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魔術師涼平の明日はどっちだ!  作者: 西門
第四章 願いと覚悟
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第36話 穏やかな時間

「委員長、そろそろ戻ろうか」


 俺は静かになった夜空を見上げながら、彼女に声をかけた。

 微かに海風に乗って火薬の匂いが漂ってくる。


 ここの花火大会は海上の沖に台船と呼ばれる、鋼鉄の発射台を浮かべて打ち上げる。

 陸からは充分安全な距離をとっているが、それでも近い沖からの花火の迫力は、相当な物だ。


 委員長は今も空を見上げている。

 やっぱ委員長って和服が似合う柳腰の美人だよなあと、俺は浴衣姿に感嘆してしまった。


 その横顔からあごにかけて、日本的なほっそりしたラインは彼女の魅力を引き立てている。

 空気感のあるお団子頭の、襟足からほつれた髪は、細いうなじにかかって美しい。


 俺は、錦絵の佳人を描いた画の様な色気を漂わす同級生に、ふいにどきどきしてきたのを誤魔化すため、もう一度委員長を呼ぶ。


「委員長、聞いてる?」


 彼女は花火を見ながら考え事をしていたのか、俺の声に、はっとこちらを見ると「そ、そうね」と焦った返事をした。

 俺は俺で、気持ちを落ち着かそうと今後の計画予定についてもう少し説明し、それに対する相手の反発や懸念についてもなるべく正直に答えた。 


 もっとも、この段階で変更するつもりは無かったので、多少強引な部分はあったが、委員長も俺の決意を知り、それ以上の反論は我慢してくれたのだと思う。


「これで、私も共犯だわ」


 浮かない顔で話す彼女に、俺は「約束の入口まで近いのに、なんでそんなに暗いかなあ」と突っ込みつつ、「それを言うなら八歳の時から共犯だろ?」と訂正した。

 しかし、彼女はかぶりを振って言いにくそうだ。


「それとは違う意味よ」


「なんの話だよ?」


 俺はさっきの説明が不十分だったのかと逆に質問するが、「馬鹿平が馬鹿だって話よ」と煙に巻かれるだけだった。


 委員長にしては歯切れが悪いよな、わけわかんねえ。


「いいから戻りましょ。もうすぐ魚政の順番じゃないの?」


 そう委員長に言われて、俺は携帯の時間を見る。確かに次のスターマインはあのアロハ親父の会社だ。


「よし早く行こうぜ。見逃したら、美雨さんの店に来たおっさんにぶうぶう言われるからな」




  ◆ ◆ ◆




「スズちゃん、歌埜ちゃん、おっそいよー」


里緒の大声が、単発花火の合間に松林から歩いて来た俺達の方に響き、波音しかしない砂浜の見物客の注意を引く。


「おい龍真、止めさせろって。色々あったんだよ」


 龍真が里緒の口を塞ぐと、コイツはモガモガと話続け、彼の手をどけて委員長へと問い掛けた。


「色々って、何? まさか、またスズちゃんにエッチな事頼まれた?」


 里緒に公衆の面前でそう責められては、模範的紳士な俺も黙っているわけにはいかない。


「頼んでねえ。あと、またって何だ!?」


 委員長より先に返答した俺に、検事兼裁判官のわがまま姫は先日の話を蒸し返した。


「前科者は黙るの。美雨さんに土下座して胸見せてくれって言ったじゃない。

 そんな海水浴土下座事件の現行犯だったのを温情で見逃してあげたんだから」


 里緒の指摘に、何も知らない周りの客は聞き耳を立てる。

 そしてなんとなく俺に対する視線が白くなっていくのがわかった。


「そ、それは話が別だろ」


 俺は「違うんですよー」という愛想笑いを周辺に振りまきながら、内心焦って否定する。

