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タイトル未定2025/03/20 10:20

 俺の名前は来間剛(くるまごう)。16歳。高校生だ。

 今、尿意がします。

 なのでトイレに行きたいと思います。

 自分の部屋をでて、廊下からトイレの前へ。

 ドアノブに触れる。

 回す。

 いつも通りトイレのドアを開けただけだった。

 でも、その先に広がっていたのは、()だった。


「なんだこりゃ。」

 思わず声を上げる。


 俺はそのままその森に一歩踏み出してしまった。

 もしかしたら間違いだったかもしれない。

 なぜなら、もう俺の入ってきたはずの扉は消えていた。


 焦りとともに少しワクワクする感じがした。

 トイレを開けたら、その先は森の中。

 その森に一人立っている俺。

 右に木、左に木、前にも木で、下には草。


「異世界か?」


 そう思った理由は二つ。

 一つはもう今の状況的に。

 二つは周りの自然があまりにも綺麗だったこと。

 俺がさっきまでいた世界ではありえないような緑が広がっていた。

 止まっていても仕方がないので、俺は歩き出す。

 正直、立ちションしても大丈夫な気がするが、俺はトイレを探すことに。

 驚きで、尿意まで飛んで行ってしまったことは置いておこう。

 俺はトイレをすると決めたから、とりあえずトイレに行きたいのだ。


 歩いても緑ばかりだったのだが、少し草が揺れたような音が聞こえた。

「あ、誰かいます?」

 返事はなかった。

 俺は音が鳴る方へ進んでみる。

 そこにいたのは、女の子だった。

 同じ年齢くらいだろうか。そのくらいの大きさと顔立ち。

 可愛すぎる。そして、ナイスなボディ。上も下も程よく良い。


「あ、こ、こんにちは」


 この女の子はもとからここに住んでいたのだろうか。

 それとも、俺みたいになにかしらのアクシデントでここに来たのろうか。

 ここに住んでいるものだったら、都合がいいのだが、そう上手くはいかなかった。


「えっと、ここの人ですか?」

 女の子から聞いてきた。

 こう聞かれる時点で、この女の子もきっとこの世界に迷い込んできたのだろう。


「トイレを開けたら、ここにつきました」

 俺は素直に言ってみた。


「トイレ?私は、目を覚ましたらここにいたもので…」


「とりあえず、ここの住民を探してるんだが…」


 ここは一緒に探索するのが無難だろう。


 でも、俺が一番探しているのは、人でもなんでもなかった。

 何だって?もちろん、トイレさ……


 ***


 女の子と俺は歩き始めることに。

 女の子は、霜月星良(しもづきせいら)と名乗った。


「あの、剛さん?」

「あ、はい」

「私たち大丈夫でしょうか。歩いても歩いても、緑しかありません」


 その通りだった。

 トイレがあるなんて思えなかったし、そもそも、帰れるかすらわからない。


「どうしたものか……」


 二人にできることは歩くことだけだった。

 二人の尿意がそこまでだったのが幸いだった。

 なんなら、もうもはや二人とも尿意はなかった。

 でも、トイレと、誰かと、どうやったら帰れるかを、探し続けた。


「何者だ!」

 声が聞こえるのが先だった。

 その後、緑の中から人の影が。


「何者…なんでしょうね。迷いこんでしまいまして…」

 俺が答える。

「迷い込む?」

「はい。トイレをしよと思ったんです。ドアを開けたら、ここに来たんです。嘘だと思うでしょう?これがホントなんですよ」

「トイレか…よくわからん奴だ…そちらの女性は?」

「私はトイレじゃないです」

「ハア」とため息をつきながら、俺たちを訪ねてきた女性は頭を抱える。

「そうか…ついてこい」


 *


 その人は俺たちを連れて行ってくれることに。

 名を有坂吹雪(ありさかふぶき)と言った。


「隠れろ」

 吹雪さんは突然そう言った。

 俺と星良さんは困惑する。


 すると、なにか得体のしれないものが、出てきた。


「魔物だ」

 吹雪さんはそう言って、腰につけていた「ソード」って感じのものを手に構える。

