第17話 発見ー新たな力の欠片ー
少し短いです。
御意見御感想、誤字脱字の指摘、なんでもお待ちしています。
『(迷路みたいだからって、壁壊しちゃ駄目だって…)』
「ち!違うし!こんな脆いと思わなかったんだよ!」
『(はいはい…あの程度の相手ならもっと弱い能力で良かったんだよ…)』
「初めてなんだから仕方ないだろ?次から気をつけるよ…
で…さっきから鳴ってるこれは?」
影鬼を消し飛ばした能力、雷砲により、迷宮の壁が数枚崩れたためか、迷路の奥からであろう警報音が、微かに聞こえてくるようになっていた。
『(さぁね…さっきので何処か壊れたんじゃない?)』
「まじか…怒られたりするかな?」
『(誰にさ?攻略済みの迷宮なんて、対して価値も無いだろうし、問題ないよ。
それよりも、やり過ぎると天井が崩れてくるかもしれないから、そっちの方に気をつけて欲しいね)』
呆れたようなサティの言葉で、怒られることはないと、少しだけ安心したシロマは、床に落ちていたある物に気がつく。
「そっか、気をつけるよ…ん?
あれは?なんか落ちてない?」
シロマの視線の先には、先程吹き飛ばした影鬼のものと思われる物が落ちている。
『(ん〜、なんだろね?さっきの奴が持ってた物だろうし、何かの道具だとは思うけど…)』
「触っても大丈夫なものかな?」
『(多分大丈夫だと思うよ。さっきから気にし過ぎだって!?)』
「知らないんだから仕方ないだろ!変なものだったら嫌じゃんか!?」
『(大概は大丈夫だって。それでも気になるなら、棒かなんかで触ればいいんじゃね?)』
キョロキョロと周りを見渡すが、そう都合よく棒や枝なんかは、落ちてはいない。
シロマは、仕方なくそれに近づき拾い上げる。
それは、淡い光を放つ欠片だった。
「…大丈夫…だね…これなんだろうね?」
『(さぁ?とりあえず、持って帰って調べてみたら?)』
サティも知らない道具に、少しだけワクワクしているシロマだったが、突然の呼びかけに驚かされる。
「あ、あ、聞こえるか?侵入者?」
「はい!…え?誰だ?」
突然聞こえてきた声に、シロマは驚き、反射的に返事をしてしまう。
キョロキョロと辺りを見回すが、自分以外の人影はなく、加工したような声だけが迷宮内に響く。
「お前の実力は、先程の戦闘で見させてもらった。
影鬼には勝てたようだな…だが、その程度でいい気になるなよ?もっと強力な魔物は、いくらでもけしかけられるんだぞ?
…しかし、今直ぐこの地から立ち去るなら、命だけは助けてやってもいい。
どうだ?いい提案だろう?」
迷宮に響く声の主は依然として分からなかったが、どこか苛立つ喋り方に、シロマは転生後初めての怒りを感じる。
「…サティ…こいつ、もしかして、喧嘩売ってんのかな?」
『(さぁね、そうだとしたら、どうする?)』
「…こいつは倒したい、戦ったら負けると思うか?」
『(…さぁね、負けるなら逃げるのか?)』
シロマが少し考え込むと、誰か分からない声が更に続ける。
「どうした?見逃してやると言っているんだ、死にたくはないだろう?
さぁ、さっさと尻尾を巻いて逃げろよ。」
馬鹿にしたような声に、シロマの中で何かが切れる。
「…決めた、こいつは倒す…どこにいると思う?」
『(多分奥にいるだろうよ。さっき壊した壁の方に進めばいいんじゃないかな?)』
「こっちか……雷砲!」
シロマは、先の戦闘で壁が崩れていた箇所に、再度雷を撃ち込み、迷宮の壁が一直線に崩れていくと、謎の声が慌て始める。
「おい!や、やめろ!それ以上進むんじゃない!!」
「…てことは、こっちなんだな…雷砲!雷砲!雷砲!!!」
『(おいおい…崩れるぞ〜……)』
謎の声がシロマを止めようと声を発するが、それは逆効果だった。
シロマは、同じ方向に連続して雷砲を打ち込み続ける。
迷宮の壁は、どんどんと撃ち抜かれていき、壁を吹き飛ばした衝撃で、地面に積もっていた埃が土煙と共に巻き上げられ、通路の視界はほとんどなくなってしまう。
「…ケホケホ…う〜…やり過ぎた…かな?」
『(やり過ぎだね、天井が崩れたら俺たちも埋まっちまうぞ?)』
まだ、パラパラと細かい瓦礫が落ちていたが、ゆっくりと土煙は収まっていき、視界が晴れていく。
『(まぁでも、道は出来たみたいだぜ?)』
迷宮に、新たな通路が出来上がってしまう。
最奥へと至る、直通通路が。