 今さっき、委員長のすいっとした首筋の色気に、俺が見とれた件はもちろん完全黙秘だ。


 そしてそんな俺達の攻防にかまう事なく、委員長はあっさりと言い訳をする。


「里緒、大丈夫よ。向こうでも電話が聞こえにくくて、何度か聞きなおしてただけだから」


「そっか、音大きいもんねっ。ここだとお腹まで響いてくるし」


 里緒も俺をからかいたかっただけらしく、すぐに花火の話に戻り、


「さっきの緑色がメインのスターマインは“緑の運命”グリーンディスティニィってタイトルだって。銀の小さい花火との組合せが凄かったんだよ」と感想を語る。


 そしてこっそり「歌埜ちゃん、実はトイレだった?」と委員長に囁き、「里緒は馬鹿平か」と脳天チョップされて頭を抱えている。


 そんな姿を尻目に俺は龍真に「何かくれ」と言って、まだ温かいたこ焼きを一箱受け取ると、爪楊枝で次々に口へと放り込んだ。


「いよいよ、おっさんの店の出番か」


「ああ、魚政は毎年派手だから、楽しみだな」


 俺は隣で7本めの牛串を砂浜に刺し、また次の串を手にする焼肉系男子の食いっぷりを見ながら、話を変えた。


「龍真、今度久しぶりに朝行くぜ」


 コイツは当然それで理解したのか「おお、そうか! 道場は八時からだぞ」と朝稽古(けいこ)の時間を確認してくる。

 ただ、今回は龍真と二人で稽古がしたかったので「いや、それより早い方」と答えた。

 すると、龍真はちょっと間を空けた。


「じゃあ、五時からだ」



「おまえ、相変わらず早起きだなあ」

 準備も入れたら毎朝四時には起きてるだろうと想像して、朝が弱い俺がさっそく音を上げるのにニヤリとしながら、この古流剣術馬鹿は事も無げに述べる。


「ガキの頃を思い出せよ」


 それで、俺も仕方が無いとばかりに頷き、残ったたこ焼きをお腹に入れた。

 

「あ、始まった」


 里緒の声とともに、虎の尾の花火がクロス状にに海上から光の帯を引いたまま何本も打ちあがる。上にいくにつれて太くなる火は、まるでライトアップ照明が、夜空を照らすようだ。

青い花火達へ重なるように黄金椰子がどんどん打ちあがり、それで海岸をイメージしている事が伝わった。


 そのうち青菊先や赤蜂の花火がいりみだれて、珊瑚礁が広がる海底へと舞台が移る。

 まっすぐだけでなく、両方へ斜めにも上がるので、花火の範囲も広くなり、竜宮へ到着したらしいとわかった。

 さらに、千輪などの色物や銀波などの金属片が燃える花火で鯛や平目などの魚が宴会を盛大に催しているシーンになった。

 

 この時点で、いままでのスターマインを超える量の花火の数だろう。

 観客も無言のまま、この天空の大パノラマを楽しんでいる。


  そしてクライマックスは浦島太郎が陸に戻って玉手箱を開けた場面だ。

 もくもくと湧き上がる煙の代わりに、黄金の八重芯や数限りない葉落など今までの全ての種類の花火が上から下まで空一杯に広がる。


 そしてその勢いが衰えた刹那、巨大な銀冠(ぎんかむろ)の大輪花火が何重にも輝き、夜空を真っ白に染めると、まるでそこから垂れ下がるように、長く長く銀の光を引いて落ちてきた。


 海面すれすれで消失した数えきれぬ白い線。


 それは乙姫との約束を破って箱をあけ、老人になった太郎の白髪や(ひげ)が三千丈になった姿を表している様だった。

 最後の爆音の後、反動で静かになった海岸は、我に返った観客の興奮の喝采に覆われて、しばらくざわめきがその場に残るほどだ。


「こりゃあ、今年はこれで決まりかもなあ」


 俺は近年始まった、花火大会のアンケートを思い出す。

 そのアンケートの中に「今年印象に残ったスターマインを3つ教えてください」という項目があるが、3本の指に、魚政が入るのは確実だろうし、一番になる可能性も高いと思えた。


