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しかしMPがたりない!

作者: さつき

しかし MPが たりない!


ユース…男。森に住む青年。人間だが、魔物とは仲がいい(当人は鬱陶しがっている様子)。人間と魔物の争いがうるさいため、嫌気がさしている。


ボン…男。魔軍のスケルトン。慌ただしく騒がしい。本人は至って真面目だが、滑っていることが多い。意外とチョロイ。


魔王…男。魔軍の長。これでもかというほどのリアリストで、新米の勇者を叩き潰しにきている。仲間に対しての情が厚い。


ヴェルディ…女。サキュバス。ここぞとばかりにユースを誘惑するが、口説き文句が鬱陶しすぎて毎度一蹴されている。淫魔のくせに意外と一途なところがある。


レイド…男。新米勇者。ビビリ。しかし、本人は勇者なんかするつもりがなかったので、やる気がない。


ミリア…女。勇者と行動を共にしている僧侶。酒場で出会ったらしい。華麗で儚い感じのする少女だが、実は裏表が激しい。



森のある家の前

ユース「おい」

ボン「ユースさん!ユースさーん!いませんかー!?」

ユース「俺はここだ」

ボン「ありゃ、おかしいな。出てこないのに声だけ聞こえる…」

ユース「…ハァ、おい」

ボン「どこですかー!」

ユース「お前の後ろだ骨野郎!!!」

ボン「わ!?なんだ驚かさないでくださいよユースさん〜」

ユース「後ろにいる俺に気付かねえお前にびっくりだよ!…それで何の用なんだ」

ボン「あー、そうですそうです。今日勇者がこの森にくるそうなんですよ〜」

ユース「はあ。それで?」

ボン「もうすぐ戦闘に入るので森から出て欲しいという感じでして」

ユース「…あのなあ」

ボン「はい?」

ユース「俺にも生活ってのがあってな、数ヶ月前からお前ら毎度毎度この森でバカ騒ぎしやがるだろ?」

ボン「私達は至って真面目ですよ!戦争なんですから!」

ユース「そんなことは知ったこっちゃねえ!勇者が森にこようがこまいが俺はここで静かに暮らしたいんだ!」

ボン「うーん…」

ユース「何言ったって俺は出ねえからな」

ボン「けど、魔王様が来られますよ?」

ユース「え?」

ボン「それでも出ないならいいんですが…魔王様も来られるのでもしかしたらユースさんの家…いや、この森諸共滅ぶかもしれないんですよ、それでもいいですかね?」

ユース「あ!?」

ボン「魔王様が本気を出せばせかいのはんぶん位は消し飛ぶんじゃないでしょうかね〜」

ユース「おいおい待て、大体なんで魔王なんかが出てくんだ!?普通城で勇者が来るのを待ち構えて、そこで打ち倒されるのが魔王だろうが!?」

ボン「そこがまあ世の常というか常識というか…RPGの基本ですよねえ。ですがうちの魔王様は頭がよろしいことで…世界を征服するのなら勇者はレベル1の状態で潰すのが一番だと仰いまして」

