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第7話 援軍到着?

 あの作戦会議から三日が経った。

 現在、村人総出で要塞化の真っ最中である。ゴブリン達はまだ村に接近してきておらず、予想外の事ではあったが、そのおかげで準備は整いつつある。

 最初、村人達に作戦を話した所、かなりの人数が反対した。反対したのは、主に村の外周部に近かったり、逆に要塞に近すぎた家に住んでいる人達だ。


 外周部に近い人々の主張は、『なぜ村の外周に沿って塀や堀を作らないのか?』と言うのが主であり、これは村長から広範囲に守る事が出来ない、と言った理由の説明で納得した人達が多かったので、すぐに収まった。なお、この説得には、同じく外周部に近い所に宿屋を営んでいた、宿屋のおばさんとおばあさんが率先して賛成に回ったのが大きかった。

 しつこかったのは要塞に近すぎた家の人達で、自分達の家が壊されるのが納得がいかず、あまつさえ、『自分達の家まで範囲を広げればいい』と言って駄々をこね、しまいには妨害まがいの事まで行ったので、仕方なしに力ずくで黙ってもらう事になった。

 因みに、黙ってもらう事になったのは、対価として、真っ先に家を再建させる・保証金はきちんと払う・ゴブリンの素材から採れる素材の代金の分配を、多少ではあるが多めにする……と言う条件にも納得せずに妨害を続けた、反対派の一部だけだ。

 彼等は、『村の決定事案を執拗に妨害した』として軽犯罪者扱いとなり、現在は臨時で作られた牢屋(代わりの小屋)に繋がれている。一応犯罪者なので、対価の話は適用されないと言う事になった。


 そう言った見せしめもあり、反対派は自然解体になり、家の解体時には率先して自分の壊していた。

 率先して壊していたのはおそらく、『対価の条件維持』とか『他人が壊すよりは自分で』とか『協力した事のアピール』とかだろうと村長が言っていた。


 そのようなトラブルはあったが、要塞化は急激な速度で進んでいった。

 理由は俺のチート能力だ。


 俺に与えられた、『最強の魔法』と『色々な最強の魔法』と『最強の魔法を何発でも』と『最強の絶倫』のおかげで、僅か三日足らずで要塞が出来つつある。

 おそらく、『最強の魔法=魔法の威力UP』、『色々な最強の魔法=色々な魔法が使用可能』、『魔法何発でも=MPみたいなものUP』、『最強の絶倫=体力UP』と言った感じなのだろう。


 DQN5を馬鹿だ馬鹿だと、心の底から馬鹿にしていたが、この時ばかりは感謝した。何せ、あの馬鹿達のチート能力のおかげで、少ない時間で要塞が出来上がりそうなのだから。


 俺は村人達に指示を出して、大きな杭を要塞の壁になる予定の場所に打ち込んでもらった。

 杭は三本に一本くらいの割合で4mを超す長さの物が撃ち込まれ、杭と杭を繋ぐように縄が張られた。

 およそ一日半で全部の杭打ちは終わり、そこから俺の魔法が活躍する時が来た。


 まず、俺は杭から20m程の位置に線を引いて行く。これは要塞の端から端まで、線を引いて行った。

 この線は堀を掘る為の目安の線で、この線に沿って魔法を使って行く。


 使う魔法は土属性で、俺がイメージした通りに土を移動させていく。移動先は杭の所で、杭に沿って土を壁の様に積み上げて、最後に圧縮させるイメージで固めていく。

 この圧縮のイメージは地面の下や堀にも使っており、万が一にも穴を掘って侵入する事が出来ない様にしている。なお、圧縮された土はまるで金属の様になっており、ハンマーなどを使った村人が、数人がかりで叩き壊そうとしてみたが、びくともしなかった。

 堀は深さ4mはあり、塀の高さも4m程あるので、実質8mの塀が出来上がった事になる。しかも、塀は外側に反る形になっているので、ゴブリンが上ってくる可能性はかなり低い。

