生産者と遺産
男の娘最高!
アオイは男らしい言動に行動、そして性格をしているのにすべてがその美しさで女に見えてしまうという不憫な人です。
ちなみに実は女とかいう設定はありません。
正真正銘の男子です。
シンドラ自治区温泉郷の中央に位置するのはこの異世界でも珍しい魔境であった。
それが魔人の大口である。
深さ不明の火口で下の方にはいくつもの洞窟があるという。
そこは人間の能力では探索不可能と言われており、未だ未開の地であった。
しかしそれは火口の下の方の話であり上の火口入り口は違う。
一部ではあるが火口入り口のほうでは展望台が下の方を覗ける形で突き出ており、観光の代名詞というべき名所となっていた。
二人は今そこに入る受付にいるのだが、問題が発生した。
「違います俺は男です!」
「お客様落ち着いて」
この火口エリアに入るためには専用の服に着替える必要がある。
その理由は明白。
そのままの格好で観光すると帰りの頃には汗でびしょびしょになるほどにクソ暑いのだ。
そして今何で揉めているのかというと、その着替える場所にシヅキは男性の更衣室、そしてアオイが女性更衣室に連れて行かれそうになっているからである。
「何度も言っているように、俺は男だから女性更衣室なんかに行ったら捕まってしまいます!」
絶対気づかれないと思うけどなシヅキは思う。
むしろ実は本当に女でした的な展開を願ってすらいる。
「お客様、しかし男性更衣室でなにかあった場合責任を我々は取り切れませんゆえ、どうかご理解を」
「何も起きません!」
「まぁ、いいじゃないか。役得だぞ」
シヅキは無責任なことを言う。
「ちょっと、他人事のように言ってないで助けてよ」
アオイは助けを求める。
しかし助けることはできない。
なぜなら助けるということはアオイが男であるということを認めることになるからである。
そして結局アオイはイキイキとした従業員に更衣室に連れていかれた。
「コレハナニカノマチガイダ」
専用の服は何と浴衣であった。
シヅキは当然男性用。
しかし、今にも火口に飛び込みそうな隣人は女性用のフリフリのついたミニスカ浴衣に長い髪をサイドにまとめてもらっていた。
なんだ、やっぱり女じゃないか。
「あ~、安心したんじゃ~」
「何が?」
「お前やっぱり女の子なんですね」
「チガウノニ……」
暗い表情でブツブツとつぶやき始めるアオイ。
しかし対照的に発情した相手が男という汚名を返上できたことでシヅキの心は晴れやかだった。
「さて、魔人の大口とやらに行ってみますか」
「ああ、そうだね」
気を取り直して二人は歩き出す。
しかし、意気揚々と歩きだして少しも立たないうちに不穏な空気になり始める。
「……暑いいいいいいいいいいい!」
シヅキは汗だくになった。
さっき出た施設はまだすぐ近くにある。
見れば引き返していく親子連れもいる。
中には汗で化粧が壊滅した恐ろしい怪物もいた。
「コレハヒドイ」
道の途中、笑顔で水を売っていたおっちゃんがいたがあれは化け物だと思う。
それほどにこの暑さは耐えがたいものであった。
ふと、隣のアオイの目をやってみる。
さっきまでとは違う意味で目が死んでいた。
「だ、大丈夫か?」
「ああ、おれはだいじょうびゅ、おれさいきょうだし」
今にも死にそうだった。
アオイは雪の国から来たと言っていたので暑さにはなれていないのだろう。
「辛いなら帰るか?」
「馬鹿言え、せっかく来たのにすぐに帰れるか!」
「いや、でも速攻で引き返している人もちらほらいるんだけど」
道を進むにつれて人影が消えていく。
そしてどんどん気温も上がって行った。
「これは、ヤバいな」
シヅキですら命の危険を感じた。
隣のアオイは汗で着物が服に張り付き、とてもセクシーな姿になっていた。
「だ、大丈夫か?」
そろそろ帰った方がいいかもしれないと思った。
そんな時、ふと思った。
シヅキがテトラに魔法を教えてもらったとき言われたのだが、魔法には物質に性質を加える能力があると言われたのだ。
つまり、シヅキの持っているp能力に魔法の概念を追加すれば道具に冷却機能を追加できるのではないかと考えた。
シヅキは早速手持ちの荷物の中で一番なくなっても困らないさっき買った水筒に能力を使用した。
魔力を何かに込めるというのは初めての試みであるが、意外にもそれはうまく行った。
しかし、何も変化が見受けられない。
おかしいなと思いつつシヅキは試しに水を飲んでみた。
するとすぐに変化が現れた。
体から熱が抜けていく。
「おお、成功だ!」
水には熱を奪う効果があるが、それを増幅したのか新たに冷却機能を追加したのか、それは分からないが涼しくなった。
「アオイ、これを飲むんだ!」
アオイに冷却水を飲ませる。
すると彼の容体はみるみる回復していった。
「暑くなくなった? シヅキ、一体なにがあったんだ?」
シヅキの能力の説明を受けたアオイは驚いていた。