ユース「魔王めあいつ…」

ボン「ということでこの森は大変危険なので出てください」

ユース「…呼んで来い」

ボン「え?」

ユース「魔王を呼んで来い!…俺が魔王を説得すれば森からは出なくていいんだろ。来るんならさあ呼べ、骨」

ボン「いやいやいや!!最悪消されますよ!?」

ユース「あのなあ骨…俺が生きてるのは魔王と知り合いだからだ。じゃなきゃとっくにこの森からいなくなってる」

ボン「ほ、本当ですか?私はユースさんのこと最近知ったのでよくわかりませんが…」

ユース「お前は新米だからだろ。さあ、呼んでこい呼んでこい」

ボン「は、はっ!」

ユース「はぁ。めんどくさいことをするもんだなあの魔王さんも」

ユース「トップが動かないといけないなんて、社会も変わってきてんだなぁ…世知辛い世の中だぜ」

ヴェルディ「全くよねえ。そんな世知辛い世の中なんかより、あたしと愛し合いましょうよ〜」

ユース「げ、いつからいやがった変態女」

ヴェルディ「うふん、あなたの心の中にずーっといるわよ」

ユース「うわこわ…」

ヴェルディ「あらやだユースぅ、あたしの愛情で震えてるのね?」

ユース「ハァ………」

ヴェルディ「どこいくのー?あたしの愛しいユースちゃあん」

ユース「ついてくんな、家だよ」

ヴェルディ「あたしも入っちゃお!」

ユース「不法侵入で訴えるぞコラ、マジで入ってくんな変態」

ヴェルディ「もう、照れ屋さんなんだからあ。まってよーダーリン♡」

ユース「………」


木の陰

レイド「…あれが魔物…ですか」

ミリア「そうですよ、変な奴らばかりでしょう」

レイド「うーん…けど、あの男の人は人間ですよね?」

ミリア「どうでしょう。魔物と仲が良いので人間ではないかもしれませんが…」

レイド「なるほど…?」

ミリア「とにかく奇襲をかけるためにタイミングを掴みましょう、勇者さん」

レイド「は、はい…頑張ってみます」


レイド「…あのー、誰かいらっしゃいますか」

ユース「ったく今度は誰だよ…」

レイド「あ、あ。ええと。僕この森で迷ってしまって…」

ヴェルディ「もお。あたし達の邪魔しないでよね」

レイド「わ!びっくりした…」

ユース「あ、こいつは気にすんなよな。てか迷子か…ん?にしちゃあ装備が過ぎねえか?お前」

レイド「そ、そうですかね?…とにかく道に迷ってしまって」

ユース「まあ、道がわからないんなら帰りのルートくらい教えてやっても…」

ヴェルディ「…ちょっとまって」

レイド「!?」

ユース「なんだよ変態女、こいつに一目惚れでもしたか?」

ヴェルディ「ちがうわよ〜!あたしはユース以外の男に興味無いんです!それより〜。こいつ、勇者なんですけど」

レイド「っ!」

ユース「は?勇者ぁ?こいつが?」

ヴェルディ「匂いでわかるのよ」

レイド「わ…バレちゃったんですけど…」

ユース「…ほー。」

ヴェルディ「殺しちゃってもいいかしら?」

レイド「う…」

ユース「…騒がしくなるしなあ。殺してもまあ俺に損はねえけど」

ミリア「レイド!逃げましょう!」

ヴェルディ「チッ、仲間がいたか…」

レイド「ミリアさん!」

ヴェルディ「逃がさないわ!」

ユース「あー…おっぱじめるのは構わんのだが、俺抜きでやってくれよな。ふぁあ、俺は昼寝でもしてっからご勝手に」

ボン「ユースさーーーん!魔王様が到着しましたーーー!!!」

ミリア「え!?」

レイド「ま、魔王!?」

ユース「まーたなんてタイミングで…」


魔王到着

魔王「おまたせ、やあユース」

ユース「よお、魔王」

レイド「…あ、あれが魔王か」

ミリア「初めて見ましたわ…」

ボン「はい!あれが見る者全てをビビらせる、我らが魔王様でございます!」

レイド「わぁ!?スケルトン!?」

ボン「あ、私スケルトンのボンと申します。お見知りおきを〜」

ヴェルディ「自己紹介するモンスターがいるか!」

魔王「っと、外野もいるみたいだけど…ここで戦闘するのをやめろ、とのことだったね?」

ユース「ああ…うるさくてかなわん。他の所でやってくれないか?例えばお前の城とか」

魔王「ハァ…わかってないなあ。」

ユース「なにがだよ」

魔王「僕の城なんかで戦ってみろ!勇者が来て僕の城が汚れたり傷ついたりするだろう!?部下も怪我したり最悪死ぬかもしれないんだぞ?!」

ユース「お前の事情は知らねえよ!俺だってうるさいしお前が森を消したら俺まで消えるだろうが!」

魔王「…ハァ。」

ユース「じゃあ聞こう、勇者。お前なんて名前なんだ?」

レイド「れ、レイドです」

ユース「じゃあレイド。お前はどう思う?通り道で通ったかトレーニングにこの森に来たのかは知らんが、多分まだひよっこだろ?」