 

 この塀と堀造りには、土魔法を使える冒険者や村人も手伝っていたが、俺の魔法を見終わった後、皆肩を落として落ち込んでいた。


 塀造りと並行して行われていたのが作物の収穫で、これには半分以上の村人と冒険者が取り掛かったので、1日足らずで終える事が出来たようだ。ただ、収穫時期では無かったので、ほとんどの作物が熟す前であったが、それでもゴブリン達に食べられるよりはましだと、収穫に当たった村人達は言っていた。


 未熟な収穫物ばかりであったが、全てを集めてみるとかなりの食べられる量があり、村中から集めた食料と合わせると、最低でも半年は籠城できそうな量になった。


 そして一番肝心の水だが、これが一番簡単であった。

 何せ川が近く、集積場があると言う事で、かなりの数の井戸が掘られてあり、更には大きな水がめも沢山あったので、今は女性が中心になって水汲みをして水がめに溜めている最中である。


 だが問題もあった。人数に対して薬などの医療品が少なく、寝床も少ない。

 医療品については回復魔法を使える者が何人かいる為、彼らの負担は大きいが何とかなる感じではある。しかし、寝床に関しては屋根のある所に皆雑魚寝、と言うのが当たり前になっており、数少ないベッドは、寝たきりの老人や、重病人や重症の怪我人用に確保するので精一杯であった。

 一応布団はほぼ全員分を確保できているので、硬い地面に横になるだけ、と言う事態は回避できた。


 そして一番の問題が……


「やっぱり、武器はこれだけですか……千単位のゴブリンを相手にするには、どう考えても少ないですね」


 俺は村長とギルド長と共に、武器庫と言う名を付けられた小屋の中に居た。


「それは仕方ないじゃろ。これでも、この規模の村にしては集まった方じゃと思うぞ」


「そうだね。確かに少ないけど、それでも冒険者達の武器まで取り上げた訳じゃないから、実際にはこの倍近くがあると……思いたいね」


 確かに冒険者達の武器は入っていないが、籠城戦に置いて一番必要な武器は弓矢だ。でも、この村に来ている冒険者のほとんどは、近接武器を使っているそうなので、どちらにしても相当の数が足りていない。


「上から石でも投げつけますか……下位のゴブリン達になら、効果はあるでしょうから」


 それしか無いと二人も同意し、またも土魔法を使える者を集めて要塞の外から土を運び入れ(塀の一部はまだふさいでいない)、様々な大きさの石(の様に固めた土)を大量生産していった。


 



 要塞化を開始してから5日目。未だにゴブリンは姿を現していないが、村長たちの要請した援軍も到着していない。


「このままゴブリン達が姿を現せなければいいのですが……でも、あの黒色のゴブリンを見る限り、大量の餌(・・・・)繁殖相手(・・・・)が居る所に来ないと言う事は無いでしょう」


「確かにそうじゃな。だが、村人の中からは、シノブが嘘をついたのではないか、と疑う者も出てきておる。それに援軍が来ないのも不気味じゃな……」


 二人の話を聞いている時、塀方が騒がしくなった。俺達は騒がしい塀の近くまで行き、先にいた冒険者を捕まえた。


「おい!何があったんじゃ!」


「多数の人間の様なものが、走ってこちらに向かってきているらしい!」


 村長の言葉に、冒険者が慌てて答えた。

 俺は取りあえず塀の上まで飛び上がり、人間の様なものが見えたという方向を向いてみた。それは川下の方から来ているらしく、かなりの距離があったが、身体強化のチートを持つ俺なら、目を凝らせば普通に見える距離であった。


