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生産者と神器

長くなってしまったがいい感じに書けたかも。

しかしエロが少なくぎるんじゃ~。

「うちの店員に何してくれてんだ」

ロベルトは女の子の目の前に跳躍した。

そして鋭い眼光を放ちながら拳を振りかぶった。

「う!?」

衝撃波に耐えきれずにシヅキは吹き飛ばされた。

「……師子王、ずいぶんと久しぶりじゃないか」

「やめろし。俺はそんな痛い名前じゃない」

ロベルトは大量の魔力の鎧をまとっていた。

あまりの魔力密度に蒼く発光するその姿の威圧感は獅子を思わせた。

「お前、なんでうちの店員に手を出す?」

「気に入ったからとだけ言っておく」

女の子は嬉しそうにほほ笑んだ。

「えらいのに気に入られたもんだよあいつも。だが、ここから先は好きにさせるわけにはいかないな」

「お? 師子王と言われたとはいえこの私と張り合うつもりか? いいぞ。お前は好みではないが遊んでやる」

シヅキは目の前の光景に、流石に動揺しまくっていた。

死神を目の前にしてもちょっと驚いただけで動揺しなかった男がである。

(師子王って何!? というか何この状況!?)

シヅキの混乱も気にせず、ロベルトは一歩踏み込んだ。

しかし一歩と言っても常識の一歩ではありえない距離を踏み込んでいた。

ロベルトの正拳突きが女の子を襲う。

風が吹き荒れ、シヅキは地面に這いつくばった。

だがその攻撃は女の子の片手で受け止められていた。

「アイエエエエエエエエエエエエエエ! あれだけの攻撃が片手かよ!」

女の子が動いた。

こちらもただ殴りかかる。

そしてロベルトもそれを片手で受け止めた。

次はロベルトが、その次は女の子がと殴り合いの応酬が始まった。

ただの殴り合いなのに次元が違う。一撃一撃がシヅキ相手なら一撃で真っ二つになるであろう威力。

お互い攻撃を受け止め、そして避ける。

シヅキはその速さに全く追いついていなかった。

目まぐるしい速さに目がぐるぐるとする。

このまま決着がつかないかに思えるほどの攻防。


しかし、一瞬に隙を見てロベルトが女の子の足を払った。

流れが変わった。

ロベルトは体勢を崩した女の子を強く蹴り飛ばした。

そして跳躍、女の子の真上を取った。


「アオス……、ブルフッ!」


握りしめた拳が青く光る。

それは魔法などではない。

超高密度に圧縮された魔力の塊である。

ロベルトはそれを振りかぶり、重力に任せて叩き込んだ。

爆音が衝撃波に遅れて響く。

シヅキは吹き飛ばされないよう必死にほこらにしがみついた。

やがて地響きが止み、砂埃が消えた。

爆発の中心点には女の子が倒れていた。

ロベルトはそれを見下ろすように立っている。

「お前の負けだ。オーガ」

「ああ、わたしの、負けのようだ」

オーガと呼ばれた女の子は満足げに笑う。

「一人で消えるのは寂しいが、仕方がないか」

オーガに止めを刺そうとロベルトが拳を振りかぶる。


そして…………。


シヅキは手を広げて立ちふさがった。


「ま、待って! ちょっとタンマ!」

「シヅキ、どうした」

ロベルトは心底不思議そうな顔をした。

シヅキはオーガに向き合った。

「お前、あの短剣に関係あるんだろ!?」

「そうだが、それがどうした?」

「やっぱりか! 教えてくれ、あれは何なんだ? どうして道具があれだけの魔力を秘めてるんだ?」

生産者としての勘が騒ぐ。

ここでこの子を死なせたら後悔すると。

「変なやつだな。そんなこと聞いてどうする?」


「もちろんあれと同じものを作る!」


シヅキの言葉を聞いた二人は呆気にとられた。

オーガは馬鹿を見るような顔で短剣を指さした。

「あれには私の体が宿っている」

「体?」

「ああ、あれは神器と呼ばれるもので、神の作った道具だ。それに私は体ごと取り込まれてしまってな。あれから私を解放してくれたら、詳しく教えてもいい」

「嘘偽りはないな」

「ない。無理だからな。もし解放できなかったらあの短剣ごと私を殺せ。人間様になら、殺されてもいい」

シヅキは頷き、ロベルトのほうを見た。

「好きにするといい。ただし、失敗したら壊すからな」

「ああ、異論はない」

シヅキはかつてないほどに高揚感を感じていた。

この世で何でも作れる者は古今東西どこを見ても神様以外にいないだろう。

そして、今シヅキがやろうとしていることはその神様に対しての挑戦である。

剣に根付いた体と魂を傷つけずに分離するのは、地面に根を張った大樹を丸ごと引き抜こうとするのと変わらない。

