第3話 ランクアップ
久々の投稿です。
シャルが猫から狐へと変更しています。
忍が盗賊達の馬車に乗って、じいさん達の馬車の後について行っている最中、シャルは何度か御者を変わると言っていたが、忍はそれを断り手綱を放さなかった。
「あのぉ、シノブ様…」
「いいって、俺も楽しんでいるからさ」
「はぁ…」
何度目かのやり取りの後、忍はふと疑問が生じたが、少し言いにくいことだった。何か聞きたそうな忍を見て、シャルが、
「知りたいことがあったら、なんでも聞いてください。私は、あなたの奴隷なのですから」
との言葉を聞いて、少し複雑な気分になった忍だったが、
「言いたくなかったら、言わなくていいからね」
と前置きし、
「なんで盗賊達に、乱暴されなかったの?」
と言った後、慌てて、
「いや!シャルがあいつらに、乱暴されてた方がいいとかじゃなくてね!」
と、しどろもどろに弁明をしたが、
「ああ、そのことですか」
と本人はケロッとしていた。
「これを見てください」
そう言って左手の袖を捲るシャル、その腕の中間あたりに、5cm程の黒い帯のようなものが、張り付いている。よく見ると、何か呪文のようなものが書かれていた。それが、帯のように見えたのだ。
「これは、何?」
俺は、それをつつきながらシャルに聞いた。シャルは時々、んっ、とか、あっ、とか色っぽい声を出しながら、
「これは『毒蜂の呪』と呼ばれるものです」
毒蜂、と聞いて慌てて、手を引っ込める忍。その様子をみて、シャルは微笑みながら、
「大丈夫です。触ったくらいでは発動しません」
と言って、毒蜂の呪をさする。
「これをしている限り、男性は、私の身体に侵入することができません。無理に侵入すると、その男性に呪いが掛かり、死に至ることもあります」
死ななくても、男性機能が不能になりますけど、と恐ろしいことを言っていた。
「これは私の部族ではよく、結婚適齢期に入る前の女性が、親などから付けられるもので、解呪も専門の呪い師くらいしかできません。盗賊達の一人が、たまたま知っていたみたいで、これを解くことのできる、非合法の呪い師を探しているみたいでした」
見つかる前に、忍様にやられましたけど、とにこやかに言っていた。
忍は興味が湧き、シャルの腕の毒蜂の呪を触りながら、なんとなく魔力を流してみた。すると、毒蜂の呪が淡く光出し、空中に剥がれるように浮かんで消えていった。
俺とシャルは数秒間固まり、そして顔を見合わせた。すると、
「きゃー!やったー、取れたー!」
と、シャルが忍に抱きついてきた。忍は突然の幸福に、その身を任せるのだった。
「あっ、す、すみません、シノブ様!あまりの嬉しさに、つい……」
と幸福が離れていく。忍は残念な気持ちになりながら、
「どうして、そんなに嬉しいんだ?それがあったから、これまで無事だったんだろ?」
と、不思議になって聞いてみると、
「実はこれ、副作用もあるんです。毒蜂の呪が発動した場合、運が悪ければ、本人も死んでしまうことがあるんです。それに通常でも魔力が制限されて、体力も少し落ちるんです」
その上、碌に恋もできませんし、と最後に小声で言っていたが、忍にはしっかり聞こえていた。
「そうだったのか。それじゃあ、勝手に解いてしまったが、別に良かったんだな」
と言うと、心なしか、シャルの顔が少し赤く、目も潤んでいる。
「これは噂話なのですが……毒蜂の呪は『運命の人』に出会うと簡単に解ける、というものが私達の部族にはありまして……」
なにっ、ひょっとして俺、今フラグ立てた?とシャルを見ると、ニッコリと笑って、
「これから先、末永くお願いします。シノブ様!」
と三つ指をついて、挨拶をしてきた。
それからのシャルは激変した。俺をじっと見ていたり、自分の体を抱いてくねらせたりしていたが、基本的にはニコニコしていた。
「そういえばシャルって、何の獣人なの?」
「氏族ですか?私は狐族です。金毛の狐族とも言われています」
と言っていたが、
「金毛?栗毛じゃなくて?」
とシャルの髪をすくいながら聞いてみたら、
「ああ、私達の髪の色は栗色が多いのですが、魔力を通すと金色に見えるんです。そして女性の方が綺麗な金色になりやすいので、髪を伸ばした女の人がモテると言われています」
どうですか?と聞いてくるので、指で髪をすきながら、