「向かってきているのは、冒険者らしい男女が五人!さらにその後ろから、五十程のゴブリンの群れが追いかけている!」


 ゴブリンが来ていると聞き、何人かの男達が未だに空けてある塀を、慌てて閉じようとした。 


「まだ閉じるな!俺達を助けようと来た奴らが追われているんだぞ!」


 俺の言葉に男達は迷いを見せたが、その内の一人が前に出てきた。


「じゃあ、どうすればいいんだ!このままだとゴブリンに攻め込まれるぞ!」


 その男の心配は最もだ。だが、援軍に来た者を見捨てることは出来ない。


「俺が行って来る!念の為、数人の冒険者は塀の外に待機していてくれ。万が一逃した場合でもホブはいなかったから、黒色になっているといっても、ゴブリンの50くらいで負ける事は無いだろ?」


 俺が挑発気味に冒険者達に言うと、冒険者達はニヤッと笑い、各々の武器を掲げて気合の入った雄叫びを上げた。


「何人かの冒険者はシノブさんについて行って!無理に村の外まで行かなくてもいいから!」 


 ギルド長が指示を出す。それに何人かの冒険者が頷き、すぐに入り口を護る者と俺の後をついて来る者に分かれた。


「無いとは思うが、何匹かのゴブリンが村に紛れ込んでいる可能性がある!絶対に一人で行動するな!」


 俺はそう言って塀を飛び越え、ゴブリンから逃げている冒険者達の所へと走っていった。

 塀を飛び越えた時、何人かが惚けたような声を出していたが、確認する暇など無かった。


 要塞から冒険者達の所までは、大雑把に見積もっても4~5kmほどはある。要塞から村の外周までは1kmちょっとくらいだから、村から冒険者達まで3km以上ある事になる。


 そう考えると知らない内にゴブリンが近づいていた事になる。これが夜だったり、大群であったりしたら、村の防衛が機能する前に戦闘に突入していたかもしれない。

 冒険者達には申し訳ないが、囮乙!と言った感じだ。


 そんな事を考えながら走り続けると、ものの数分で冒険者を視界に捉えた。


「しゃがめぇぇぇ~~~~!」


 俺は、ゴブリンに追いつかれそうになっている冒険者達に向かって叫び、地面を思いっきり蹴り、ゴブリン目掛けて低空で跳んだ。

 俺が蹴った地面は、まるで爆発が起こったかのように爆ぜ、俺に気が付いた冒険者がギリギリのところでしゃがみ、何とか俺を回避した。


 俺は地面を蹴ると同時に、バッグからエクスカリバーを取り出していた。

 そしてそのまま、カッコよくゴブリンを細切れに……では無く。

 エクスカリバーを取り出した事で空気抵抗が起こり、俺の体はまるで弾丸の様に回転し、制御できずにゴブリン達の間をすり抜けてしまった。

 

 そして着地に失敗……俺と言う弾丸は、ゴブリンの群れを抜けた辺りから体ごと地面に落ちて、そのまま数十m程地面をえぐった後止まった。

 止まった瞬間、何とか片膝を地面に突いて座り、何とかカッコだけは付けた。


 そして何事も無かったかの様に振り向いた瞬間、ゴブリン達も同時に振り向き……そして体がズレ落ちた。

 

(…………何で?)


 全てのゴブリンは無数の輪切りとなって絶命している。

 そして、冒険者達は腰を抜かしている……


 よく見ると、冒険者達の居る少し後ろから地面に無数の細い線が入っている。どうやら溝になっているようで、深さは分からないが、線は俺が通った所を中心に、左右3mくらいの辺りまで続いていた。

 更によく見ると、その線はらせんを描いているようで、線は斜めになっており、俺のすぐ後ろまで来ていた。

 更に更によく見てみると、線は俺が地面に突き立てているエクスカリバーの所まで続いている。


 その事から判明したのは……


(エクスカリバー恐るべし!)


