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序
悪魔めいた赤い月が荒野を暗く照らしている。
トオノは震える心を必死に押さえつけて目の前の人物を見つめた。
夜を塗り固めたかのような外套を身にまとい、光をまったく反射しない片刃の長剣をその手に携えている。
間違いない。トオノは確信した。
このときをながいこと待っていたのだ。
「お前が『魔剣』か?」
トオノは夜をまとう男に問いかけた。わずかに声が震えている。
「そうだ。お前は『王剣』だな?」
トオノは声が出せなった。震えて言葉が出ないのだ。代わりにひとつ頷いた。
鞘から抜き放ったままの、自分の剣が頼りない。そして、それでよかった。
「死ぬがよい」
月が言ったのだ、とトオノは一瞬思い違いをした。
悪魔めいた赤い月がトオノの視界一杯に広がる。頭を切り飛ばされていた。
崩れ落ちた体はもはや何も感じることはない。
すべては消えうせたのだ。
』の位置修正
「お前が『魔剣か?』」
↓
「お前が『魔剣』か?」