「サラサラで綺麗な髪だね。俺は好きだよ」
と言うと、シャルは頬を赤く染めながら抱きついてきた。
そのやわらかな感触を楽しんでいると、ふと前方より視線を感じた。顔を上げると、前を進んでいる馬車の荷台から、おばさんとお孫さんが覗いていた。
二人は俺と目が合うと、グッ、とガッツポーズをしてみせる。お孫さんに至っては、手をグーの形にして、親指を人差し指と中指の間から突き出している……分かってやっているのか?あっ、それに気付いたおばさんが拳骨を食らわせた。
お孫さんは頭を抑えて悶絶している。
「どうかしましたか?」
シャルが顔を上げて前を見ようとするが、頭を抱き寄せて、
「なんでもないよ。気のせいだったみたい」
と答えると、そうですか、と顔を俺の服に埋めて抱きつく。それを見たお孫さんは、悶えながらも右手を空につき出し、親指を立てた。
よくやった、と言いたいのだろうが、その感じでは、有名なサイボーグの最後の場面に見える。
俺は心の中で、アイル・ビー・バック!と叫んでいた。
そんなこんなで時間は過ぎていき、いつの間にか村の門の近くまで来たようだ。じいさん達の家は門のすぐそばにあるらしい。
「シノブさん、今夜は家に止まっていってください。家は小さいですが宿屋をしておりますので、部屋はあります。もちろんお金はいりません」
と門を通ってすぐの所で、じいさんが馬車を止めながら申し出てくれた。俺は礼を言って、厚意に甘えることにした。
「ありがとうございます。御厚意に甘えさせていただきます」
「そうですか、さあ、行きましょう。中で婆さんが待っています」
と言っていたので、
「息子さんはいないのですか?」
と何気なく聞いてしまった。じいさんは少し黙ったあと、
「息子は少し前に、盗賊退治に駆り出されたのですが……」
と、体を震わせながら語りだした。
「すいません。知らない事とはいえ……」
と謝ろうとした時、お孫さんが家のドアを開けて、
「ただいま~。あっ、お父さん帰ってきてたの」
と言い出した。俺は咄嗟にじいさんを顔を見て、
「息子は死んだんじゃねーのかよ!」
とかなり失礼な事を言ったが、じいさんは、
「ふんっ、あんな奴は、死んだほうが良かったんですよ!」
と言い放った。
じいさんが言うには、碌に宿の手伝いをしないで、村の衛兵の仕事に就いたと思ったら、今度は盗賊退治で怪我をして仕事を辞めて……と不満タラタラだった。
外でじいさんの愚痴を聞いていると、
「おい、親父!知らない人に俺の悪口を言ってんじゃねえ!本当の事だと思うだろうが!」
と男性(以下、おじさん)が家から出てきた。
「ふんっ、ほぼホントの事じゃろうが!」
「だから、その『ほぼ』っていう、比率がおかしいんだろうが!」
とそこで俺を思い出したようで、
「いきなり申し訳ない。俺の妻と娘を助けてくれたみたいで、本当に感謝している」
と頭を下げてきた。そして、今度はおじさんが愚痴を言ってきた、
おじさんは、宿の仕事は主に力仕事で、短時間で終わるくらいしかないので、その後は村の知り合いの手伝いをしている。そして、衛兵が足りていないので臨時で入った時に、盗賊退治に駆り出されて怪我をした、だが盗賊の頭を捕まえたので、その報奨金と治療費と衛兵の賃金とを合わせると、思っていた以上の金が手に入ったので、今は治療に専念している、だそうだ。
正直言って、おじさんの話の方が正しそうだ。
「ふん、盗賊退治で逃げ回っている途中で、たまたま怪我をして倒れていた奴を見つけて捕まえてみたら、それが盗賊の頭だっただけじゃないか」
とのじいさんの言葉で、どっちの言い分が正しいかわからなくなってしまった。
「くだらないことで言い争って、恩人を困らせるんじゃないよ!この、馬鹿ども!」
と、家からおばあさんが雷を落としながら出てきた。そして、俺に向き直り、
「ごめんなさいね。義娘と孫の恩人に見苦しいところを見せてしまって……」
と頭を下げて謝った。気にしてませんよ、と言ってシャルを紹介しようとしたら、
「あれ?シャルがいない」
どこにいるのか探すと、シャルは馬車の中に寝床を作っている最中だった。
「何してるのシャル?」
と聞くと、シャルは、
「私の身分は奴隷なので、馬車の中で寝ようかと…」
と話の途中でおばあさんが、
「何を言っているの。シノブさんのお仲間を奴隷だからと言って、外でなんか寝かせやしませんよ」