「じゃねぇ!」


 俺は自分の心の声に自分で突っ込んでいた。

 要は、俺が回転し始めた時に、空気抵抗を受けたエクスカリバーの刃先から、何らかの力が発生し、地面とゴブリンを切り裂いたのだろう。

 

 ここで肝心なのは、偶々(・・)空気抵抗が起こったのが、冒険者達のすぐ後ろ(・・・・)であり、奇跡的(・・・)に冒険者達には被害が無かった……と言う事だ。もし、空気抵抗が数瞬でも早ければ、冒険者達もゴブリンと同じようにスライスになっていた……


 俺は冒険者達の顔をちらりと見て、傷一つない事を確認してホッとした。


(もし、彼らをスライスしていたらと思うと……想像できんほどに、恐ろしすぎる!)


 例えば、スライスしてしまったのが、俺の判断基準で殺しても良い奴(シャルに手を出そうとした奴とか、シャルを襲おうとした奴とか、シャルを変態的な目で見た奴とか、盗賊みたいな犯罪者など)ならそこまで気にはしないだろうが、彼らは俺達の力になろうと駆けつけてくれた(たぶん)いい人達だ。

 そんな人達を輪切りにしてしまったら、事故?とは言え流石に後味が悪い。


 驚愕の表情で俺を見る冒険者達。 

 俺は冷静を装って立ち上がり、にこやかに声を掛けた。


「危ないところでしたね。ところで、あなた方は救援に来た冒険者ですか?」


 俺はエクスカリバーをバッグに仕舞い、体の砂を叩き落としながら冒険者達に近づいた。

 冒険者達も、俺に声を掛けられた事で我に返ったようで、互いに支え合いながら立ち上がった。


「そ、そうです。助けに来たのに、逆に助けられてしまって……あっ!申し遅れました。僕達は、この周辺の村などで冒険者活動をしている『コルメ・アンビシャス』です」


 見た感じでは、優しそうな村の若者、と言った雰囲気で、村への移動中に放しを聞いてみると、俺と同い年であった。そして、彼らのパーティー名にある『コルメ』とは、彼らの出身の村から取ったそうだ。

 ここからはだいぶ離れた所にあるそうで、この村に雰囲気が似ており、その関係でよく村に依頼を受けに来ていたそうだ。因みに、俺が今居る村の名前は『ウグラ』と言うらしい(彼らから聞いて初めて知った)。


「お~い!無事だったか~~!」


 村の門が見える所まで近づくと、門の所で来て警戒していた数人の冒険者と村人が、遠くから大きな声で無事を確かめてきた。


「ああ、無事だ!怪我はしていないが、少し疲れているようだ!誰か先に要塞に戻って、何か飲み物でも準備するように伝えてくれ!」


 俺の返事を聞いて、一人が走り出した。

 彼らは俺の後を追って来たようだが、俺が速くて付いてこれなかったので、門の所で警戒をしながら待っていたそうだ。


 コルメ・アンビシャスのメンバーを要塞へと案内すると、この村の知り合いの冒険者に背中を叩かれながら無事を祝われていた。


「それで、君達の他に援軍はいないのか?」


 まだ、知り合いにもみくちゃにされている最中であったが、一番知りたかった事をズバッと聞いてみた。

 空気を読んでいないのは分かっているが、今は空気よりも情報の方が大事だと思っての事だ。


「は、はい。僕達は独自にやって来ました。そんなに多くはありませんが、余分に食料や武具も持ってきています。一応『モンジュ』のギルドには話を通してきましたが、『モンジュ』所属の冒険者は出払っている人達が多くて、未だに準備が整っていないそうで、こちらに向かうにはまだ時間がかかるそうです。ただ、自分達以外にも、何組かのパーティーが独自にウグラを目指したそうなのですが……誰も来ていないのですか?」


 最後に質問をしてくるリーダー格の男。周りにいた冒険者に問われ、リーダー格の男がこの村を目指して先行したパーティーの名前を何組か言うと、冒険者の何名かが悲痛な面持ちになった。

 どうやら、自分達の知り合いのパーティーがいた様だ。そして今までそのパーティーがこの村に来ていないと言う事は、ゴブリン達に襲われた可能性が高いと言う事であり、最悪の事態に陥った可能性もある、と言う考えに至ったのだろう。


