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32 仕返し

ちょっと黒い表現入ってますのでご注意ください。



 「あ、悪魔…?」

悪魔ァ?私が?

髪が黒いから悪魔、ね。

ま、怯えてくれてるなら、それを利用するまでだ。


 「ああ、痛いなぁ。」

私の声に、三人はびくりと震えた。

立ち上がって、三人を見据える。

出来るだけ冷たく。


 強張っているのを見て、いい気味だと思う。

ヴァシュカの敵は、私の敵。

今決めた。

私は三人の元へ狙いを定めて足に力をこめる。

走り回って大分コントロールが出来てきたので軽く床を蹴ると思っていた通りのところに着地できた。

女と、ボウガンを構えた男の間。

私が瞬間移動したように見えたのか、横に現れた私に驚く二人に反撃をする。

ごめんよ~。


 私は男の手の中からボウガンを蹴り飛ばす。

そしてその勢いを一旦殺して、反対の足でヴァシュカが撃ちぬいた女の足の傷を思いっきり踏む。

「っぁああああああああぁあああ!!!」

がごん、というボウガンが壁を突き破る音と、女の悲鳴が重なった。

「痛いだろうけど、いきなり家を壊して襲ってくるのも悪いことだから、おあいこにしてよね。」

私は、呆けてる長髪の男の腹部を蹴り飛ばしてにっこりと笑ってみせた。





 「恐ろしい娘じゃのう。」

「人を守るために戦うときは容赦はいらないんだよ。私は昔からそうだったし。」

とか言いつつも、やりすぎたかな、とは思ってる。

力入れすぎたかな。


 仲間がやられたときはやり返す。

私の家の家訓がそうだったから。

他人の為に怒る場合は徹底的に怒れ、やられたら三倍返し、は基本だった。

喧嘩したときも、「殴られた友達の仕返しをした」という理由の場合は褒められたくらいだ。

それが常識的に考えれば異常なことは分かってる。

でも、間違っているとは思わない。

やりすぎてるって思うことはあっても、やってはいけないことだとは思わないんだ。

それが我が家なのです。


 私が昔同級生と喧嘩して石を投げられたとき。

兄貴がキレてその同級生を思い切りなぐってその子の奥歯が折れてしまった。

そのことで相手の親が怒って私の家に来たとき、お母さんが兄貴の話を聴いて、相手のお母さんに謝らないですごい勢いでビンタをかましたのを覚えてる。

私は痛い思いまでしたのに怒られるのか、とか憤慨してたのにそれを見て逆に引いてしまったくらいだ。

そういう家族だから、私はこんな育ち方をしたんだけど。

でも、結構そのノリは好きだ。


 まあ何が言いたいかというと。

私は正しい、ってこと。

一般的には誇れることじゃないけど。

ヴァシュカがやられそうになったら守ろうと思うし、攻撃されたら仕返す。

これ当たり前。


 「すごい家族じゃの。面白い奴らじゃ。」

ティアはくつくつ笑って、そう言った。

また心見られた。

「妾はそういう気の強い者は好きじゃからのう。」


 精霊狩りの三人は、ティアに記憶を消されてどっかに転送された。

ティアは本当にすごい精霊らしく、壊れた家を魔法で元に戻すこともやってくれた。

「本来はここまでせぬのじゃがの。久々に楽しませてもらったゆえ。特別じゃ。」

本当に機嫌が良さそうに、ティアはそう言っていた。


 「主、足を見せてみよ。治してやろう。」

「ああ、うん。ありがとう。」

かすり傷だから大丈夫なのだけど、治してもらえるなら治してもらったほうがいいか。

私は、血がうっすらにじんだ右足をティアの方へ向けようとした。

が。


 何故か急に力が抜ける。

「あ…?」

視界がかすんで、そのまま後ろに倒れる。

さっきと同じように、床に頭をぶつけたのに全然痛みを感じない。

「おい、どうしたのじゃ?」

ティアが慌てて私に近寄る。

ヴァシュカも急いで私に寄ってきて、私はそのたくましい腕で抱き上げられる。


 「なんか…いきなり…。」

段々苦しくなってきた。

呼吸もしづらくなっていき、体が熱くなっていくのがわかる。

何…?

「おい…!まさか!?」

ヴァシュカは心配そうに、不安そうに眉をひそめる。


 ティアが私の右足を診て、気まずそうに頷く。

「毒じゃのう。しかも強力な毒じゃ。おそらく精霊用に仕込んだ物じゃろうから、人にはキツイじゃろう。」

毒?

あのボウガンの矢の先に毒が塗られていたのか。

小賢しい男だなぁ、もう。


 「即効性の毒じゃ。何故今こ奴が生きておるのかも不思議なくらいの、な。」

「なっ…!治せないのか?」

焦ったように、ヴァシュカが問う。

「分からぬ。とにかくこの毒は即効性の毒なのじゃ。普通ならとうに死んでおるじゃろう。その毒に妾が治療魔法をかけても、毒の進行の速さに、魔法が毒を抜く速さが勝てるのかと問われれば、正直可能性は低い。」

ティアが、私の足に手をあ当てて、何かを唱え始めた。

「やるだけやってみよう。それまでもつのじゃぞ、小娘。」

ティアの言葉が、急激に遠のいていく。

背中を支えているヴァシュカの手が震えているのがわかる。

心配かけちゃってる…。

ああもう、ドジだなぁ私。


 死んじゃったらどうしよう。

あーあ。兄貴、猫どうしたんだろうな。

飼ってるのかなぁ。

なんて。


 苦しいし熱いし。

ちょっと、やばい?


 どうしよう。

ここで死ぬのは遠慮したいなぁ。


 視界からはついに物の輪郭すら見えなくなった。

音もどんどん小さくなって…。


―――ナユ…!


 え。

今の…?


―――ナユ、大丈夫!?

  ナユ?ナユ!生きてる?おーい?


 この声…。

ジル―――?


 頭の中で、ジルの声が響く。

現状を理解できてないのだけど。


―――今、助けるからね!


 この時。

その言葉で、私は随分安心したんだ。



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