と強引にシャルの手を引いて家の中に入っていく。俺もそのあとに続くと、俺が入った後でおばあさんはドアを閉めて鍵までかけた。
外では、じいさんとおじさんがドアを叩きながら、開けてくれ~、と騒いでいた。どうやら、おばさんとお孫さんも手伝って、一階の出入りできそうな所にも鍵をかけたようだ。あまりにも騒がしかったので、おばあさんは結局二人を中に入れる事にしたみたいだ……皆が寝る前に。
二人が外に出ている間に、俺とシャルは晩御飯をご馳走になっていた。
この宿屋は、一階の大部分がこの家族の住居部分で、二階と三階が宿になっているそうだ。二階は6畳の部屋が2つに10畳の部屋が1つ、三階は6畳が3つあるらしい。俺達には10畳の部屋を貸してくれるそうだ。
俺はシャルと一緒の部屋という事で緊張したが、それを見たお孫さんの身に起こった不幸(例のポーズからの拳骨×2)を見て、緊張が薄れた……今回ばかりは助かったぜ、お孫さん!(空に向かって敬礼)
「死んでないから………(ガクッ)」
俺のボケに、最後の力を振り絞ったツッコミを入れたお孫さんは、そのまま意識を手放した。
「何日かここで寝泊りをすればいい。もちろん代金はいらん。これが鍵じゃ」
と俺に鍵を差し出すじいさん、そのついでに、うまくやるんじゃよ、と俺に耳打ちした次の瞬間、おばあさんの拳骨でお孫さんの隣に沈んだ。
「家の馬鹿達がご迷惑をかけて、本当に申し訳ない」
と、おばあさんが再度、頭を下げる羽目になっていた。じいさんとお孫さんは、おじさんとおばさんに運ばれて奥の部屋へと消えていった。
「シャル、行くよ」
と声をかけたが、シャルは半分眠っていたので、おばさんの助けを借りて背中に背負い、部屋へと向かった……背中の感触を楽しんだのは、シャルには内緒だ。
部屋にはベッドが二つ有り、片方のベッドにシャルを寝かせると、俺はもう片方の毛布の中に潜り込んだ。
異世界生活一日目から、色々な事が立て続けに起こったので、思った以上に疲れていたらしく、俺にしては珍しく、無警戒のまま深い眠りに落ちたのだった。
(なんか、暑い。俺の身体に、ふにふにする柔らかい物が二つあたっている…なんだろ、これ)
俺は半分眠ったまま、そのやわらかな物体を鷲掴みにした。その瞬間、
「あんっ」
と聞きなれない艶のある声が、顔のすぐそばから聞こえた。
慌てて確認すると、俺の右手は神を鷲掴みにしていた。気の動転した俺は何故か無意識に右手をニギニギと動かす。その度にシャルの可愛らしい口から、色っぽい声が出る。
その声に我に帰った俺は、素早く神から手を放した。その少し後に、シャルが目を開けた。その顔はほんのりと上気している。
「おはよ~ございます~、旦那さま~」
シャルは寝ぼけているのか言葉が所々伸びている。しばらくして覚醒した彼女は、
「あれ?なんでここに?」
と首をかしげていた。その様子を見ながら、俺の心臓は二重の意味でバクバクと音を立てていた。
「お、おはよう、シャル。どうして俺のベッドにいるんだ?」
と、俺の動揺を悟らせないように質問をした。
「え~っと、確か夜中に目が覚めて、トイレに行って戻ってきた…までは覚えているんですけど……」
そこから覚えていません、と言った。そこまでわかれば、答えは自ずと導かれるがな。
「取り敢えず起きて、顔でも洗おう」
と、シャルと連れ立って下へと向かった。
この宿のトイレと洗面台(水瓶などがあるだけ)は、一階の端の方に有り、風呂場は無い。正確にはあるのだが、浴槽などは無く、水瓶にお湯をためて体を拭いたりする場所だそうだ。ちなみに有料。
宿の洗面台は、何故かお孫さんが使っていた。
「おはようございます」
「ます~」
シャルはまだ寝ぼけているようで、最後の方しか聞き取れなかった。
「あっ、シノブさんシャルさん、おはようございます」
普通に挨拶してきたな、と思ったら、
「ぐふふ、昨日はお楽しみでしたね!」
と、にやけた顔で変な勘ぐりを入れてくる……よかった?いつものお孫さんだ…
「想像しているような事なんて、何一つありませんでしたよ」
俺は顔色は変えずに、心で泣いた。
そんな俺を見て、ヘタレ野郎、といった感じで見ているが、気にしないでおこう。
なにせこの後直ぐに、この子の身に不幸が訪れるのは確定しているのだから……3、2、1、0!