「魚政のおじさんも鼻が高いね」


 里緒も素晴らしい花火の感動に顔を火照らせてうんうんと繰り返し頷いている。

「この街の花火ってすごいのね」と委員長も驚いた顔で、それがなんだか誇らしくなる。


「だろう」


「でしょでしょ」


「まあな」


 龍真と里緒と俺が顔を見合わせて自慢げな様子に、「何よ、地元っ子の意識まるだしなんだから」

 そう彼女に笑って冷かされるが、それもまた心地よいのだった。


 俺達は、その後もしばらく花火を見ていた。

 海上自爆の“孔雀の舞”など個性的なスターマインが続き、それはそれで楽しめたが、やはり魚政を超えるものは無く、それではと屋台の方へ遊びに戻る事にした。


「リョウちゃん、私これしたい」


 里緒が指差した先には、さっき、委員長も見ていた金魚すくいの屋台があった。四人で近くまで行くと、子供達が夢中になってすくっている。


 俺は屋台の裏に積んである箱を何気に見た。幼稚園ぐらいの子供でも長く座ってすくっている事と、そのポイの箱には五号と印刷されていたので「まあ、ボッタクリでないな」と判断してから三人に声をかける。


「よし、競争するか」


 その挑発に食いつくのはいつもテスト順位争いをしている里緒だ。

「金魚っ娘里緒と呼ばれた腕を披露するわ」と意気込む。


「龍真、聞いたことあるか?」


「ないな」


 そんな幼馴染の台詞を無視して、テキヤのおっちゃんにお金を渡す里緒。


「おじさん。破れないポイください」


 おい、はじめからチートかよ。


「嬢ちゃん、腕でいこうな」と、おっちゃんにまで返されるなよ。

 おっちゃんは金魚の入った平たい水槽の脇からポイをだすと、俺達に渡す。

 それで四人は並んで座り、さっそく水中の金魚を狙ってポイを構えた。


 最初に終わったのは予想どおり里緒だ。開始から終了まで五秒とかかっていない。

 里緒はザブッとポイを水中に入れると、金魚をすくってそのまま真っ直ぐ持ち上げた。

 当然、金魚は暴れて、ポイの水も中心に集まりそこから紙は破れる。


 あまりにも早い終了に「こんなのインチキだあ」と文句を言う彼女だが、普段なら「なんやとコラ」と凄むテキヤのおっちゃんも、馬鹿馬鹿しすぎて苦笑いだ。


「ま、俺の華麗なポイ捌きを見てろ」と言うと、俺は斜め四十五度で水面に入れ、水中では平行にポイを動かし、金魚の真下に持ってくると、

 ゆっくりと金魚ごと水面近くに持ち上げる。


「計画通りっ」とポイを斜めにあげて水を逃しつつ、金魚の尾をポイの外に出すことで紙への影響も防ぐ。

「よっし」とそのまま器に移そうとした瞬間、無残にポイは破れて、金魚は下に落ちた。


「な、なぜだあああああ」と俺が納得できずにいると、ごま塩頭のおっちゃんの顔がこう言っていた。


「計画通り」


 それでポイの紙をしげしげと見てみると、濡れてわかりにくいものの、里緒のポイよりは薄い気がする。

 おっちゃん、俺のポイは薄い七号あたりにすりかえて出しやがったな。小さい子供が長く出来るのは、里緒と同じ厚い紙の五号を渡してるからか。


 サクラ代わりって事かよ。

 悔しいが、これもテキヤ商売の駆け引きだと考えている俺は、苦情をいったりはしない。

 その横で「だめだったわ」と破れたポイを水中から取り出して、委員長も残念そうだった。


「もっかいやるかい?」と勧めるおっちゃん。

「いいよ、多分持ち帰れないぐらいになるから」と残りの一人を指差した。


 そっちを見たおっちゃんは、薄いポイを渡したはずの龍真の器が金魚で溢れかえりそうな様子に眼をむく。すでに五十匹は入っているだろう。


