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愛と復讐

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 田口修二(たぐちしゅうじ)は優秀な生徒だった。大学卒業後は大学院に2年在籍し、修士課程を取得後「教師」になると、友人にも宣言していた


 彼は修徳高校出身だが「探求科」ではなかった。当時「探求科」を受験したが、不合格となり普通科へと進学することになったのだ


 プライドの高かった田口は、高校在籍中に猛勉強することで「探求科」にも負けないほどの難解大学へと進学し、自分自身の過去を払拭するかのように、就職は修徳高校「探求科」の顧問を目指していた


「執念深いのね……聞いたわよ、修徳高校「探求科」の顧問を目指してるって」

「ふん、俺はあの頃の自分を見返してやるんだ!……お前もどうだ?副顧問でよければ、俺の下に付けてやってもいいぞ!」

「勘弁ね……教師になるつもりはないわ……教員免許は取ってるけど、こんな世の中で人に構ってなんか、いられないわよ」

「こんな世の中?」

「「兎角」よ……今から時代の中心は「兎角」になるでしょうね!その関連企業に勤めるほうが利口よ」

「「国」かぁ……まぁお前なら入れるだろうな!お前には一度も勝てる気しなかったもんな」


「珍しく謙虚ね……たしかに私は首席だけど」

「かぁ〜!自慢かよ、そんなだから彼氏の一人や二人出来ないんだぞ!顔は良いのに性格がな」

 

「余計なお世話よ!」


「まぁ、俺が「探求科顧問」になったら、付き合ってやるよ!」

「――!バカにしないで!どうして私があなたみたいなプライドの塊と、付き合わないといけないの!?」


「怖っ!……ふん、見てな!大学のうちには勝てなかったが、将来俺がお前の上に立つような人間になってやるよ!」


「……ふ〜ん、一教師がねぇ……」


「ハァ?バカにすんなよ!修徳高校の「探求科」だぞ!」

「凄い、こだわりね……」

「――!「兎角」とか訳の分からんモノよりは、よっぽど社会貢献だぜ!」

「社会貢献って……あなたのは、ただの「復讐」じゃない……」


「くっ!……相変わらず上辺(うわべ)だけでも「同調」しない女だ!」


「「同調」?……そんなの必要ないでしょ」

「はいはい、お前はいつもそうだよ」


 田口は無事、修徳高校の「探求科」顧問の試験に合格する事が出来た

 あくなき執念……いやプライドを持ち「探求科」の生徒達と接する


 通用する……人生勝ち組が確定しているとも言われる、この生徒達に対する「嫉妬」は隠しきれないが、自分はこの天才達の事を教育する事が出来る。そう確信していた矢先……違和感に気づく


 この学校は何かおかしい。いや「探究科」がおかしいのか?もしかすると「兎角」に目覚めた者がいるのかもしれない……「学校の七不思議」だとか噂されているが、そんなレベルじゃない。そう、田口は感じていた

 

「兎角」に目覚めた者は、その能力の強さによっては「国」の管理下に置かなければならない


 仮に知っていて、隠蔽すると「兎角隠し」といって処罰の対象になる。しかも「探求科」の生徒が怪しい行動を取っている

 そう思った田口は探してしまう、完璧だと思われた生徒達の「(あら)」を……


「探求科全員」が「兎角隠し」をしているのではないか?そうなると、どうなる?

 高校受験の時に失敗した自分のように、この子達もここで(つまず)くんじゃないか?犯罪者となり、人生を棒に振るんじゃないか?


 大学時代に言われた一言が頭をよぎる、「社会貢献って……あなたのはただの「復讐」じゃない……」


「復讐」……息を呑んだ


 微かによぎった「復讐」により「探求科」の天才達を相手にしてしまった田口は、その「プライド」をズタズタに引き裂かれ、「教師」を辞めてしまうほど、追い詰められてしまうのだった


「おい、聞いたか?田口が鬱病(うつびょう)で教師辞めたってよ!」

「アイツ、無理して「探求科」なんか行くからだよ!今日の飲み会、久しぶりに集まったけど田口の話題ばっかだよ、まぁアイツってちょっと調子乗ってたからな」

「たしかに……負け組だな!」

 大学の同窓会では、そんな話題で持ちきりだった。

 様々な企業に勤めて、社会に出た者達が現状を話し合う同窓会では「脱落者」の話題が一番盛り上がる

 

 今回はまさに「田口修二」の話題が、それだった

 

「……」

 

 そんな中、「国」の「兎角機関」に就職出来なかったもう一人の「脱落者」が、(こぶし)を握りしめている。大学では首席という成績を残していながら、田口と同じように負け組として、その場にいる。気も遣われているのだろう、誰も彼女に寄り付かない。彼女は只々、田口の噂話に耳を傾けるだけだった


 数日後、彼女は「田口修二」のもとへ訪れた


 田口はあの頃とは別人だった。鬱病(うつびょう)の薬により顔はむくみ、呂律(ろれつ)が回らないこともあり、時に記憶障害もあるようだ


「……無様ね」

「……わ、笑いに来たのか?お、お前だって脱落者だろ?」

「別に……笑いに来たわけじゃないわ……あなたは諦めるの?あの執念は?上に立つんじゃなかったの?」

「そ、そんなのもう……ど、どうでもいい……そ、そんなことより、お前、俺のこと好きなんだろ?告白でもしに来たのか?付き合いたいのか?や、やっぱり寂しくなったんだろ?」


「……」


「――な、なんだその目?そんな目で俺を見るなぁ!見るなあぁぁ!」


「……」

 田口は抵抗しない彼女の胸ぐらを掴み、服を引き裂いた。露出した部分をまさぐり、彼女を(けが)していく


 彼女は彼を愛していた。あの執念とプライドを持っていた大学時代の傲慢で勝気な彼のことを……


 堕ちた彼に(けが)されながらも、その事に喜びを感じてしまう自分自身に失望した……

 

 沈んだ奥底で何かに触れた気がした


佐倉咲(さくらえみ)は、「暗黒物質(ダークマター)」を「観測」し、「兎角」に目覚めたのだ……能力は「共振(きょうしん)


 彼女は「復讐」のため修徳高校「探求科」の顧問となる


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読んでくださりありがとうございます。

いよいよラスト2話です。最後までよろしくお願いします

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