「すごいな。このなにも作業のできそうな施設のないここで熱に耐性を持たせる水を作るなんて」
「俺も驚いている。魔力の概念をp能力に応用したことはなかったからこんなことが出来るとは……」
二人はすでに人の気配のないエリアに来ていた。
いるのは運動関係の人と職員の人のみである。
このあたりになると一般人は大体帰るそうだが所見でここまで来た人を見るのは久しぶりだとおじちゃんに褒められてしまった。
「そのp能力というのは魔法ではないのか?」
「いや、魔力を使わなくても別に問題ないんだよな。というかしばらく前までは魔法の概念すら知らなかったわけだし」
そうシヅキが言うとアオイは首を可愛らしく傾げた。
「魔力を行使せずに使える能力、あまり聞いたことはないな。本当だとすればすごく便利そうだ」
アオイはそう言うと深く追求しようとはしなかった。
シヅキも正直あまり深く知っているわけではないので深く聞かれないのは非常に助かった。
と、話しながら歩いているとついに火口入り口の看板が見えた。
「ついたな。シヅキ、心の準備はいいか?」
「ああ」
二人は鉄製の展望台に足を踏み入れた。
眼下に広がったのは深い深い大穴と、その底にたまる一面の溶岩であった。
展望台の表札には転ぶとやけどしますと書かれている。
それほどまでに熱いここも眼下に広がるものよりはずっと冷めているのだろう。
しかし、二人が目を疑ったのは溶岩でも深い穴でもなかった。
それは穴の中央、溶岩から突き出た石の柱にそびえる巨大な像だった。
その像の風格は上からでは確認できないが、それはかなり大きな物体であるということが見降ろしただけで分かった。
「あれは何だ? あれだけ溶岩に近いのに大丈夫なのか?」
アオイは長い髪の毛が地面で焦げないよう手に持った。
アオイは地面になるべく顔を近づけてその像をよく見ようとする。
「お嬢ちゃん。あれは煉獄の使いという名の像だよ」
急に声を掛けられた二人はそちらの方を向いた。
二人が興味を持ったことに気が付いた従業員が快く解説してくれたのだ。
従業員のおじさんは涼しい顔をしながら近づいてくる。
暑くはないのだろうかと二人は疑問に思った。
アオイはとりあえず文句を一言言う。
「俺は男です。お嬢ちゃんではありません」
「おお、それはすまないね」
「あの、煉獄の使いって何ですか?」
シヅキはおじさんの口から出た単語を口にする。
するとおじさんは得意げに説明を始めた。
「あれは火山の噴火を抑制する力を持つ神器で、太古の昔に煉獄の者と呼ばれる種族が作ったらしい。今あれは我々にとって大切な遺産だよ」
神器、その言葉にシヅキは胸の高鳴りを覚えた。
あの像は太古の文明人の英知の塊。そう思っただけで直接触ってみたいという気持ちになる。
しかし現実は非情であの位置に到達する技術が今の人類には存在しないらしい。
あの像は正面から見た姿が未だに分かっていないのだ。
シヅキは前回の水の剣の時から神器に対する執着が強くなっていた。
彼自身、その理由を測りかねていたが少なくともその気持ちが好奇心であるという自覚はあった。そしてその先にもっと大きな気持ちがあることも。
シヅキはしばらく眼下の光景を眺めた。
二人は魔人の大口を後にした。
アオイはまだ髪をまとめていた。
本人は気が付いていないようなのでスルーした。
「……ところで、どうしてあそこは魔人の大口って言われてるんだろうな。煉獄の大口でもよかったんじゃないかな?」
「確かに。どうしてだろう」
新たに疑問が出来てしまった。
シヅキは疑問の解決と煉獄の使いの観察のためにまたこの地を訪れることを心に誓った。
「それじゃあ、俺の宿はこっちだから。俺は明日もあの俺たちが会ったところをうろうろしているから気が向いたら来てくれ」
「ああ、明日も行くよ。じゃ、また明日な」
男か女かは定かではないが、少なくともシヅキに友達が出来た。
それだけでもこの旅行の甲斐があったなとシヅキは思った。
………最も、旅館で女性陣全員に睨まれるまでは、そう思っていた。
今回男しか出ていないのに作者の心は満たされた。
やっぱり男の娘って最高だぜ!
ちなみに言動行動が男らしいと書きましたが、見た目と声と視線、息遣いなどは女性の物に限りなく近いのでぶっきらぼうな女性と言った方が伝わりやすいレベルです。
さらに本人は意識していませんが上目遣いや可愛いしぐさを意識せずにしているので普通の人は彼を男とは思いません。
しかし性癖も性格も男なので普通に女の子が好きでとても活動的です。
さらに思考も男なので女性と思って接していると違和感しかありません。
なぜ作者がこんな長々とアオイについて語っているかというと、ギャップ萌えに弱く男の娘がめちゃくちゃ好きだからです。
可愛いものは何でも好きですが特にこの分野は作者の中では大きな勢力となっています。
しかしボーイズラブにはなりません。作者が好きなのはあくまでも萌えとしての男の娘であって他ではありません。