レイド「そ、そうですけど…」

ユース「それじゃ尚更魔王なんかと戦っちゃいられねえよなあ」

レイド「そりゃあ勝てるわけ、ないですし…」

ユース「ほーら魔王。だからここで争うのはやめだ」

魔王「おいおい待ってくれよ、僕はその勇者を潰しに来たんだぞ」

ユース「ハァ…ったくよ、お前だって魔王歴短いんだからあんまり無理すんなよな」

魔王「なっ、そんな事言ったって!若芽は潰しておけばもう生えることは無いだろう!?それを考えて」

ユース「めんどくせえなあ…もしこのレイドが強かったらどうすんだよ」

魔王「そんなことあるわけないじゃないか」

ユース「おいおい、ゲームじゃねえんだから。攻撃が全部かわされて、お前の心臓にこの剣がひとつき。なんて事もあるわけだぜ」

魔王「ぐぬぬ…」

レイド「そ、そんなことないですよ?僕はまだまだ弱っちいひよっこなので…」

ユース「お前はいらん事言わんでいい!」

魔王「ほれみろ?弱いって自首したじゃあないか。それじゃ僕の魔法で一撃っと……なッ!?」

ミリア「おい、魔王とやら」

魔王「ゔっ…!ぐはッ!?」

ボン「ま、魔王様ぁ!?」

ミリア「…ユースに手を出したら消し潰すぞ?」

レイド「ミリアさん!?」

ユース「!?」

魔王「この僧侶…なかなかやるな…ッ!これでも喰らえっ!」

レイド「ミリアさん…怖いですね…初めて見ましたあんなの…」

ユース「…まあ、女って大概あんなもんだからな…あの淫乱女と一緒だよ。覚えとけレイド」

レイド「は、はい」

ヴェルディ「ちょっと!なんて言い草なのー!…もしかして照れ隠しなのかしら?うふ」

ユース「お前にはもう何も言えねえわ」

魔王「クッ…私をここまでやるとは…喰らえッ!」

ミリア「フフ、余裕が見えないみたいですねえ。魔王のくせに弱いんですね?」

魔王「ウッ…僧侶のくせに生意気だぞ」

ボン「…やー!!!魔王様!助太刀します!!!」

魔王「ボン、お前…!」

ミリア「骨一匹程度で私は止められませんよ…せいっ!」

ボン「グワァーッ!!!」

魔王「なっ、ボン…!ボーーーーーン!!!!!」

ユース「…どっちが魔王か分かりゃしねえわ」

ヴェルディ「ほんとよね、あの僧侶さん超こわぁい♡」

ユース「…魔軍なら助けてやれよな…」

レイド「み、ミリアさん!そこまでにしませんか!?」

ミリア「…ハッ!私としたことが…意識が飛んでましたわ…」

魔王「ボン…!返事をしてくれ…!ボンッ!」

ボン「魔王様〜!私はここです〜!木の上に頭が!引っかかってしまって!」

魔王「ボン…!!!ボン!!!!!!!」

ボン「助けてください〜!!!!!!!」

ヴェルディ「めっちゃ面白くない?あれ」

ユース「魔族って驚くほどメクラだし耳も遠いよな…バカなのか?」

レイド「よいしょ!大丈夫ですか、ボンさん?」

ボン「ゆ、勇者さん?あ、ありがとうございます…」

レイド「頭くっつけますから待ってくださいね」

ボン「は、はい」

ミリア「レイド!?何してるんですかー!?」

魔王「ハッ!あれはボンの頭…?!騙されるな!消されるぞボン!」

レイド「よっと…これでいいですか?」

ボン「…おお!バッチリですぞ!感謝します勇者殿!」

レイド「あ、あはは…」

魔王「間違ってる…こんなの間違ってる」

ミリア「そうですよ、おかしいですよ…」

ユース「オイ、お前らが間違ってるのに気づけ」

魔王「なに!?」

ユース「あれを見てまだ言えるのか?あいつに殺意はねえよ」

ミリア「…うーん」

ヴェルディ「魔王様、あのレイドって子。ユースにちょっと似てるよね」

魔王「そうだな…私がまだ新米だった頃のユースに似ている」

ミリア「ええと…どんな方だったんですか?」

ユース「っておいまてコラ!その話はするんじゃねえ!」

魔王「私は病弱の父親から魔王の座を授かり、新魔王として降臨した。その時勇者として現れたのがこのユースだったわけだ。」

ミリア「え!?ユースさんって…魔王城に初めてたどり着いたって言われてる、あの勇者なんですか!?」

ユース「やめろって!」

魔王「その時私は一方的に追い詰められてな。ユースが言ったんだ。俺に殺生は向いてない、俺はお前を殺せない。とな…」

ヴェルディ「あたし知ってるよ、ユースの実家って百姓なんだよね〜」

ユース「ウッ…」

ミリア 「…へえ、なるほど…」

ボン「初めて聞きました…」

レイド「そ、それでどうなったんですか?」

ユース「お前らまで!…仕方ねえ、そこからは俺が話す」

ユース「俺は百姓の息子だったさ。牧場生まれの牧場育ち。そんで17だか18になったある日。王様から呼び出しがかかって勇者に勝手にされて、そんで一人で旅に出たんだよ」