 見た目からして腕っ節が強そうな龍真に絡むわけにもいかず、「器に入る分だけだよ」とあわてて説明するおっちゃん。


「リョウちゃん、器いっぱいになったら、またお金払ってやればいいよ」


 そこへ里緒はニヤニヤしながらそそのかす。

 それを聞いたテキヤのおっちゃんは「勘弁してくれ」と泣きをいれた。


 どうせ沢山持って帰っても世話が大変なので、一人数匹ずつに分けてもらい、俺達は屋台の通りを歩いている。

「あんまりアコギにやるなよ」とカッコつけた俺だが、おっちゃんは懲りてなさそうだった。


 ま、それも祭り屋台の楽しさだけどな。

 延々と両脇に店が並ぶ様子は、浅草の仲見世のようだった。




  ◆ ◆ ◆




「委員長って二年なのに夏期講習いってるんだって」


 俺は海水浴の時に里緒から聞いた話をする。


「そこまでしなくても委員長の頭なら大抵の所にいけるんじゃねえ?」


 俺の疑問に里緒も口を挟んだ。


「そういえば、歌埜ちゃんって将来お医者さんになるんだっけ?」


「そうなのか?」


 俺は初耳だったのでちょっと驚く。そうか、眼鏡の似合う美人の女医さんってなんかいいかも。


「確かに白衣とか似合いそうだよな」


 俺の感想をどうとったのか、里緒はすかさず「スズちゃんのエッチ」と舌をだした。


「いや、なんでそうなる?」


 というか、なんでわかった?


「さすが、女の子へ八方美人な馬鹿平に対する、幼馴染の心理分析は鋭いわね」


 委員長までが俺の感想の不純さを肯定してくる。


「あー俺が悪かったよ」とこれ以上の被害を防ぐための行動を試みた。


「だけど本気で医者目指すんなら、確かに今からでも勉強大変だな」


 俺は委員長がこんな早い時期から講習を受ける理由に納得する。


「一応言っとくけど、勉強できない場合も講習受けたほうがいいのよ?」


 そんな委員長の親切な忠告に、俺と里緒はもちろん耳を塞ぐ事にした。

 

 俺達はその後も屋台を楽しんで、最後のスターマインである、ナイアガラ大瀑布の金銀冠(きんぎんかむろ)の素晴らしさに大満足してから、帰りの道を歩き出した。


 花火が主な目的の見物客は、俺達と同じように家路へ向かい出したが、マリーナや海浜公園では夜遅くまでイベントが続くので、まだまだ、人ごみは途切れない。

 マリーナの前の停留所からバスに乗って帰るのだが、里緒と龍真、俺と委員長で路線が違うので、ここで解散となった。


「今日は誘ってくれて本当にありがとう」


 律儀にお礼を言う委員長に、里緒は「いやいやそれほどでも」と照れている。


「おい、里緒。どうせアクアランプで着付けしたんだろ? 美雨さんに電話でお礼言っとけよ」


 俺が思い出させると、里緒は素直に「わかった」と携帯を取り出しながら返事をする。


「龍真、前日に連絡する」と稽古日について話すと、無言で頷く親友。

 そこへ「何々」とすかさず里緒が食いつくので、「龍真に聞け」といっておいた。


 すぐに里緒達のバスが到着したので、彼女達は「また登校日にね」と言いながら乗り込み、間もなくバスは発車していった。 


 そしてしばらくして、俺と委員長も帰りのバスの席に座って、夜の街の中を通りながらなんとなく外の景色を眺めていた。

 俺達の路線は、最初こそ混んでいたが、中心街を通り抜けて、途中のターミナル駅で電車に乗り換える客が降りてからは、立つ人もいなくなり、俺達もようやく後方の二人掛けに座ることができたのだった。

 

