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第9話 南門ー鳥と魚と香辛料ー

フリードは屋根の上を飛ぶように進み、1分も掛からずに街の南門に到着した。


「さ、南門に着いたよ。…マーヤ、大丈夫?」


南門近くの建物に、静かに降り立ったフリードは、抱き抱えていたマーヤを優しく下ろし、気遣うように声をかけた。


「な、なんとかね…」


「あっはっは!飛んでるみたいで気持ち良かったな、マーヤ!」


興奮気味に話すシロマとは対極的に、マーヤは顔を青くしその場にへたり込む。

シロマは力の抜けたマーヤの腕から逃れると、一つ伸びをしてフリードに問いかける。


「なぁ、オレもフリードみたいに屋根の上飛んだりできるようになれるか?」


「んー、そうだね…固有能力ユニークスキルが発現すればできるんじゃないかな?」


シロマは「へぇ、そうなのか」と生返事をしながら、心の中で話しかける。


「(サティ、ユニークスキルってのはなに?君も言ってたし、教えて欲しいんだけど)」


シロマの体には、自らをサティと名乗った悪魔が取り憑いている。

知ってることなら教えてくれると言っていたことを思い出したシロマが問いかけた。


『(ん?あぁ質問ね、固有能力ユニークスキルは特別な力の一種だよ、固有ユニークとは言っても別に唯一無二って意味じゃなくて、操水フラクアとか飛行フライとかの簡単なものなら、結構使える奴も多いんじゃないかな)』


「(ならオレもフリードみたいに飛んだりできるのか?)」


『(んー、できるかは分かんねーよ、使える能力スキルは基本的に本人の素質次第だしな…)』


「(そうか…飛べたら楽しいだろうなって思ったんだけど…)」


『(飛行フライか…固有ユニークの中じゃ簡単な方だけど…最初は下級能力レッサースキル浮遊ホバーくらいから始めた方がいいと思うぞ?なんだったら俺が教えてやってもいいけど?)』


「まじで!?」


フリードはマーヤの手を取り立ち上がらせていたが、シロマが突然声を上げたので、そちらに向き首を傾げる。


「どうした?何かあった?」


「な、なんでもないよ!あは、あははは…」


『(今はあれだから、夜にだな。1人になってから声かけな)』


シロマは慌てて誤魔化し、サティが空気を読む中、フリードはシロマをまっすぐ見つめ話す。


「そう?ならいいけど、僕とも仲良くして欲しいから、何かあったら遠慮はいらないよ」


「わ、わかった…」


フリードは指で帽子を弾くと、白い歯を光らせ笑みを浮かべ、満足そうに大きく頷く。


「よし!それじゃシロマもこっちにおいで、下に降りてお昼を食べよう。」


シロマはフリードの手で持ち上げてもらうと、再びマーヤに抱かれ共に空を舞う、今度はマーヤも悲鳴をあげることはなく、静かに地上に降り立った。


「よっ…っと…さて、ここからは歩いて行くよ。お店の名前は?」


「えっと…なんとかカサードだったんですけど…あ!フォリナ・カサードです!」


「フォリナ・カサードと…ちょっと待ってね」


フリードは目を閉じると、頭の中でテーパの街の地図を広げる。


「…見つけた、ここなら直ぐだね、行こうか。」



………



南門周辺もお昼時ということもあり、様々な食べ物の匂いが漂い、嫌が応にもお腹が減ってくる。


「フォリナ・カサード」は、香辛料スパイスをふんだんに使ったカサード料理を出す店で、その珍しさと確かな味で、連日行列を作っていた。


「フォーリナ・カサード!香辛料スパイス沢山!一度食べればやみつきになるカサード料理の最後尾はこちらでーす!30分くらいでご案内できまーす!」


元気な売り込みの声に導かれたのか、漂う香辛料スパイスの香りに引き寄せられたのか、今日も多くの人が列をなしていた。


マーヤの手を引きながらフリードは店の前に到着し、他の人と同じ様に列に並ぶ。


途中フリードが飲み物を買いに行ったりしたが、ただフリードが紳士なだけなので割愛する。


ゆっくりと列は進み、シロマ達の番になる。


「お次、2名様ですか?魔人形パペッターの席は混み合っておりますのでちょっと…はい、2名席でしたら直ぐご用意出来ますよ…ではご案内させていただきます。2名様ご案内ー!」