生産するのを生業とするシヅキには荷が重い。

しかし、生産の本質は物質の性質を理解し、それを最大限に生かすこと。

短剣の材質を理解し、神の作った構造も理解する。

まさに神の技術への挑戦。

胸が高鳴る。


シヅキは短剣を手に取った。

p能力により材質や構造の理解はできる。

しかし、それは常識レベルの物の話。

手に取ったそれは全く理解できなかった。

「これが、神様が作った道具か」

シヅキは全身の神経を短剣に集中させた。

いつもならすぐに見える構造。

だが見えない。

それはこの手に握っている物がいかに未知の物であるかの証明だった。

シヅキはさらに意識を集中させる。

今度は見えて来た。

しかし、脳みそが焼き切れそうになる。

「ッ!?」

人間の踏み込めないラインなのだろう。

これ以上踏み込めば脳みそが溶ける。

実感があった。

ドッと汗が噴き出た。


……だが、それでもシヅキはその線を踏み越えた。

生産者としての執念。

もっと知りたい。

もっと見たい。

その意思が動かした。

どんどん意識が薄れていく。

ここは人のいられる場所ではない。

だが彼は、沈みかけた意識の中で何かをつかみ取った。


意識が一気に覚醒した。

一部だが必要な情報を手に入れることが出来た。

軽く死にかけたが。

執念の勝利と言える。

「………必要なのは、構造の理解と名前」

シヅキは力を使いながらその名前を口にした。

「リリア」



………。

今日は昨日までの天気が嘘に思えるほどに晴天だった。

ロベルトは村長と笑いながら談笑をしている。

アイリは久しぶりに会った友達と別れを惜しんでいた。

そしてシヅキは、ほこらの前にいた。

今回の一件、原因は水神の加護を受ける水の剣がほこらから持ち出されたのが原因だと後になって分かった。

犯人は分からないが短剣が川の中にあったことを考えると、恐らく無事ではないだろう。

さて、シヅキがなぜほこらにいるのか。

それは目の前にいるつい最近できた友人に会うためである。

「リリア。俺はリースに帰るよ」

オーガもといリリアは無事に水の剣から解放された。

その後は悪さはもうしないとの約束でロベルトとも和解した。

「ああ、シヅキ。もう行くのか」

綺麗な黒髪を揺らしながらリリアは川のほとりに座っていた。

なぜかこっちを向こうとはしない。

「それで、リリアはどうするんだ? この村で暮らすのか?」

「いや、違うな」

「ならどうすんの?」

リリアは黙り込んだ。

まだ決まっていないのだろうかとシヅキは心配した。

「久しぶりに、名を呼ばれたよ」

リリアは唐突にそんなことを口にした。

「ざっと三百年くらいぶりだ。あまりに久しぶり過ぎてそれが自分の名前なのか疑ってしまったよ」

そう言うと彼女は静かに立ち上がった。

「私は鬼だ。生まれつき強い力を持ち、人間様に忌み嫌われた鬼。だが君はそれでも私の名を呼んでくれるか?」

「それがどういう意味か分からんのだが。まあ、鬼でも何でもいいや。日本人はどんな種族も受け入れる度量があるからな」

「……そうか。ならば私は君の、人間様の剣となり盾となることにしよう」

「ん? どういうことすか?」

シヅキはその言葉の意味を理解できなかった。

剣も盾も自分で作れるから別に要らないなと生産者脳を爆発させていた。

「人間様は見たところクソみたいに弱いだろ。危険があったら、鬼である私が前に出よう」

否定できない自分が悔しかったが事実マジで弱いから何とも言えない。

「ちなみに、嫌と言ったら?」

「嫌と言っても無理やりついていくさ。ロベルトに話は通してるから、雑貨屋で世話になる予定だしね」

初めて会った時よりも威圧感のないやわらかな口調でリリア喋る。

その声はなんとも心地のいいものだと思った。

「なんだ。うちに来るなら早く言えよ。よろしくな」

「ああ、よろしくお願いするよ。人間様」

リリアが振り向く。

あの時のように恐怖は感じない。角が取れたように見えた。

「ところで人間様って何?」

「ああ、君はそんな感じがしてな。これからもこう呼ばせてもらうよ」

何だか意味は分からなかったがシヅキはまあいいかと適当に流した。


さて、そろそろ作者の好きな要素を大量にぶち込むとするか。

後話は変わるけどロベルトって実はこの小説を異世界チートものとして書こうとした時の主人公の原案だったりします。

なので作中で一番強いです。

シヅキはロベルトから見ればクソ雑魚のナメクジ野郎です。


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