プロローグ
「…いちゃん…おにいちゃん…」
知っている声が遠くから聞こえる。
どこか懐かしい思いが溢れてくる。
それが何かは俺には理解できない。だって俺の妹は……
「起きろっていってんだろ!このクソ兄貴!」
「いって!なにすんだ未菜美!?」
ものすごく口が悪いのだから。つまりこれは夢だ。
寝ている俺を起こしたのは、俺の妹の未菜美(にしじま みなみ 冴島高校1年)である。そして俺の名前は、西島誠也。妹と同じ冴島高校に通う高校2年生で、遅刻しそうになっていたらしく、妹に起こされたところだ。
だが、未菜美が俺のことをお兄ちゃん♪なんて呼ぶわけがない。
想像しただけでも気持ち悪い。
なんでこんな夢を見ていたのか、どんな夢を見ていたのかも、もうよく覚えていない。
はぁ、なんで俺には漫画やアニメに出てくるような、もっと可愛い妹がいないのだろうか。
無理やりたたき起こされ、不機嫌な顔で考え込んでいると
「何よその顔は。せっかくこの私が起こしてあげたんだから、感謝の一つでもあっていいんじゃないの?」
長い金髪を手でかき分けながら、上から目線で言う。
なんて可愛くない言い方だ。
ほんっっっっとに可愛くないやつだ!
そこはラノベみたいに、「おはようお兄ちゃん♡大好きなお兄ちゃんのために、起こしに来てあげたよ♪」とか可愛く言うもんでしょ!?
「あー、はいはい。ありがとありがと。」
「バシッ、ドガッ」
「いってぇな!なにすんだよてめー!」
「あんたがこの私を適当にあしらったからでしょうが!」
「なんだよ?構って欲しかったのかよ。少しは可愛いとこあr」
「は?何言っちゃってんの?あんたなんかに構ってもらって嬉しい?そんな訳ないじゃん。頭おかしいじゃないの?とりあえず死んで?」
「そこまで言う!?」
実の妹ににガチの真顔で死ねと言われると、たとえ相手が未菜美でも、グサッとくるものがある。正直悲しい( ´・ω・`)
「そんなことしてていいの?早くしないとあんた完全に遅刻だけど。」
「あ!そうだった!」
「ちょっと待ってよ!兄貴」
「なんだよ!?」
「…れい」
「あ?よく聞こえねーよ?」
「うぅ…!だっ、だから!お礼言いなさい!起こしてあげたんだから!」
「さっき言っただろ!これ以上何が欲しいんだよ!」
「そ、それは……」
未菜美は両手でスカートの裾をぎゅっと握りしめて赤くなっている。なんで赤くなってんだよ。そんな怒ってんのか?
「……なでて」
「あ?だからよく聞こえねーって!」
「も、もういい!とっとと準備しろ!このバカ!」
「何なんだよお前。。。」
未菜美は、プンスカ怒りながら俺の部屋を出て、階段を駆け下りて行った。
「やばい!早く準備しねーと!」
食パンをくわえながら、パジャマのボタンを外し、ワイシャツを身につけ、ブレザーを羽織る。スマホと財布をカバンに入れ、部屋を出ると、未菜美がたっていた。
「何してんだよ。俺を待ってたら、お前も遅刻するぞ。」
「別に待ってたくて待ってたわけじゃないわよ。一緒に行かないと、学校のみんなから不仲説を建てられるのよ。そしたら、あんたとのこと聞かれてめんどうでしょ。」
「あー、そゆこと。」
ほんとさ。もっと可愛い理由は言えねーのかよ。
そこは、「だって、どうしてもお兄ちゃんと一緒に行きたいんだもーん♪」
とか、色々あるだろ…。いや、ないな。我ながら気持ち悪いことを考えてしまった。
「何ぼーっとしてんのよ。早く行くよ。バカ兄貴。」
「はいはい。」
いつも、俺には真顔か怒っている顔しか見せない未菜美が珍しく少し笑って見せた。少しは可愛いとこあるのかもしれないと、少しドキドキしながら、家の玄関を出た。
でも、一度でいいからお兄ちゃん♡ってよばれたいなぁ。
まあ、無理だな。
そんなこんなで運動神経があまり良くない俺は走るのが遅く、途中で派手にこけて、未菜美に大笑いされたあげく、お
いて行かれ、遅刻した。
しかもその後、未菜美に派手に馬鹿にされた。
やっぱり俺の妹は、全っっっっ然可愛くない!
神様お願いします!俺に、お兄ちゃん♡って呼んでくれるような、可愛い妹をくださぁぁぁぁぁぁぁい!!!!