 バスの振動がゆるやかな眠気を誘うなかで、俺達はぽつぽつと会話を続けている。

 やはり花火大会ではしゃいでいたのは里緒だけじゃなかったらしく、俺達も心地よい疲れを感じていた。


「じゃあ、カマイタチに襲われた時はやっぱりあの指輪持ってたんだな?」


 やがて話は先日の商店街の件になっていた。


「ええ、いつもは家の結界の中に置いているんだけど、偶々(たまたま)持ち出したの」


「なんであんときは話してくれなかったんだ」


 別に責めるつもりはなかったんだけど、委員長は眼を伏せると謝った。


「ごめんなさい」


「いや、いいんだけどさ。まあ、今後はあの袋に仕舞ってくれれば、持ち歩いても大丈夫だと思う」


「ありがとう。でも……」


 言いよどんだ彼女に「でも?」と俺の方から聞き返す。


「その魔術師って危険なんでしょう?」


「かもな」


「じゃあ、警察に知らせたほうがいいんじゃないの?」


 心配そうな声がしたが、そっちを見る事はしなかった。


「そうだな」


 そして窓側の俺は、通りすぎる電柱の街灯を数えながら答えた。


「……そのつもりないのね、馬鹿平は」


 答えない俺を眠そうにぼんやりと見ながら、彼女がいつものキツイ批評を行う姿が、窓ガラスに映っている。


「魔術師ってなんでこう頑固なんだか」


 呆れるように非難する委員長だが、疲れているのかその声はいつもの調子に戻っていない。

 俺はどう言ったらわかってもらえるのかと考えて外を見ていたが、やがて左の肩に重さを感じて隣を見た。


 そこには委員長が俺に頭をもたれかけ、うつらうつらとしている姿があった。

 今、彼女は表情はとても素直で、幸せそうな微笑を浮かべている。

 普段の辛らつなコメントがこの可愛い唇から飛び出してくるとはとても思えない。


 八歳の時に初めて会ったが、その時俺はずいぶんと綺麗な子だと思った。

 ただ何か心の中で張り詰めている様な緊張感が、子供の俺にも感じられた。それで泉に誘って話すと、そこで彼女の危うさが理解できた。


 彼女は両親を失って、唯一の肉親である祖父に嫌われることを極端に恐れている。

 屋敷に来た時から祖父の行動に沿うような言動を取り、彼の視線や発言にものすごく注意を払っているのがわかった。


 単にしつけや肉親への愛情とはいえないほどの必死さが感じられた。

 だから、俺が彼女の祖父の言葉を表面上否定するだけでも、烈火のごとく怒りだしたんだと思う。


 あの時に俺は確信したんだ、彼女の心の(もろ)さを。


 そして決めた。

 彼女に俺の真実を話そうと。


 そうじゃないと、彼女は肉親の愛情を失う事を恐れるあまり、全てをその視点からしか見られない(いびつ)な存在になってしまうかもしれない。

 美雨さんに出会う前の俺の様に。


 彼女達が帰った後、美雨さんには大目玉を食らったけどさあ。

「何故、彼女にだけ教えたのですか? 贔屓してはいけません」と。


 だから俺は開き直ったんだっけ。

「俺のわがままだよ。可愛い子だったから思わずカッコつけた」って。

 その時の美雨さんは可笑しかったなあ。あんな変な青狐の顔は見たことがなかったよ。

 でもそれからまたさんざん叱られたんだけどさ。


 俺は委員長の安心しきったような顔をみながら、前に垂れてきた髪を耳の方にそろえる。

 すると彼女は寝ぼけたのか、その俺の指に自分の手の平を重ねて握り、満足そうな声を出す。


 そして俺は委員長を肩に乗せたまま、なるべく動かないようにして、穏やかな彼女の眠りの時間を、せめて目的地の停留所まで守ることにしたのだった。








委員長のお話は一旦ここまで。

いつも読んでくれてありがとうです。

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