マーヤとフリードは、混み合った店内を二人用の小さな席に案内される。


「こちら料理表メニューになります。本日のおすすめは、ベイルード産マクマク鳥の窯焼きになります。ご注文がお決まりになりましたら、お呼び下さい。」


店員が水の入ったグラスを二つと、料理表メニューを置いて去って行った。


「うわー、リクヒトデとかありますよ!凄い、ファロンの肉や紅魚まで!あーどうしようー迷うー」


「今日は僕の奢りだから、好きなものを食べていいよ」


料理表メニューを見ながら唸るマーヤに、フリードは笑いながら話しかけた。


「マーヤ、オレも食べられるか?」


「齧る事は出来るだろうけど…汚れるだけだよ?」


マーヤは膝に乗せたシロマに答える。


「そうか…残念だ…」


残念がるシロマをよそに、マーヤは料理表メニューを食い入る様に見つめていた。


「決めた!これにします!あ、私ばっかり見ててごめんなさい。フリードは何にするの?」


「僕はさっきのマクマク鳥の窯焼きにしようと思ってたから、見なくても大丈夫だよ、すみません注文お願いします。」


フリードはマーヤから料理表メニューを受け取ると、近くで食器を片付けていた店員に声をかける。


「お待たせしましたー、ご注文お聞きしますー」


「この、紅魚の香草焼きのランチセットと、マクマク鳥の窯焼き、あと…炙り野菜の香辛料スパイスサラダをお願いします。」


「紅魚の香草焼きランチとマクマク鳥の窯焼きと炙り野菜の香辛料スパイスサラダですね?ランチセットの飲み物は何になさいますか?」


「えーっと…桂皮シナモン水でお願いします」


「畏まりましたー、出来上がり次第お持ちしますので少々お待ちくださいませー」


店員は、伝票に書き込むと下がって行き、料理が来るまで、三人は待つことになった。


「さっきはゆっくり自己紹介できなかったからね、改めて…僕はフリード・カーリィ、マーヤと同じアリエッタ村出身だ、マーヤや兄のケニーとは、小さい頃から仲良くしてもらってる。職業は、この通り…アルバート王国南方方面守護騎士隊所属、階級は准尉だよ。」


「ご丁寧に…あーと…オレはシロマ、マーヤのパペッターってのだよ。まだ分からないことばかりだから、いろいろ教えて貰えると助かる。」


シロマがぺこりとお辞儀すると、フリードも頷き、マーヤも何故か頭を下げた。

フリードは吹き出すと、水の入ったグラスを持ち上げ一口飲む。


「まぁ堅苦しいのは好きじゃないから、このくらいにしよう。シロマってさ…」


フリードに聞かれる形で、シロマはこの世界の色々なことを知ることになったが、その辺りは何処かで話すことにしよう。


10分程して、注文していた料理が運ばれてきた。


「お待たせしました。紅魚の香草焼きご注文のお客様…マクマク鳥の窯焼きご注文のお客様…炙り野菜の香辛料スパイスサラダは真ん中でいいですか?はい、ご注文の品は以上でお揃いでしょうか?では、ごゆっくりお楽しみ下さい。失礼しまーす」


マーヤの頼んだ紅魚の香草焼きは、紅魚の切り身を数種類の香草ハーブを使って焼き上げた料理で、川魚である紅魚は特有の泥臭さがあるが、他のどの魚より味は美味い。香草ハーブの香りが移ることで、特有の臭いを抑え、紅魚の味を引き立てる。


「おいしそー!んーいい香りー」


フリードの頼んだマクマク鳥の窯焼きは、山鳥であるマクマク鳥のもも肉を様々な香辛料スパイスで味を付け、石窯でこんがりジューシーに焼き上げた料理である。


「うん、これは美味しそうだね。冷めないうちに食べようか。」


「はい!いただきまーす!」


マーヤは魚の身を、先の割れたスプーンで解すと、香草ハーブと一緒に口に運ぶ。


「んーーーー!!香草ハーブって凄いですね!こんなの初めて食べました!美味しいです!!」


口に入れた瞬間、香草ハーブの香りが鼻を抜け、紅魚の身もほろり崩れる。


フリードは鳥の足を手で直接持ち、口に運ぶと、パリパリの皮の中からジュワッと肉汁が溢れてくる。


「うん、鳥もこんなに香辛料スパイス使ってるのにあまり辛くないし、これは美味しいよ。」


「ですね!これは癖になりますよ!他のも食べてみたいです!」


「そうだね、その内ケニーも一緒に来よう。」


二人が食べながら盛り上がる中、シロマだけ食べられないため、つまらなそうに呟く。


「…オレだけ食えないけどな…これも別に味しないし…」


シロマはランチセットのデザートについてきた、アルガリの実を器用に持って齧っていた。

遅くなりました、料理の描写に手をつけてみたら泥沼でした…

紅魚はサクラマスの皮まで紅いやつを、マクマク鳥は飛べる七面鳥みたいなイメージで描いてみました。

アルガリの実は見た目は葡萄ですが、あまり甘くない口直し程度の物です。

次回は主人公の能力披露回にしたいと思っていますが…あくまで予定です。

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