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スコシだけ……

作者: 亜梨朱

中学2年の頃に書いたお話です。

ずっと眠っているのももったいないのでアップしました。

手直ししてないので拙い文章になっております。大目に見てやってください。

暗いトンネル。

出口のない場所。

前には、脱線して倒れた電車と、悲しさを紛らわすためにはしゃぐ、私の友達。


「はぁ…はぁ…」

「どーしたんだよ!さっきから息切れして!こんな時はポジティブに楽しもうぜ?」

「うっせーな!疲れたんだよ!スポーツバカは体力ありすぎだっての!」


私は、折角声をかけてくれた友達に反抗的に返す。


「スポーツバカって…。だからと言って高坂は疲れんの早くね?」

「遠足の帰りだし、疲れんのも当たり前でしょ?」

「ふーん…。まあ、いいけど」


そう言って、彼は仲間の元へ戻る。

本当に、みんな無理しちゃってさ。




今日は楽しい遠足。

小学校最後の遠足で、修学旅行とはまた違った一大イベントだ。


市を越える。日帰りの旅行みたいな感じがして、この日を楽しみにしなかった人は、誰一人としていない。


移動手段は電車。


貸し切りにして、騒ぎまくって、夕方の今帰る途中だった。


帰りに、雪が降って、あろう事にトンネルで脱線してしまった。


電車が倒れる衝撃で、トンネルの出入り口は岩や砂で塞がれ、私たちは真っ暗な寒い場所に閉じこめられた。


助かる確率は、無いに等しい。

それを全員分かっているから、最期は楽しくと言ってはしゃぐ。

親にはもう会えない、夢は叶わない…。

そう分かっているから、寂しさを紛らわすためにはしゃぐ。

どんなにがり勉なやつでも、どんなに運動が嫌いな女子でも、どんなに独りが好きでも、みんなが一緒に泥刑やリーダー探しをやる。


ただ、一人。

何もやらずに壁に横たわって座っているのが、私、高坂真希(こうさかまき)


私は、別にがり勉でも、運動が嫌いでも、独りが好きでもない。

増してや、親に会えない、夢が叶わない、死んでしまうのが悲しくないわけでもない。


私だって、泥刑がしたい。

走り回って、この恐怖を少しでも紛らわしたい。





この腹の傷がなければ…。




何で私だけ?


私だけではないか…。

電車の運転手さんも、先生もクラスの半分が死んだ。


みんな、何かの下敷きになったり、ガラスの破片が、運悪く大頸動脈のある首に刺さっていたり、目に刺さっていたり、…自害したりして、今生きているのは私を含んで二十人。

最初は五十人くらいいた。

生徒が四十人、先生が三人、駅員さんが二人、運転手さんにガイドさん。


大人は子供を庇うようにして死んだ。


私は、ガラスの破片が腹に刺さってしまって、体が思うように動かなかった。


私が着ている服が黒なのと、辺りが暗いおかげで、私がケガしてるなんて誰も思ってないみたいだ。

でも、血は止まることなく流れている。

バレるのが先か、死ぬのが先か…。

奇跡が起きて、救助してもらえるか。


「真希ー!審判頼めないかな?みんなでドッジボールをやるんだけど…。それとも入る?」

「私は審判するよ。厳しいから覚悟しとけって言っといて」

「だってー!んじゃあ始めるよー」

「最初はやっぱジャンプボールだろ?」


そう言って、チーム分けをしてから背の高い二人が境界線で向き合う。


「真希ぃー!ボール投げてくれないと始まんないよー!」


あ…そっか。

どうしようかな…。


とりあえず、頑張って立たなきゃ!


そう思って、立ち上がろうとするけど、体に力が入らない。


「真希ー?ちょっと大丈夫?早くしてよ」

「ごめん…今行く」


何度も立ち上がろうとするけど、やっぱりバランスを崩して立ち上がれない。

傷もズキズキ痛むし、額から汗が出る。


「俺も審判やるよ」

「っ!?」

「えー、松本がやんの?」

「マジで?ま、こっちとしてはありがてぇけど」

「じゃ、投げっぞー」


そして、慶がボールを高く投げた。

投げると、私の方に走ってきた。


「高坂、どしたんだよ」

「何で来るの?こっち来んな!」

「はぁ?折角俺が審判なってやったのに、何だ?その言い草!」

「誰も頼んでないっつーの!」


そう言って、私はそっぽを向く。


こっち来られたら、慶にケガのことバレる。


幸い血も目立たないし、血を流してる人はたくさんいるから、臭いもバレないと思うけど。







「いいぞー!頑張れー」

「…………」


しばらくして、ドッジボールも終盤を迎えたらしい。

両チーム一人ずつ残っていて、それが榊と山村という、二位を争っているやつら同士の対決だった。

ちなみに、一番強いのは私の隣にいる松本慶。


因縁の対決とか言って、かなり盛り上がっている。


まるで、学校の大放課のように―――。


「今の惜しくね!?なぁ、高坂」

「そ…だね…」


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイイタイイタイ……!


意識が朦朧として、眠くなってくる。


よく、人が死ぬことを永眠と言うから、これが死ぬってことなのかな…?


頭の中で、今までの出来事が走馬灯のように流れてくる。


入学、初めての遠足、友達、テストで初めて百点をとったとき、授業が面倒くさいと感じたとき。


初めて好きな人ができたとき―――


死んだら何もかもが終わりを告げるんだ。

孤独が永遠に続くんだ。

怖いよ…

死にたくないよ…

死んだらどうなるの?

流石に六年になって、天国とか地獄とか信じてないよ……。

やだ…

奇跡は起きなくて、このまま独り寂しく消えるんだ……。


「高坂…?」

「何?」

「別に、何でもねぇけどさ」


初恋は実らない。

友情は長くは続かない。


もう、私は…


死ぬんだ…




最期に伝えとこうかな…


私の気持ち



初恋相手に…


松本慶に…



「慶」

「何だよ?おっ!これ榊が勝つんじゃね!?」

「私…さ」

「何だよ、さっさと言えよ」


彼は、試合を見ながら言った。


ワクワクしていて、キラキラしていて……。


その顔も、見えなくなる。


視界が真っ暗になってから、私は呟くように言った。





「慶のこと、好き、だった」


「え……」


もう彼を見ることはできない。

友達にサヨナラを言う気力も残されていない。


とりあえず、後悔はしたくないんだ……



神様。


スコシだけでいいから

時間を下さい…


何気なかった現在(いま)

別れを告げる時間を


スコシだけ

もう一度……








願いは

叶わなかったけど



相手がどう思っていたか

分からなかったけど



言うことは

言った




声にならない声で

誰にも聞かれることのない声で

私は、慶に…

友達に…

両親に…


そして、世界中に言うんだ…














サヨナラ――――












こんな大人びた小学生はいません。

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