表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅と月  作者: 水水水(ミナナカ スイ)
4/4

第3幕 戦慄ーMomentー






 人が死ぬ時って、どんな感じなんだろう。

 やはり苦しいものなのだろうか。

 それとも、痛い?




                          (ーーーーやめろ。考えるな。)




 でも案外、それ程キツくはないのかも

 しれないな。そりゃあ、死に方にも

 色々あるけど………………。




                          (ーーーー知るかよ。どうでもいい。

                               とにかくもうやめろ。  )




 少なくとも今、は苦しんではいない。

 むしろ何も感じてないくらいだ。

 ……不思議だ。だって、こんなに……




                          (ーーーーもういい。頼むからもう、

                               やめてくれ………………。)






 二人の自分が、頭の中で言い合うのを聞きながら、彼はようやく今の状況を理解し始めた。

とは言っても、視界はぼやけて上手く見えないし、音も、ひどい耳鳴りのせいで聞き取りづらい。

逆に、自分の心臓がバクバクと脈打つ音だけが、やけに大きく頭に響いた。



 体を動かそうと身じろぎをして初めて、彼は自分が地面に仰向けに倒れていることに気が付いた。



「ーーーーー?! 」



 途端に、とてつもない激痛が全身に走る。意識が完全に戻ったせいで、

今まで麻痺していた感覚が正常にはたらき始めたのだ。



「うあ”……………ッぐ………!! 」



 その苦痛のあまり、彼はかすれた呻き声をあげて身悶えた。

頭が割れるようだ。腕や脚も使いものにならない。呼吸は乱れ、喉が時々「ヒュッ」とおかしな音を立てている。視線を地面の方へ落とすと、身体の周りに、真っ赤な血だまりができているのが見えた。



 彼はその血が、自身のものであることを、すぐには自覚できなかった。



 すると、その時だった。

ズン、という地鳴りがしたかと思うと、横たわる彼の前に、

大きな黒い影がゆらりと立った。

 


ーーーーー”鬼”だ。



もう一人の彼がまた、彼の意識に語りかけた。







 嗚呼あぁ、これは………まずいな。




                          (ーーーー逃げなければ。)




 体がもう、うことを聞かない。




                          (ーーーー早くここを離れて、

                               助けを……………………)




 無理だ。できない。

 「万事休す」とはこのことだ。




                          (ーーーー五月蝿い。黙れ………。)




 終わったんだよ、何もかも。全部。

 もう、何も………

 ここまでだ。




                          (ーーーーやめろ………………………)




 馬鹿だな、俺。

 欲張らなければ、こんな結果には

 ならなかっただろうに………。




                          (ーーーやめろ……やめろ!やめろや

                              めろやめろやめろやめろやめ)




 …今、ここで………………俺は死ぬ。




                          





「やめろッッ!!!!」






 

 彼が声にならない悲痛な叫びをあげたその時、

 一人の女の、

 自分の名前を呼ぶ絶望に満ちた悲鳴が、

 彼の耳の中に大きくこだました。












「椿くんーーーー!!!」

































評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