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雨嫌い

作者: 十六夜 アルカイック

雨は嫌いだ





そう言ったジョージは窓際で父親のガラスに映る夜を煽る

「嫌な事が起こる夜はいつもこうだ 十六夜の夜に大雨が降る」

「前にもあったのか?」

もう一人の髭を生やした銀髪の男 クリストがグラスの夜を揺らしながらそう言った

「ああ そうさ 幾つか話してやるよ」

青年は中身を飲み干すと その出来事について語り始めた


まず一回目は6歳の頃だった


小雨が降った

幼いジョージはその夜 第六感とでも言えよう嫌な予感を察知して寝ぼけ眼を擦って起き上がった

丁度その頃読んだお化けの話を思い出し、怖くなって両親の部屋へ駆けた

勢いよくドアを開けてジョージの目に写ったのは

ベッドで熟睡する夫婦と、その隣の長身の男だった

「なんだお前!やるのか!?」

男はその体格と相反して 震え始めた そのひきつった様な恐怖の表情で握られる包丁は

幼いジョージを動けなくするには十分すぎた

「クソが!やってやる!」

男はジョージの腹部を切りつけた その傷から流れる血は洒落たカーペットをあっという間に赤く染めて

しまった

「俺は悪くねえ!俺は悪くねえからな!」

そう言って男はすぐに逃げてしまった きっと捕まってくれている事を祈る他に ジョージにはやる事があった

「早く...お母さんに言わなきゃ...」

ジョージは地面を這いベッドまで行く

「お母さん...助けて...」

先程の怒号と叫びも合ってか母の目が開く

起こされて不機嫌な顔は、一瞬にして驚きへと変貌する

「ちょっとどうしたの!?あなた!起きて!ジョージが!」

その声を聞きながらジョージは気絶する...


語っていた男の口が止まる

「...その後は?」

いつの間にか話に引き込まれていたクリストは催促せずにいられなかった

「よく覚えてないんだ ただ町医者が極端に優秀でな 助かったよ」

「まぁ死んでたらこんな所で酒なんて飲んでないっての」

そう言ってジョージは笑った クリストもそれに釣られて笑う

「で いつもって事はまだあるんじゃないか?」

期待を込めた眼差しで クリストは問う

「ああ あるよ 聞きたいかい?」

「勿論...ああそうだ 酒を取ってきていいか?」

「ああ 俺のも頼んだ」

暫くしてクリストが戻ってきた

「さあ 続きを話すとしよう」

ジョージは酒を継ぎながら また語り始めた...


それは16の頃


ジョージは友人が増え、彼女を作れた頃に また十六夜の雨が来た 大雨だった

その彼女の名はフリッカ

ジョージは彼女の家に招かれ、寝室で駄弁っていた

暫くして フリッカが飲み物を取りに行くとジョージは部屋を見渡した

やはり女の子の部屋であるし、少し罪悪感はあったが それでも好奇心を抑えられなかった

机を見ると 日記が置いてあった

ジョージは躊躇わず ノートに手を伸ばした

そこに書かれていた内容は...

4月13日

ジョージと付き合う事になったこれからの生活に胸が踊る


5月27日

ジョージはとても優しい

けれど何かが足りない 何かが...


7月14日

ジョージが愛しい 永遠に私の物にしたい

でもどうすればいい?

8月15日

明日 ジョージを殺す事にした

これでずっと 私の物


ジョージは遂に失禁してしまった 無理もない こんな日記を見てしまったのだから

下からフリッカが上がってくる音がする

「うわあああああああ!!!!」

ジョージは窓ガラスと空を舞った

着地で肩が外れたが、それでも走り続けた...


「...そりゃ 災難だったな」

「本当さ あの後すぐ引っ越したよ」

「そうか...」

「所でクリスト」

ジョージが聞いた 聞いてしまった

「何故さっきから酒に手をつけないんだ?」

その質問に クリストの顔が曇る

「...」

クリストは黙って俯く

「...ああ そうか」

何かを悟った様にジョージが窓の外を見る

「やっぱり 雨は嫌いだ」

ジョージの意識が霞む様に途絶える


その夜は 雷雨だった

感想でも誹謗中傷でもなんでも待ってます

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