ドゴンッ!
とお孫さんの頭に、不幸が訪れた。
犯人は、お孫さんの二つ目の言葉(昨日は…)のあたりで、俺の正面(お孫さんの後方)から顔を見せたおばさんだ。
「本当にごめんなさいね」
と頭を下げながら、床でもがいているお孫さんの足を持って、引きずりながら自宅の方へと向かっていく。
俺は、毎度の事だ、と気にしないようにして(引きずられていくお孫さんの、パンツやおへそが見えた事も含めて)水瓶から桶で水を汲む。
「シャル、顔を洗えるか……って無理そうだな」
ゆらゆらと体を揺らしているシャルを見て、自力での洗顔は無理だと判断した。かといって、俺が洗ってやっても絶対にうまくいかないと思ったので、バッグからタオルを取り出し、水で濡らして軽く絞ってからシャルの顔を拭いていく。
「ふわっ、なんですか!」
顔をタオルで拭き始めて直ぐに、シャルの意識は覚醒して慌てだした。だが、俺が顔を拭いていると判ると、黙って俺のなすがままになっていた。
「これで綺麗になったかな?おはよう、シャル」
「おはようございます、シノブ様。顔を拭いていただいて、申し訳ありません。こんなにぐっすりと眠れたのは、久々で……」
いつもは寝起きがいいんですよ!と、シャルは顔を赤くして言っている。
「そうなのか。じゃあ、俺は運が良かったんだな。シャルの珍しいところを見れて」
と笑いながら言うと、シャルは頬を膨らまして、そっぽを向いてしまった。
「ははは、ごめんごめん。許してくれ、シャル」
と言いながら俺も顔を洗っていく。だが、ふと歯ブラシが無かった事を思い出して、
「そう言えば旅をするには、色々と足りない物があるな」
お金はあるけど、どこに行けば売ってるんだろう、と悩んでいると、
「起きたのか、おはよう。飯ができてるぜ、食べるのなら案内するぞ」
とおじさんがやって来た。食堂はあまり広くはないが、今日は他に宿泊客がいないというので、広々と使えた。
食事を終えてのんびりとしていると、じいさんが顔を出した。
「おはようございます。昨日は眠れましたかな?」
何だかお孫さんの言葉と同じ意味に聞こえるが、取り敢えずよく寝れたと答えた。じいさんはちょっとつまらなそうな顔をしたが、おばあさんが現れたので慌てて、
「そ、そう言えば、シノブさんの職業は何なのですかな?」
と、かなり強引に話をずらしてきたが、
「職業?旅人ですけど…」
と、何だか的外れなことを言ってしまったらしく(そもそも、職業が旅人の時点でおかしいのだが)、変な顔をしていたが、おばあさんが、
「もしかして、ギルド登録をしていないんですか?」
と聞いてくるが、
「そもそも、ギルドとか職業と何なのですか?」
と聞き返した……まあ、大体のことはラノベやゲームでわかっているが、もし違うようならまずいからな。
「そう言えばシノブさんは、小さな村の出身だとか行っていましたな」
と、じいさんは勝手に納得していた。ちなみに、シャルも詳しくは知らないそうだ。
「ギルドとは簡単に言えば、斡旋場……組合のことですな。色々な種類があり、複数のギルドに所属することもできます。職業はギルドで、自分が何に向いているかを示すもので、メインジョブとサブジョブがあります。ジョブの種類は人によって様々で、基本はメイン1個にサブが1個ですが、人によってはサブを複数付けることができます」
「それだけじゃねえぞ。ジョブをつけると、そのジョブに関連する能力が上昇する、と言われている」
人によって伸び方が違うがな、とおじさんが話に加わってきた。
「さらに、職業とは別に称号というのもある。これは、何を成し遂げたり、生まれついてのものがある」
これも多少力が上がるのも在るな、と付け加えた……ますます、ゲームの世界みたいだな。
「しかし、シノブさんはジョブや称号無しであの強さですか…すごいですね」
じいさんはそういうが、俺の能力自体ズルしたようなもんだからなぁ……設けもんだとは、思っているがな!
