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生産者の夢

ランキングも解禁したが恐らく意味はない。

このカテゴリーでランキングに乗るのは修羅の道なことは明白なのだ。

「あの、シヅちゃんいますか?」

店にアイリが訪ねてきた。

随分と珍しい事も起きたものだ。

「アイリさん? 随分と杖をぶっ壊すスパン短くないですか?」

いつもは2週間から3週間くらいは杖も何とか原形を保つのだがまだ数日しかたっていない。

「壊してここに来たわけじゃなくてね。実はお願いがありまして」

「はい、聞きますよ」

アイリは申し訳なさそうにしながら店の中に入ってきた。

「実は、私の故郷が最近水害にあったようで、それで復興の手伝いを依頼されたんです。そこでシヅちゃんがいればはかどるかなと思って」

「なるほど、そう言うことなら俺も言った方がいいですね」

そう言った災害にあったところは慢性的に物不足になりやすい。

この能力を生かせる絶好の機会であろう。

「いつ行くんですか?」

「明日行きます」

なにも予定が入っていないことを確認し、シヅキは快く承諾した。



~次の日~

シヅキは一式道具をそろえて店を出た。

ちなみにロベルトに手配させて必要な物資は順次運び込めるように手配している。

「本当にありがとねシヅちゃん。君の力があればすごく役に立つよ」

「需要のあるところ、生産者はどこにでも足を運びますよ。任せてください」

最近忘れがちになっていたが自分は生産者である。

製品を欲する人あればそこまで飛んでいくのは当然のことだ。

二人は馬車に乗り込んだ。

アイリが手配していたようである。

こういうものに乗ると改めて異世界に来たのだと実感する。

もっともシヅキは半年ほど前に軍隊で乗ったことがあるのだが。

(そう言えばこっちに来てから1年以上経つのか。早いもんだ)

山の少ない草原の一本道を馬車は軽快に走る。

思えば町の中で生活し過ぎて感覚が狂っていたがここは異世界なのだ。

すぐに環境に慣れて何とも思わなくなった。

しかし一歩町から出ただけでその慣れはどこかに吹き飛ぶ。

恐怖と胸の高鳴りを二重に感じる。

「どうしたの? 忘れ物でもしたの?」

「あ、いえ。ただすごくいい風景だなと思って」

「そうかな? 私は慣れ親しんだ風景だから全然意識してこなかったな」

「そう言えばアイリさんは冒険者を何でやってるんですか?」

シヅキがそう聞くとアイリは赤くなった。

「笑わない?」

「保証はできません」

シヅキが半笑いでそう言うとアイリは少し怒った表情になる。

アイリは少しシヅキの表情をうかがうような仕草をした。

それから程なくして顔が赤いままのアイリが口を開いた。


「……小説を書こうと思って」

「小説、ですか?」


「そう、小説。それもファンタジーな物」

「それで冒険を、風景なんかを参考にするために?」

「そうだよ。魔王を倒して世界に平和を取り戻す冒険ものを書こうと思って。人気なジャンルなんですよ」

それを聞いたシヅキは不思議な気分になった。

現代日本でファンタジーは人気のジャンルだが、まさか魔法も超能力もあるファンタジー世界なここでも人気があることが何だか不思議でならない。

「変かな?」

「いや、とても楽しそうな夢ですね。その小説、俺も読んでみたいです」

素直にそう思った。

日本から来たからこそなおさらそう思う。

「……馬鹿にしないんだね」

「なぜ。俺も好きですよ」

訳あって暇なときはいつも本を読んでいた。

そしていつも読んでいたのがファンタジーの世界の話であった。

アイリは目を閉じた。

「シヅちゃんがなんでエステルちゃんに気に入られてるのか、分かった気がします」

「それは?」

「シヅちゃんはいろんなものが好きなんだね。そしていろんなものを否定せずに受け入れてる。私はそんな生き方が羨ましい」

シヅキはその言葉を聞いて、少し面食らった。

目の前のいつもは間抜けな女性に心の内を見透かされた気がしたからだ。

「あの気難しい子が心を許してるくらいだもん。相当心が大らかじゃないとやってられないもんね。シヅちゃんが子供の時ってどうだったの?」

アイリの言葉を聞いた途端に過去の自分を、生前の自分を思い出した。

今までは思い出す機会も必要もなかったので忘れていたその姿。

あの頃の、姿を。


「……とても貧乏でした。近所の子供が持ってるものは当然のように持ってなくて、鉛筆一本手に入れるのも苦労したんです」

「え? そ、そうなの? 想像できないな」

あの頃のシヅキは、貧乏のどん底だった。

食べるもので精いっぱいで、みんなお腹を空かせていて。

しかし、シヅキはあの頃を辛いとは思っていなかった。


「でも、俺はその時に物作りの面白さを知ったんです。子どもの頃の俺はいつも何かをいじっていて、廃材でイスやテーブルを作ったり、とにかく笑顔だった」


それが、ムツキシヅキという人間を作った。

そして同時に夢を抱いた。


この世には色々なものがある。

彼はそのすべてを自作したいと思った。

自分の手で、何でも作れたらどれだけいいだろうか。


「俺は今も昔も変わらず、こんな感じですよ。馬鹿でスケベで救いようのない変態で、それでも決して後ろを向かずに前を向いて、笑顔で笑う。それが今も昔も変わらないムツキシヅキです」


シヅキは語り終えると少し照れくさそうに顔を伏せた。

「すみません。しゃべり過ぎました」

「そんなことない。私は知れてうれしいよ、シヅちゃんのこと」

アイリは優しく表情を和らげた。

シヅキは空気に耐えられなくなり、上着を頭からかぶった。

思えばこうして心の内を表に出したのはいつぶりだっただろうか?

そう思いふけるシヅキと上機嫌なアイリを乗せた馬車はまだ日の高い草原を走って行った。



~その頃~

姉は縛られていた。

あの妹に徹底的にぼこぼこにされた日からどうもいじめられると体が疼くようになった。

それは快感。

妹に滅茶苦茶にされるととても気持ちがよかった。

今まで妹をいじめることしかしていなかったから新鮮な快感だ。

「ふひ、エステルはいつ戻ってくるのかしら? お姉ちゃん放置され過ぎてもうすぐ漏らしちゃいそう……!」

あまりに残念な姿。

どんな男もこの姿を見たらそっと部屋のドアを閉じるだろう。

もう乙女とは思えない声も出ているし残念に拍車がかかっていた。


しかし、そんな変質者ではあるが気に入らないことがあった。

それはあの生産者が演技とは言え自分の告白を断ったことである。

(あの男、私の告白を断るなんていい目してるわね。しかし気に入らない。私は絶対にあの男を振り向かせてやりたい)

これが恋心なら可愛いものだが、その本質は無駄に高いプライドだった。

テトラは絶対にあの生産者をぎゃふんと言わせることを胸に誓った。


うおおおおおおおおおお!

今回はエロが少なくてフラストレーションが溜まるんじゃ~。

次回はがっつり書くんじゃ~。

ところでそろそろバイトが始まるから投稿ペースが落ちそうかな?

ブックマークも増えてきて順調なのにやばす。

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