届かなかった好き
次に好きになったのは、
同級生の光だった。
明るくて、
面白くて、
クラスの中心にいる人。
教室が少し騒がしくなると、
だいたい光がいた。
私が落ち込んでいると、
理由も聞かずに、
冗談を言って笑わせてくれた。
その距離が、
心地よかった。
光は、
自分の身長が低いことを、
よくネタにしていた。
「あと十センチあったらなあ」
そう言って笑う顔が、
私は好きだった。
でも、
それ以上は、
近づかなかった。
放課後、
みんなで帰る道。
光の隣に並ぶことはあっても、
二人きりになることは、
なかった。
もし、
名前を呼び止めたら。
もし、
一歩だけ近づいたら。
それだけで、
今の関係が壊れてしまいそうで、
怖かった。
光は、
私を「女の子」として
見てくれていたと思う。
それは、
分かっていた。
でも私は、
それが本当に「好き」なのか、
まだ自信がなかった。
誰かの前で、
弱くなること。
全部を預けること。
それができる相手は、
まだ、ひとりしか
思い浮かばなかったから。
ある日、
光が誰かに告白したと聞いた。
結果は、
うまくいかなかったらしい。
その話を聞いたとき、
胸の奥が、
少しだけ痛んだ。
それが、
嫉妬だったのか。
後悔だったのか。
それとも、
ただの寂しさだったのか。
答えは、
最後まで分からなかった。
卒業式の日。
光は、
いつも通り笑っていた。
私は、
少し離れた場所から、
手を振った。
踏み込まなかった気持ちは、
形にならないまま、
時間の中に置いてきた。
でも、
確かにそこに
「好きだった」という感情が
あったことだけは、
否定できなかった。




