腕相撲大会にて一行は
ブックマーク12人ありがとう!
過去作品に比べてそこそこ意欲的に挑んでいる作品ではありますがここまで結果が出てくれるのは嬉しいです。
まだ異世界転生というジャンルにおんぶにだっこの状態で作者の実力とはいいがたいですが、もっと面白いものが書けるように頑張りたいです。
血に飢えた野獣共が選手控室で運命の時を待っていた。
その中に、肩身の狭い思いで座っている一人の生産者がいた。
別に参加して大勝利してやるとかそんなことを思ってこの修羅場にいるわけではない。
ただみんながやるから便乗してここにいるだけである。
しかし、それは全くの間違いであることを思い知らされた。
場違い。生産者がいるところではない。
何事も経験とは言うがこれはしなくてもいい経験である。
そう心底思った。
「ああん? てめぇ何見てんだコラぁ! てめぇどこ中だコラぁ!」
何とも好戦的で品のない声が控室に木霊す。
(知らないふり知らないふり)
シヅキはその声の主から目を逸らす。
声の主は残念美人シスコンな変態のテトラである。
一番最初に会ったころが懐かしく感じる。
どこかの不良みたいに手当たり次第にケンカを吹っ掛けまくってるその姿は見苦しく見るに堪えない。
そしてそのテトラとは逆に対照的に映っている人物もいる。
アオイだ。
アオイは椅子にちょこんと座っている。
髪は後ろに束ねており、服の袖はまくっている。
見た感じはやる気満々といった様子なのだが、なんだか微笑ましかった。
緊張しているのか頬が赤くなっており、それも愛らしさを引き立てていた。
アオイの近くはテトラ付近と違ってほんわかとした空気が流れていた。
テトラも見習ってほしいものであるとシヅキは密かに思った。
シヅキが周りを観察していると服の裾をエステルが引っ張った。
「ん? どうした?」
「ごめん。今だけ実の兄のようにふるまって。お姉ちゃんと姉妹と思われたくない」
そう言うとエステルはシヅキの後ろに隠れた。
無理もない、あんな残念な人が姉だなんて世間様に知られたいわけがない。
こうしてシヅキの帰りたいという願いも届かず、やがて開戦の時間がやって来た。
第一回戦。
シヅキはごついおっさんと当たった。
おっさんの目当ては賞品の農業用スコップらしい。
「手加減しないぜ」
おっさんの言葉に唾をのんだ。
普通の主人公であればこんな一般人は相手にもならず一撃のもとに叩き伏せるのだろうが、残念ながらシヅキでは無理である。
無論、結果は五秒持たなかった。
しかも手加減しないとか言っていたのにシヅキの実力を見ての対応か、かなり手加減してもらった。
滅茶苦茶いいおっさんである。
エステルの相手は西洋風の甲冑を身にまとったイケメンだった。
明らかに強そうだと観客席のシヅキは思った。
が、結果は一瞬にしてイケメンは負けた。
しかも勢いよく倒したせいか腕を骨折したらしい。
15歳の女の子相手にである。
テトラは圧勝した。
さりげなく参加していたリリアも勝利。
リリアが相当な実力者であるのは知っていたので当然の結果である。
そしてアオイは、当然のように笑顔でごついおっさんをなぎ倒していた。
この大会に意欲的だったことを考えると彼も相当な実力者ということなのだろう。
ロベルト不戦敗。
喫茶店で綺麗なお姉さんに見とれていたら間に合わなかったらしい。
最も彼が勝ち進むと優勝確定だと思うので大会的にはこれで結果が分からなくなり、面白くなったともいえる。
それにしても男性陣、情けないことこの上ない。
二回戦。
全員難なく勝利。
ちなみにくじで右手か左手か決めるのだが、今回は全員が非利き手の左手であった。
三回戦。
ヤグザと自称鬼が対峙することとなった。
「人間様、あの品のない雌豚は私が必ずぶち殺します」
リリアはいつになく青筋を立てていた。
試合前にテトラに何か言われたのだろうか。
「エステルにいいところを見せて、お姉ちゃんしちゃうもんね!」