 魔物はこちらに近づいてくる。

 形だけ見ると、ゲームやアニメででてくるようなゴブリンなのだけど、目の前の魔物は一味違かった。

 真っ黒なのだ。

 そんな漆黒なゴブリンがこちらに向かってくる。

 唯一黒じゃない場所である目。その赤い目をむき出しにしながら、ゴブリンは()を放ってくる。

 なにか黒いビームのようなものが飛んできたが、吹雪さんがそれを刀で止めた。


「す、すげえ」

 そのまま吹雪さんは構えに入り、静かに声を放った。


「業火」


 うーん何とも言えない名前。もっとプロメテウスとかゴットファイアーとかにすればいいのに!

 すると、吹雪さんの剣が炎のようなものでまとわれていった。

 そのまま、剣をやりのようにして吹雪さんはゴブリンを刺した。

 鮮やかな動きだった。


「か、かっけー火とかだせるんですか?」

「ここでは色々出せるぞ。生まれつきによって色々変わるけど」

「そうなんすか?業火!」

「……」

 真似をする俺だが、なんと滑稽なことか、なにもでなかった」


「そんな簡単に使えるものでもない。そもそも、お前には火の特性がないだけで、例えば水の特性があるのかもしれない。そもそも、その業火は単発で出す技じゃなくて、剣とかにまとわせてから使うものだ」

「なるほど…」


 その時、感じた。


「なんかいます」

 星良さんも気づいたようだった。

「そのようだな。しかも、ちょっと厄介そうだ。たぶん、さっきの仲間だろうな」


 すると、さっきのような漆黒のゴブリンが大量に出てきた。


「ちょっとこの量だと庇いきれんかもしれん。少し死なないように頑張ってくれ」

「分かりました」

「こちらのことは気にしないでください」


 すると、今度は炎ではなく、なにか白い物を纏った吹雪さん。

 氷だった。

 そのまま剣を振るう。

 剣から放たれた氷がゴブリン達を覆った。


「凍った!?」


 凍らせたことで拘束されたゴブリン。

 すると、また吹雪さんは変な言葉を放った。


「ソリューション」


 ちなみに、風吹さんの技は「ソリューション!」って感じで語尾が強調される言い方ではなく、冷静な感じで、低い声だ。

 その氷で拘束されたゴブリンを炎で溶かすように焼きつくした。


「強すぎますね」

 星良さんが呟く。


「ふう、弱くて助かった」

 強者が放つような言葉を言う吹雪さん。


「後ろ!」

 すると、突然大声をあげる吹雪さん。


 後ろ?

 振り返ると、1匹のゴブリンが俺と星良さんに不意打ちをかけようとしている。

 吹雪さんも、この距離だとリーチが足りないだろう。

 氷が届いたとしても、俺まで覆ってしまうから、そんなことはしないと考えられる。


 咄嗟に俺は、思いついた言葉を放ちながら、何かでないかなと思いながら手を伸ばしてみる。


「ウォシュレット!」


 俺は自分に驚いた。

 手から水が放たれたからだ。

 だが、それはほんとにウォシュレット程度の威力だった。

 でも、それで良かった。一瞬でもゴブリンの動きを止めたのだ。


「よくやった」

 その一瞬で吹雪先輩がこちらに来て、また炎でゴブリンを焼き尽くした。


 ゴブリンを撃退した所で、また歩き始める吹雪さん。

 それについて行く俺と星良さん。


「ところで、さっきの水はどうやってたしたんだ?ダサい技だったが」

「ああ、分かんないっす」

「あれがなかったら、私は食われてたかもしれませんね。ありがとうございます」

「まあ、その通りだな。中々いないぞそんな簡単に技を出せるヤツは才能があるのかもな」


 そんな話をしているうちに、ついに森を抜ける。

 目の前に広がっているのは、ゲームやアニメとかでよく見るような王国が広がっていた。

 真ん中に大きな城、それを囲う大きな壁は白く、清潔感を演出する。


「すんげえ」

 思わず声を出してしまう俺。

 吹雪さんは歩き続けた。


「ところで、吹雪さんは何者なんですか?」

「え~と、なんだろうな。警察みたいなものだ。市民の安全を守る」


 警察みたい?わざわざ警察という言葉が出たことに違和感。

 わざわざ、俺の元いた世界の言葉を使った?

