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76 姿隠し




              ―――二十日目終了―――




その日は、熱もすっかり引いていて、体調は良好だった。

朝ごはんは食べずに、日記を描いたりシルバのブラッシングをしたりお風呂や洗濯を済ませてから、昼食をとり、明日の細かい作戦の予定をたて始めた。


ラッシュバルドの地図を床に拡げて、向かい合わせで座り込む。

「この庭が一番門が大きいから、ここから入ろう。」

「分かった。二手に分かれた方が良いかな…広いし。」

「いや、なるべくはぐれないほうが良いよ。なんかあったときに。ボクらは一応追われてる身だからね。」

「そうだよね…。ところで…この城のどこらへんにその人はいるんだろう。見つかるの、これ。」

「相当難しいね。城にいると言っても、殺されてもいないし、噂も流れていないのだとしたら、誰にも知られずに存在してることになる。つまり、誰にも見つかってないんだ。

ナユが会ったって言う精霊の話だと、もう千年は経ってるんだよね?その間誰にも見つからなかったんだよ。」

うわぁ、そう聴くと、とても一日で探し出すことは出来ないように思える。

そもそも探すってどうやって?状態なのに。

ティアがいればなぁ。


「ボクらが出会ったあの空間みたいに、強力な魔法で誰にも見つからないような空間を作ってるんだろうね。」

魔法が使えたのだろうか、その人には。

その人にも誰か、味方がいてくれたのかな…。

「でもナユ。その人が魔法をかけたのなら、同じ異世界人のナユは見つけやすいかもしれない。一階から順番に探して行こうか。」

「うん。」


「問題はどうやって見つからないようにするか、だね。門番から情報が入っているだろうから、警戒は厳しい筈だし…。キミの黒髪を隠すのはなかなか大変そうだしね。」

「帽子被ってもとられちゃうよね。」

「誰にも目撃されずに中に入るのも難しそうだし…。」

ギーツが考え込むように目を閉じる。

うーん…。

どうしようか。


そのまま眠ってしまいそうなギーツを見ながら、私も考えを巡らせてみるけどなにも思い浮かばない。

すると、シルバが私の手の甲に頬を寄せてきた。

「ん?」

どうかしたのかな、と思いながらシルバを撫でると、突如私の足元から銀色の魔法陣が現れた。

「いっ!?」


私の間抜けな声で、ギーツがはっと目を開けた。

そしてそのまま勢いよく立ち上がり、

「ナユ!?」

血相を変えて叫んだ。


は?

「ナユ、ナユ!どこ?ナユ!」

慌てて出て行こうとするギーツ。

え、何急に、え?

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってギーツどこ行くの!」

ギーツの背中に声をかけると、振り返ったギーツはキョロキョロと何かを探すように首を振り始めた。

あれ…?もしかして…。

見えてない?


「どういうこと…?もしかして、シルバの魔法か?」

ギーツは驚いたようにそう呟いて、さっきまで座ってた位置に戻る。

そして私のいる方向に目を向けて、

「ナユ、ここにいる?」

私の頭を軽く探した後に撫でた。

「見えてないの…?」

「見えない。声は聴こえる。」

これ、シルバがやってるの…?

隣にいる銀の狼に目を向けると、どこか得意気に小さく鳴いた。


「正直、こんな複雑な魔法まで使えるとは思ってなかった。」

ギーツは感心したような顔でこくこくと頷きながらシルバを撫でた。

「単純な魔法なら魔獣でも使えるけど、魔法が使えるってだけでも、実は結構すごいことなんだよ。魔獣でも魔法が使えないやつはいるからね。

それなのに混合魔法まで使えるなんて…。」

「コンゴーマホー?」

「ただの風や水の魔法じゃなくて、いくつかの魔法を組み合わせて生み出す魔法だよ。

さっきシルバが使ったのは、水と熱と光の三つの魔法を組み合わせたもの。姿を隠せる魔法だね。」

ほう。

シルバはすごいんだなぁ。

よしよし、撫でてやる。

「これならいけるかもしれないね。」

ギーツが地図に手を置いて頷く。

「よし、いよいよ明日だ!」




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