ユース「けど俺は百姓の家で育った身。戦う方法なんざなーんもわからん。けど、命の重さは理解出来た。相手だって魔物だろうがなんだろうが生きてんだ。だから俺はなんとか魔物と打ち解けて仲良くなって、強くなれるよう鍛えてもらった」

ユース「そのうち友達だった魔物から魔王城で魔王と仲良くなってくれって言われたんだ。そんで俺はこいつと仲良くなるために魔王城に行ったわけ。だけどこいつもまあ強いこと強いこと…突然襲いかかってきたしボロボロにやられつつも俺は辛くもなんとか追い詰めた…けど、俺はそれまで命を奪ったことは無かった」

ユース「だから、俺は魔王を殺せなかった。伝説になってはいるが、俺は死んだことになってるだろ?けどめんどくさいからそのまんまにして森で密やかに暮らしているわけだ」

ユース「以上。俺の昔話だ」

ボン「一人も殺さなかった勇者の話…私も聞いたことがありますが…その本人様だとは…」

ヴェルディ「ん〜!ダーリンかっちょいい〜!すき!」

魔王「正直ユースはすごい腕前だったからな…あの時は死ぬかと思ったよ」

ミリア「伝説に残るすごいお人ですものね…」

ユース「大したことねえよ…今じゃこうしてしがなく生きてる野郎だしな」

レイド「ユースさん…!僕も勇気をもらいました。ここで本音をぶっちゃけていいですか?」

ユース「何を与えたのかもわからんけど、はいどうぞ」

レイド「僕は、勇者をやめます!」

ミリア「えぇ!?」

レイド「僕は、最初は宿屋をしたかったんです!けど、ユースさんと同じで無理やり勇者にされたんです。正直、やる気に関しては全くありませんでした!でも、僕も人を助ける仕事がしたいんです!だから…」

レイド「僕は魔王城で宿屋をしたいです!」

魔王「!?」

レイド「お願いします!魔王さん!僕は魔王城の魔軍の方々にも魔王に進軍してくる勇者さんたちにも助けを与えたいんです!」

魔王「う…しかし…」

ユース「まあまあいいじゃんよ。俺だってホントならお前に殺されてる立場なんだし、助けてやれよ」

魔王「ううむ…」

ミリア「じゃあ私も…魔王城で協会を営もうかしら?」

魔王「お前もか!?むむ…」

ユース「これ断ったら…あの僧侶に消されるかもしんないぞ、お前」

魔王「クッ、消されるわけにはいかんな…わかった、認めよう」

ユース「はぁ、良かった」

レイド「あ、ありがとうございます!」

ミリア「ありがとうございます、魔王様」

魔王「それでは手続きが必要だから…とりあえず魔王城まで来てくれるか」

レイド「わかりました!」

ミリア「もちろんですわ」

ボン「それじゃあ私が先陣をお切りいたします!出陣じゃ〜!!!」

魔王「じゃ、また。」

レイド「ユースさん、ありがとうございました!またお伺いしますねー!」

ミリア「レイドと一緒にまたお邪魔しますわ〜」

ユース「おう、気をつけてな」

ユース「ふう。ひと仕事終わったな…軽口も叩いてみるもんだ。はぁー疲れた、そんじゃひと眠りしますかね」

ヴェルディ「ふふふ、かっこよかったわよ〜」

ユース「お前…まだいたのかよ、帰った帰った。さあ」

ヴェルディ「?もちろん帰るわよ?」

ユース「はあ。んじゃ、俺も帰るわ。じゃあな」

ユース「…っておい待て!黙って俺の家に入ろうとするな!」

ヴェルディ「ここが家よ?ユースとあたしの愛の巣」

ユース「…もう勝手にしろ。俺のメディカルポイントは底を尽きた」


おわり

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