「さ、先に出発したパーティーは、僕達よりベテランの方ばかりなので、どこかに避難して隙を伺っているんだと思います!」


 周りの空気が悪くなったのを気にして、リーダー格の男が慌ててフォローをするが、あまり効果は無かった。


「取りあえず、君達はこの村の村長とギルド長の所へ行ってくれ。近くに居ると思うから……って、あそこにいるな」


 俺はこちらに向かってきている二人組を見つけ、コルメ・アンビシャスの面々を向かわせた。

 彼等はこの場から離れる事が出来ると分かり、少しホッとしたような顔をして、速足で二人の所へと向かった。

 そんな彼らと入れ違いになる形で、シャルが俺の所へと小走りでやって来た。


「シノブさん!怪我はありませんでしたか!」


 シャルは、俺に抱き付かんばかりの勢いで目の前まで来て、俺の全身を触りながら怪我の有無を調べている。


「シャル、大丈夫だから少し落ち着こうか……皆見てるからな」


 慌てて俺の全身を弄っているシャルを、女性陣は微笑ましそうに、男性陣は嫉妬と羨望の入り混じった眼差しで見ていた。


「ご、ごめんなさい……シノブさんが急にゴブリン目掛けて走っていった、って聞いたものでつい……」


 恥ずかし気に俯き、顔を赤く染めているシャルを、俺は抱きしめて周りに自慢……したくなったが、グッと堪え、代わりに頭をなでてお礼を言った。


「心配してくれてありがとう、シャル。俺は無事だから安心してくれ。それに、俺がゴブリンごときに負ける筈がない事を知っているだろ?」


 そう言うと、シャルは無言で抱き着いて来た。

 そんな俺達の様子を見て、周りの男性陣の視線が、まるで呪詛を撒き散らすかのようなものに変わってしまった。

 ……正直、ゴブリンなんかよりも、この視線の方がずっと怖い。


「あ~……その、ね……」

「シノブ、乳繰り合っとるところ悪いんじゃが、ちょっと来てくれ。コルメ・アンビシャスの情報を整理したいんじゃ」


 遠慮がちに声を掛けてきたギルド長とは違い、村長は遠慮無く、俺とシャルの仲を引き裂いて来た。

 そんな村長に対し、周りの男性陣は手を組んだりして拝んでいる。

 そして、そんな男性陣は、周りの女性陣から白い目で見られていた。


 村長に声を掛けられたせいで、シャルが周りの状況に気が付き、慌てて俺から離れてしまった。

 なので、俺は恨みのこもった視線を村長に向けたが、村長は気にしていなかった。どうやらこの村は、ギルド長より、村長の方が肝が据わっているらしい……


「はいはい、分かりましたよ!それじゃあ、また後でねシャル。カエデの世話をよろしくね」


 俺はシャルに手を振ってから、村長の後について行った。


 能力だけ見たら、シャルはそこらの冒険者よりも、十分戦力になるくらいの力を持っているが、俺はあえてその事を村長には話さず、ギルド長も黙っていた(半分俺に脅された為)。

 なので、シャルには基本的にカエデの世話という名目で、なるべくカエデのそばに居るようにさせている。

 これはカエデがずっと一人だと拗ねてしまうと言う事もあるが、それ以上に万が一の時の為に、カエデ()シャル()連れて逃げるのを期待しての事だ。

 カエデは馬なのに人並みの知恵を持ち、人の言葉を理解しているので、何かあったら無理やりにでもシャルを連れてこの村から逃げるように言ってあるのだ。

 最も、カエデならば、俺が言わなくてもシャルを連れて逃げる事ぐらいはするだろう……俺を見捨ててでも……


 そう言う事なので、シャルがカエデのそばに居てくれた方が俺としても安心するのだ。()よけ(物理的な)の意味も含めて…… 


 シャルにちょっかいを掛ける男が出た場合、そいつには罰としてゴブリンの囮になってもらうかな……などと心の中で冗談半分に計画を立てていた。

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