 だとしたら、なんで知っているんだろう。

 まさか、吹雪さんも元々俺と同じ世界にいたのだろうか。

 王国を堂々とした姿勢で歩く吹雪さん。

 それにおどおどした様子でついて行く俺と星良さん。

 吹雪さんはついに立ち止まった。


「ここは?」

 俺は聞いてみる。


「私の、仕事場だ。」

「警察署?です?」

「いや、副業だ。」


 そう言い、吹雪さんはその仕事場の扉を開けた。

 すると、森が広がっていた。とかだと面白いかもしれないが、普通に酒場のような場所だった。


「一旦ここにいろ」

「はい!」


 いい人に会えたようで安心した。

 吹雪さんは奥の部屋へ行ってしまった。

 昼間の酒場だからか、誰もいなかった。

 おそらく、夜から営業するのだろう。

 暇だし、こんな美女と二人で緊張するな。


「どうやったら、元の世界に変えれると思う?」

 俺は聞いてみる。

「そんなの、分かりませんよ」


 俺は帰らないのもありだと思ってしまった。

 どうせ帰ったところで、なにもないのだから、ここで美少女二人と魔物退治してるのも楽しそうだ。


 すると、吹雪さんはすぐ奥の部屋から帰ってきた。


「おかえりなさい」

 「早いですね」


 俺と星良さんは言う。


「ああ。ごめんだが、しばらくここに住んでもらうことになるだろう。2階に部屋はある。私はここのオーナーだからな」

「ここに住む?」


「じゃあ出てくか?そもそも、異世界から来たって話はたまに聞くけど、だから何だって話なんだ。お前らが帰る方法を探すのも自由。この世界で生きていくのも自由だ」


「分かりました。帰る方法を探すために、ここに住もうと思います。ちょっと技も使ってみたいですし。」


 そう答える星良さんに「うん」と頷く吹雪さん。


「俺も、住みます」


 こんな可愛い星良さんと、ここに住む!?そんなん住むしかないでしょ。吹雪さんも美人だし。

 最高な生活が送れそうだな。


「あ、トイレあります?吹雪さん」

 星良さんが言う。

「トイレか。こっちだ。」


 忘れていた。思い出したところで俺も突然尿意が襲ってくる。


 だが、星良さんが先にトイレに行った。

 星良さんが戻ってくると、今度は俺がトイレに行った。

 星良さんの直後すぎることがちょっとキモイことと、そもそも、男女で分けられているから関係なかったのを知って恥ずかしい気持ちの俺。


 そして、遂に、トイレを開ける。

 目の前にあったのは当たり前だが、トイレだった。

 さっきは、こうして異世界に迷い込んでしまったのだ。

 だが、次はちゃんとトイレだ。

 ここからまた森の中。なんてことにはならなくてよかった。

 なんなら、開けたら家に戻っていた、なんて可能性もあると思っていたが、そうはならなかった。

 ということは、これからここで美少女に挟まれて幸せな日々を送ることが出来る。

 そして、俺の得意技『ウォシュレット』で魔物を倒し、いつしか勇者にでもなろう。


 用を足して、トイレから出ようとドアを開ける。


 すると、目の前には俺の知っている光景が広がっていた。

 当たり前だろ、だってそこを通ってトイレに来たんだから。

 そう思うかもしれないが、そうではなかった。

 吹雪さんの酒場じゃなかったのだ。


 トイレから出ると、そこは俺の家だった。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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よかったら、少ないですが私の他作品も覗いて見てくれると嬉しいです。

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