王都の冒険者3
王都に朝日が二つ昇った。
一つは燃え盛る王城であり、もう一方は本物だ。
二つの太陽に照らされて、しかし王都は晴れやかではなかった。
物々しい武装の集団が行き交っている。
それは王国の治安維持を任された兵団だけではなかった。
正式採用の統一された装備の者達の横を、統一感も清潔感もない武装の者達が通り過ぎた。
冒険者達である。
「やってらんねぇよ……」
「なんで王剣がいねぇんだよ、使えねぇ……」
口々に悪態をつきながら通りを歩くその姿は退廃的である。
一歩歩くごとにつばを吐いているわけでもないのに、王都の住民も彼らを避けるようにしている。
「こいつぁダメだな」
レスターは大通りを眺めながら吐き捨てた。
冒険者ギルドのエントランスホールである。
「しかし、他に手はない。わかっているだろう?」
レスターの隣で、同じく大通りを眺めていたのはミスレイだ。
「んなこたわかってらぁ……しかし、士気が低すぎる。このままじゃ死ぬぜ」
レスターは鋭い視線をミスレイに送った。
「貴方が居てもか?」
「誰がいたって同じだろうが……」
レスターはちらりと後ろを見る。
そこには、ギルドに召集された冒険者達が居た。
ギルドの入り口をくぐって、また一組ギルドに冒険者が到着した。
王都に居る冒険者が集結しつつあるギルドは物々しい雰囲気に包まれている。
「そうかも知れないな」
ミスレイは言った。
「しかし、やらねばならない」
ミスレイは腰に差した剣をそっとなでた。
ミツルギが目を覚ますと、紛れ込んでいた路地の汚い道の上だった。
どこかで人の声が聞こえる。
混濁した意識に憎悪が芽生えた。
「壊す……」
ミツルギが呻きながら起き上がろうとしたとき、ふいに会話が聞こえてきた。
「北に魔獣がでたらしい……」
男の声だ。
「へぇ……それで王剣が王都に帰ってきてたのかい」
会話の相手は女のようだ。
王剣という単語を聞いて、ミツルギの混濁した意識が回復する。
「ああ、だが、その王剣は全滅してるって噂だ」
「なんだって!?」
「ほら、王城が襲撃を受けたって話があったろ」
「そりゃあったけど……。王剣が居ないんじゃ、誰が魔獣を倒すんだい?」
魔獣。何の話だ。とミツルギは思った。
「冒険者だとさ」
「なんだって!?」
「冒険者ギルドに集結してるのを見てきた。まちがいねぇよ」
「騎士団はどうしたんだい?」
「わからねぇ。全滅したとかいう、ろくでもない噂も流れてるが……」
「そいつが本当ならこの国はお終いだね……」
ミツルギはふらふらと立ち上がった。
自分の右手を見て呟く。
「俺は……」
頭を振った。
「いや、この世界は許せん……」
ミツルギは路地裏を行く。
憎悪の炎も、冷えた体を温めてはくれなかった。
ただ、着ている外套だけが、ミツルギを守っていた。