もうすでに叶わない望みを口にするテトラ。
二人は壇上で睨み合う。
今にも殴り合いそうなびりびりとした雰囲気。
テトラは恐らくものすごくテンションが上がっている。
こういう祭りごとが好きなのだろう。
何と血気盛んなことか。
二人は手を握る。
審判もひやひやしている。
やがて、開始の合図である笛の音がなった。
しかし、二人は腕を組んだまま動かない。
「なぜ二人は動かないんだ?」
「いや、あれは二人の力が拮抗していて動いていないように見えるだけだ」
唐突に話しかけられる。
声の方には一回戦で争ったおっさんがいた。
「負けちまったぜ」
すがすがしいまでの笑顔であった。
「ざ、残念でしたね。ところで力が拮抗しているというのは」
「ああ、それは顔を見ればわかるが二人は互いに攻めあぐねている」
シヅキには始まってから全く表情が変わっていないように見えた。
しかしよく見ると額に汗がにじんでいる。
「しかもお互いに魔力を使っていない。この勝負、魔力の強いほうが勝つな」
「え、腕相撲なのに魔力関係あるんですか?」
「ああ、魔力は物の持つ性質を強める力がある。筋肉の持つ力を引き出すくらい造作もないだろう」
そこでシヅキはリリアとロベルトの殴り合いを思い出す。
あの時ロベルトは人間とは思えない速さと跳躍の高さを見せたが、あれは魔力で体を強化していたのだろう。
シヅキがそんなことを考えていると会場がざわついた。
二人がついに魔力を解放したのである。
肌に強い圧力を感じる。
シヅキの持っている貧弱な魔力とは量も質も違う莫大な力を感じた。
リリアは前に見たが、テトラも同じくらいの力を持ているのは知らなかった。
「腐ってもやっぱりあの人はかなり強い人だったのか」
普段があまりにも残念過ぎるのが惜しい人だと思った。
性格を改善すれば欠点がなくなると言っても過言ではない。
「うぐっ!?」
戦況が動いた。
テトラが押され始めたのだ。
リリアもやや苦しそうな表情をしているがテトラほどではない。
テトラの魔力が弱まっている。
パワーは同じくらいでも持久力が弱いのかもしれない。
徐々に押されていくテトラ。
何度か魔力が変化したが逆転にはつながらず、テトラは敗北した。
「……リリア、あの子はとんでもない子ね」
シヅキの隣にテトラは座っていた。
敗北した弱者は観客用の席で静かに試合を応援する。
テトラも無事その仲間入りを果たし、さっきまでのヤグザみたいな態度から一片、淑女のように行儀よく席に座っていた。
「あいつはかなり強いですからね」
「あなた知ってたの?」
「はい」
テトラは頬杖をついた。
「前情報があってもあれには勝てなかっただろうから、まあいいか」
不満そうな雰囲気を感じたものの、勝手に自分で納得したようだった。
「ロベルトと言い勝負できそうね」
「ロベルトの事を、知ってるんですか?」
「……ということはあなた、ロベルトのあれを見たのね」
「はい。見ました」
テトラはいつになく不機嫌さ全開で恨めしそうな顔をした。
「あいつに負けたのよ。私」
「え? 戦ったことあるんですか?」
「ええ、あいつに負けるまでは無敗の私に格上としての貫禄を見せつけられたわ」
よっぽど悔しかったのか、テトラはそれっきり黙ってしまった。
(あのテトラさんがここまであっさりと敗北を認めるとは、一体どんな負け方をしたんだ)
負けても認めない負けず嫌いタイプだと思っていたのでシヅキはここまであっさりと負けを認めるテトラに驚いていた。
そして同時に、自分の知り合いが実はとてつもなく強い人ばかりであるのではないかと戦慄した。
(これからはテトラさん含めみんなを怒らせないようにしよう)
シヅキは硬く心に誓った。
作者の中でテトラの像が崩れてきている件について。
でも面白いから許す。
これからも1日1話を頑張っていきたいです。
でも明日からバイトが始まるので小説の質は落ちるかも。
後またタイトルに手を加えようと思っています。




