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第4話 解析ーできると思った?ー

メイド服の女性、マリーと呼ばれた美女はゆっくりと警戒しながら馬車に近づくと、荷台に置いてあったカバンに手をかけ、慎重に開ける…


「(ヤッバーイ!!落ち着け…落ち着けオレ!冷静に考え…無理!無理ー!!)」


どうにか声は出さなかったものの、ぬいぐるみの思考は纏まらず、ぬいぐるみなので汗をかかない筈なのに、背中を冷や汗が流れる感覚を感じているなか、マリーは胸元のポケットから、片眼鏡モノクルを取り出すと、右目にはめ、じっとぬいぐるみを眺めた。


「マスター…解析結果をお伝えします、生体反応はありません、外部の材質は天馬ペガサスのものと思われます、しかし残念ながら私では、内部構造の解析不能のようです。」


「なんと!!天馬ペガサスとな!?人形の素材に使うなど聞いたこともないぞ…しかも内部が解析出来んとは…戻るんじゃ!マリー!」


「(オレはそんなに警戒されるようなもので作られたのか…イシュトめ…)」


クリスは天馬ペガサスと聞き驚愕を覚えたようだが、直ぐにマリーに命令を下す。

マリーも即座に元の位置、サリーの横まで跳び、再び警戒の姿勢を取った。


「…やっぱり問題になったない…だから捨てろっていったよい」


「でも、捨てるのかわいそうじゃないですかー?」


親方とケニーが、クリス達とは違い、呑気に喋っていると、クリスが口を挟むように声をかける。


「いや、持ってきてくれて良かったわい…このあたりでまともに対処できる者は、残念ながら他におらんじゃろうからの…さてどうするかの…」


クリスは考えるように黙り込むと、暫くしてマリーに話しかける。


「マリーよ、確認じゃが生体反応は無かったんじゃな?」


「イエスマスター、生体反応は確認出来ておりません。」


「では、契約残滓はあったか?」


「先程の解析では、確認出来ておりません」


「(さっきから、生体反応が無いとか…オレ生きてるんだが…いや、生きてるよな?まぁ、ぬいぐるみだし…仕方ないのか?)」


マリーの報告を聞いたクリスは呟く様に思考する。


天馬ペガサスを素材にしておるようじゃし…潜在的に魔力マナを宿しておってもおかしくはない…しかし、いったい誰が…」


「あのー…クリスさん?あのぬいぐるみ、危ないんですかー?」


ケニーは考え続けるクリスに、空気を読まずに問いかける。


「ん?…あぁ、生体反応は無い様じゃで、多分安全じゃろうの…じゃがのー…魔力マナを持っとるのが気になる…内部解析もできぬ様じゃし…」


クリスは、杖の持ち手で頭を掻きながら答える。


「良かったー、危なく無いならマーヤにあげてもいいですかー?」


気楽なケニーの問いに、クリスは張り詰めていた気が抜けたのか、苦笑しながら応える。


「いや、このまま渡すのはどうかと思うの、知らんじゃろうから仕方がないが…わしの様な魔人形使役者パペットマスターの近くに、あれのような魔力マナを持つものをただ置いとくとな…あまり良く無いのじゃよ」


「そうなんですかー?」


「…うむ、それを説明するには魔人形パペッターの原理を知っておらんとの…よし、良い機会じゃで、ひとつ講義をしてやろう。」


杖を下ろしたクリスは、ケニーではなく親方に話しかける。


「…と、言うわけで、暫くケニー坊を借りるが…よいかの?」


親方は、いつの間にか咥えていたタバコを、プカプカと吹かしながら応える。


「荷物の受け渡しは終わってるし、今日はこの後の予定はないよい、問題無いよい。」


「あ、親方!まだ馬車の片付けがまだですし、今度で…」


「大丈夫じゃ、サリーが代わりにやるから心配せんで良い。」


クリスはケニーの言葉を遮り、親方も便乗するように言葉を続ける。


「なら、儂はいつもの宿に行ってるよい、ケニーもたまには真面目に勉強するよい。」


「は…はーい…」


逃げられ無いと悟ったケニーは、苦笑いなのか困っているのか分からない表情だった。


「(なんか面白そうだし、オレも聞きたいけど、どうするかなー…)」


「マリーよ、ケニー坊のカバンを持って着いてくるのじゃ、ただし警戒は怠らぬようにな」


「(お、良かったオレも聞けるんだな…)」


「畏まりました、マイマスター」


クリスの言葉に従い、マリーは馬車の荷台に近づき、ケニーのカバンをゆっくりと持ち上げる。


「(さっきは慌ててたから気が付かなかったけど…この人、凄くいい匂いするな…)」


カバンはマリーが前に手を突き出すように持ったが、淡い香水のような良い香りが、カバンの中まで伝わってきて、ぬいぐるみは少しだけ木を緩める。


「では、二階に行くとしようかの…サリー、馬車を頼むぞ。」


「畏まりました、マイマスター」


サリーの返事に頷きで返したクリスは、ケニー、マリーを伴い、先程自分が出てきた扉から、建物へと戻るのだった。


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