で渡した。成長したらいろいろ試してみよう。
この7人をラストにしたのは、苦労しそうだと思ったからだが、杞憂に終わった。迷宮一層目から無双しだしたのだ。
ビリーは無言のまま魔法を次々放った。4属性全て使うほどの余裕すらあった。
ナミは鬼に金杖と言い換えたいほどの強さで、今すぐにでも10層へ行けそうだ。冗談だが……いや、あり得るかも……。
タヌキは短剣がしっくりくるのか、水を得た魚のようだ。
みな、秒針のような勢いでレベルが上がっている。
夕方を待たずして、10層をクリア。ここで引き上げようと言ったら、まだいけると言ってきた。それだけ余裕があるなら大丈夫だ。
街で買い物しようと言ったら、みな賛成した。現金なやつらだ。
タヌキ達はスケさんに任せ、僕はビリーとナミさんを連れ、商店街を見て回った。
ナミさんには洋服を数点買った。じんわり涙を浮かべ嬉しそうだ。僕の心が喜びに震えた。ナミさんの心を感じるのも最近慣れてきた。それでも、ちょっとしたことで心臓がドキドキするのはちょっとあれだ……。
ビリーは最近表情が豊かになった。笑顔につられ、ついこちらも顔が崩れてしまう。
下着もたくさん買った。ビリーはいちいち僕に見せて、確認するのには閉口した。
ビリーは僕を信頼しているようだが、僕はビリーの父親では無い。青春真っ盛りの男子なのだ、それを知ってもらいたい。
みんな集まってきた。驚くほどの大荷物だ。なかには「俺これプレゼントして、彼女に好きって告白するんだ」と、変なフラグ立てる奴もいた。
♢♢♢
今日は訓練の成果を見てみよう。みんなを集め、模擬戦を提案した。
一対一の勝負。僕かジェットキが相手だ。
なぜジェットキの名前を出したかというと、僕にはジェットキのステータスが見れないのだ。妨害はないようだ。とすると、ステータスは『運』の数値が僕と同等かそれ以上だと見れなくなるから、ジェットキは僕と同等かそれ以上強い可能性がある。それを間接的にではあるが、見て見たいと思ったからだ。
対戦相手は鬼達に選ばせた。
なぜか、みな僕を指名した。
「おまえらなあ、いい加減にしろ。なんで俺ばかり指名する」
「だってなあ、ジェットキさんはドランゴンだし、俺たちじゃ、勝ち目ないっす」
「上等じゃねえか、僕なら勝てると思ったわけだな」
僕は周りを見渡し「それじゃお前」前にいた赤い髪のやつを指名した。
「名前聞いていいか」
「キンザンといいます」
「そうか、それじゃやろう」
「あれ、アカトさん、武器持たないの?」
「ハンデだ」
「へー、怪我しても知らないっすよ」キンザンが戦闘態勢にはいった。
ほー、なかなかだな。そう思って見ていたら、キンザンがいつのまにか目の前で金棒を振り下ろしていた。
ドカンと轟音とともに砂煙が舞った。
ビリーとナミが心配そうにこちらを見ている。ジェットキのやつは欠伸をしていた。あの野郎、食えないやつだな。いや、ドラゴン鍋にして食ってやろうか。
砂煙が消えると、キンザンの金棒を右手の人差し指一本で止めているアカトの姿が見えた。
ビリーとナミはホッとした笑顔になっていた。他のみんなは当然だろうみたいな顔していた。ただ、ジェットキだけはまた欠伸していた。ドラゴン鍋確定だな。
「おい、嘘だろう」
「いま、全力だったよな」
「いやいや、様子見じゃないか。じゃなきゃ、いくら何でも人差し指一本はないだろう」
「だろうな」
鬼達が騒ぎ出した。
本人が一番びっくりしていたようで、しばし、フリーズ状態になっていた。
慌てて間をとり「アカトさん死なないでよ」と、加護の発動をする。
キンザンの顔が赤くなる。身体も見えるところは赤くなり、全体が炎に包まれる。
先なより、さらに早く、強烈な一撃がアカトを襲う。
耳が痛くなるほどの強烈な爆音が辺りを支配した。そして舞う砂煙。
砂煙が消えると、先なと変わりがない光景。
鬼達が唖然として見ていた。
時を移さずして、キンザンが倒れた。
数分の時が流れ、鬼の一人が駆けつける。
キンザンが泡を吹いて気絶している姿を見て、思考が停止したようだ。
今の一撃を見たのは、やはりジェットキだけか。
次は誰かなと呼び掛けると、今度は誰も手を挙げない。
薄々感付いていたが、鬼達は敵わないと思うとすぐに諦める。駄目元で抵抗するということはしない。それは鬼族の性格か本能かは知らないが、もっと抵抗していれば、多くの同族を死に追いやることが無かったかもしれないのに……。
その事は後でツノカケに注意しておこう。
結局ジェットキの能力が不明だが、後の楽しみにとっておこう。
そこで、鬼同士の模擬戦に切り替えた。ついでに、タイポイも参加してもらった。
タイポイは中々いい勝負をしていた。二回戦って2戦2勝だが楽勝ではなかった。いい稽古だったと思う。
鬼同士の戦いは、傾向が出てきた。赤は青が苦手、青は緑が苦手、緑は茶が苦手、茶は赤が苦手と言った具合だ。
その事もツノカケに注意しておいた。ツノカケにはみんなの指揮官をしてもらうことにした。
そこで今度は2チームに分かれ、ツノカケの指揮と僕の指揮の対抗戦をした。
この作戦にはタヌキ達も参加してもらった。僕はタヌキ達を伝令として考え、様子見で控えさせた。
少しずつこちらの旗色が悪くなってきた。ツノカケは相性を見た作戦に出たようだ。つまり赤に青をといった感じだ。
こんなのは誰でも予想がつく作戦だ。
それじゃこちらも作戦いきますか。タヌキたちに伝令を伝えた。
今度はこちらが優勢になった。
僕のとった作戦はこうだ。赤に青がつく事は予想していたので、緑がさがりながら、いつのまにか青につくという戦法だ。当然それにつられ茶が来るので、すかさず回って赤が茶につく。
これは予め教えていた戦法で、予備知識があった分、こちらが有利になった。
こうして、僕たちの勝利に終わった。
その後なんども、場所を変え、人を替え、模擬戦をしたが、全て僕の勝ちだった。
これを機に、指揮官の重要性を学んでほしい。
旅立つ前日、ナミの両親の墓参りに出かけた。ビリーとナミも一緒だ。
墓は景色の良い高台にあった。父さんが母さんに愛の告白をした場所、ここに二人が眠っている、そうナミが呟いた。
ナミさんは泣きながらも、僕とこの地をはなれることを両親の墓に話しかけた。
僕はいつかまた、この地を訪れ、墓参りをすることを約束した。
翌朝、鬼たち、タヌキたちが見送るなか出発の準備をした。
カクさんは白装束に、天冠まで付けていた。
色々突っ込みどころがあったが、ここは自重して、みんなには「自分たちの地は自分たちで守れ、強者が来ようとも諦めるな、お前たちの力を見せつけてやれ」鬨の声が場を支配した。僕は合図を送り、空へと舞い上がった。
♢♢後日談♢♢
予想以上の船が海に浮かんでいた。
ツノカケの指示により、風の加護を持つ緑の髪の鬼が前列に並んだ。
ツノカケの掛け声で、強風が船を襲った。一瞬で半数の船が海の藻屑と化し、上陸する事なく引き返した。
『神風』の伝説が誕生した瞬間のことである。




