表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

古着屋アップル 第6話 短編版

作者: 岩田 ヒロ
掲載日:2026/05/23

日曜日。昼過ぎに駅で待ち合わせて、原宿へ向かった。

何を着るか悩んだけれど、結局先週と同じブルーのデニムに古着のコート。

フリースじゃなくても、この組み合わせも悪くない。

そして今日はピンクのリップ。――戦闘開始だ。


駅に着くと、もう全員そろっていた。

凛は先週と同じ太めのデニムに白のダウン。でも、なんだか雰囲気が違う。

あ、ピンクのリップ。なんで? と聞きたかったけど、

「詩もつけてるじゃん」と言われる未来が見えて、黙っておいた。

少し大人っぽく見える。

……もしかして、凛って湊か蓮のこと好きなの?


湊は黒デニムに茶色のダウン。背が高いから目立つし、普通にかっこいい。

蓮はブルーデニムに紺のPコート。

服だけ見ると、湊と凛がカジュアル組、蓮とあたしがシック組でペアみたい。

でも原宿までは湊と蓮が前を歩き、あたしと凛はその後ろを並んで歩いた。


---


アップルに着くと、店長はすぐにあたしのコートに気づいて笑顔で迎えてくれた。

凛は先週まで古着に否定的だったのに、

「ここ、あたし達が見つけた古着屋さんなんだよ」と誇らしげに紹介している。


湊は店内を見て回り、蓮は店長に声をかけた。


「詩が着てるみたいなコート、ありますか?」


店長がいくつか持ってくると、蓮は試着を始め、

凛がつきっきりで手伝っている。


……あれ? 凛って蓮が好きなの?


あたしは湊を目で追った。

湊は襟の大きなシャツやツイードのジャケットを見ている。


「湊、古着買ったことある?」

勇気を出して聞いてみた。


「ないない。古着屋さん初めて」


会話が続かない。焦る。

そんな時、凛が割り込んできた。


「ねぇ、蓮のこのコート似合うよね?」


見ると蓮がグレンチェックのコートを着ている。

店長が説明してくれた。


「詩ちゃんのは千鳥格子。こちらはグレンチェックです」


「二人並ぶと雰囲気出てますよね」


そう言われて、ちょっと照れた。蓮は嬉しそう。


「蓮、かっこいいよ。お世辞じゃなくて」


そう言うと、凛がニコッと笑って、


「写真撮っていいですか? 二人並んでるとこ」


蓮と並んでポーズをとる。

なぜか二人ともブルーデニムにコート。

凛のスマホを見て、雑誌の表紙みたいだと思った。


なんでこの組み合わせ?


---


「湊、お前も何か気に入ったのある?」


「このベスト、カッコいいよね」


湊は薄い茶色のベストを胸に当てて鏡を見ている。

似合ってる。


「湊って茶色好きなんだ。ダウンも茶色だし」


思わず言うと、


「あー、そうかも」


店長が補足する。


「薄手なので重ね着してチラッと見せるのがいいですよ」


へぇ、ベストってそんな着方があるんだ。

あたしは考えたこともなかった。


その後はみんなで服を見て回り、

「似合うねー」と言い合って写真を撮り合った。

他にお客さんがいなくてラッキーだった。

店長もいろいろ教えてくれて、とても楽しかった。


でも――

湊や蓮の言葉は、あたしの知らない世界の扉みたいで、

ちょっと怖かった。


男の子と話してドキドキしたことはあったけど、

こんなの初めて。

ジェットコースターに乗って、

自分の意思じゃない力で心が揺さぶられているみたい。

少し車酔いしてる感じ。


それでも「似合うね」と言われると嬉しかった。


---


気づけば1時間。

最終的に湊は茶色のベスト、蓮はグレンチェックのコートを買った。

二人とも「着て帰っていいですか」と言っている。


蓮の着てきたコートは紙袋へ。

湊はダウンの下にベストを着て帰るらしい。


凛はマフラーと手袋で悩んでいた。


「両方買えば?」

蓮が言うと、店長が「二つで半額でいいですよ」と言い、

凛は「やったー」と喜んだ。

……凛はいつも最後に得する。


---


さっきまで楽しかったのに、急に冷めてきた。

本当は湊がコートを買って、一緒に歩きたかった。

なのに買ったのは蓮。


あたしと蓮が“おそろい”みたいになってしまった。


もうコートを着たくない。

凛にあげちゃおうかと思った。


古着屋なんて来なければよかった。

早く帰りたい。

あたしが好きなのは湊なのに。

なんで蓮と似たコートなんか着てるんだろう。

惨めだ。


こんな時、どんな会話すればいいのか分からない。

受験勉強のほうがよっぽど簡単。


---


帰り際、店長が言った。


「右に行くと美味しいクレープ屋さんがあります。割引券どうぞ。友達の店なんです」


一人で帰りたい。

でも凛が、


「行こうよ、みんなで!」


と言い、湊が即答で「いいね」と乗った。

それも気に入らなかった。


四人が店を出ると、店長は満足げに呟いた。


「蓮くんは買ったコートを着て帰った。詩ちゃんと歩いたら絵になるだろうな。よしよし、上手くいった」


店長は、四人の複雑な気持ちなど何ひとつ分かっていなかった

本編はこちらから

https://ncode.syosetu.com/n0234lr/6

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