「この村にはギルドや、旅に必要な物を買える所はありますか?」
そう聞くと、おじさんが、
「ギルドは大きくはないが、一応あるぞ。旅に必要な物なら、ギルドでも一通りは売っているはずだから、まずギルドで買い物をしてから、足りないものを雑貨屋なんかで買うといいかもしれんな」
「雑貨屋はギルドの斜め向かいにありますから、ギルドの商品と比べてから購入してはいかがですかな?」
と二人はアドバイスをくれた。
「ありがとうございます。早速行ってみます。」
「あっ、ギルドはここを出て、道を門の反対方向に進むと直ぐに見えてきます。ドアの上に赤い看板を掲げている建物ですので判り易いですよ」
そう教えてくれて、俺達を見送る二人だった。本当に仲が悪いわけでもないらしい。
「シャルは何か得意なことはあるの?」
「私ですか?ん~、強いて言うなら魔法ですかね。そんなに威力はありませんが、攻撃魔法と回復魔法をひと通り使えます。あとは、弓もですね。魔法と併用して使います。」
話を聞くと、どうやらシャルは後衛タイプのようで、獣人なのでそれなりの身体能力はあるが、前衛が務まるほどではないらしい。
「そっか…なら、弓矢と魔法使い用の装備なんかが欲しいね」
「私の事よりも、シノブ様の装備を揃えてください!」
シャルはそう言うが、
「あっ、言ってなかったね。実はこの服、普通の服に見えるけど、れっきとした防具なんだよ。しかも高性能の」
と言って、大精霊の鎧の一部を変化させた。
「……すごいです、ここまで形状を変えることが出来るのは、最低でも精霊以上の存在の祝福を受けた物ですね!」
この世界では常識なのか知らないが、直ぐに防具の秘密を言い当てる。そのことを聞いてみると、
「私の村にも精霊の加護を受けた防具が、一つだけあったんです。でもそれは小さめの籠手で、ここまでの物ではありませんでしたが……それでも大変珍しい物だそうです。ですので、知っている人は知っている、と言った感じの存在です」
と教えてくれた……人前でむやみに解除しないようにしよう、と決め、シャルにもそう言って聞かせた。
「まあ、そういうわけだから、俺の防具はあまり必要ないんだ。剣もいくつか持っているし」
そう言って、バッグの中にあるフラガラッハとデュランダルの事を話す。
「それにシャルも、ギルドに登録してもらおうと思っているし、旅をするなら自衛の手段は大いに越したことは無いさ」
とシャルの頭を撫でた。シャルは気持ちよさそうにしていたが、直ぐにギルドが見えたので、頭から手を離す事となってしまった。
「とりあえずはギルド登録とジョブの決定。それから買い物をして、今後の事を決めよう」
俺はそう言って、シャルと共にギルドのドアを開いたのだった。
前書きにも書きましたが、久々の投稿となってしまいました。
もう一つの小説の方に掛かり切りになっていたので、少しずつ書いていましたが、もう少しで一ヶ月が過ぎそうだったので、急いで書き上げました。
評価やご感想をお待ちしております。