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炎帝の焔  作者: いふじ
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第三話:出会い

出会っちゃいましたね♪


って、俺キモッ!!

本編どうぞ。

「作戦だと、あいつはそう言った」

 

つい先ほど電話で話していた、頭の毛を全て剃った黒褐色の同僚の顔を浮かべて珍しく苛立ちを露わに見せる焔が見つめているのは、何度見返してみても『綾瀬川』と書かれている大理石で造られた表札である。


 その前で黒いライダースーツに身を包み、紅い外套を羽織っている焔。


同じ格好を別の誰かがしたとすれば、それはひどく滑稽な姿であっただろう。


しかし、そんなおかしな格好であるにも関わらず、焔の姿は不思議と絵になっていた。それは日本人としては比較的高い身長のためか、はたまたどこか物憂げな表情のためか。焔はため息を一つ吐き、左腕に付けられた腕時計に目をやった。


 「あと五分で十時。一体どんな作戦なんだ? 警護任務か?」


 焔が一人そう論じていると、紅い外套の内側に軽い振動が奔った。


外套の内側に手をやり、振動を持続させている物体に手を伸ばす焔。


取り出したものは紅い外套とセットのような真紅の携帯電話であった。


折りたたみ式の真紅の携帯を開くと、画面には、『ボス』という名前が表示されていた。今回の作戦に

ついて一切説明を受けていない焔は、作戦開始時刻になるまでの残り数分のうちに出来るだけ情報を得ようと考え、携帯の通話ボタンを押して耳に真紅の携帯を当てる。


 「あ、焔ちゃん! やっと出たわね!」


 着信が掛ってきてから何秒と経っていないはずだ、と思ったがやはり焔はそれを言うことはなく、淡々とした事務的な声で答える。


 「作戦内容を早急に教えろ」


 「もう~、せっかちさんね~。そんなんじゃ女の子にモテないわよ?」


 「女なんてどうでもいい。俺は女なんて信じちゃいない」


 「・・・・・・」


 言ってから焔はしまった、と自分の言動に苛つきを覚えた。

焔が反論したことに電話の向こう側の相手からは、静かな、しかし喜悦を含んだ吐息が聴こえてきた。


 「作戦内容を言え。もし違う内容だと俺が感じたなら即座に通話を終了する。いいな? わかったか?」


 相手が何かを言ってくる前に、そう牽制した焔。


そんな焔に、


 「・・・ふ~。わかったわよ。今回の作戦は昨晩あなたが不良グループの『スカルマーク』から救出した人質の一人、綾瀬川静の心の修繕作業よ」


 「あの女の? 確かに昨日は多少ショックを受けていたようだが、そこまで酷いようには見受けられなかったが?」


 「焔ちゃんのせいなの」


 「俺のせいだと? ちょっと待て。俺は昨日完璧に仕事をこなしたぞ。犯人グループ以外に怪我人は出していないはずだ」


 「ええ、その通りよ」


 「なら何故だ?」


 「あなたが静ちゃんの申し出を断ったからじゃない。ホントに男ってどうしてこんなにも女心ってものがわかっていないのかしら」


 と、呆れたようなため息を洩らす『アトラス』のボスこと平野重国。


そう言った重国自身も焔と同じ男のはずなのだが、重国は色んな意味で規格外の存在なのでそれ以上深く考えないことにした焔だった。


 「まあ、そういうわけだから頑張ってね。『アトラス』の仕事は被害者の心のケアが終了するまでが仕事です。そういうわけで、今回の作戦が終了するまでは焔ちゃんに次の仕事はありません。だから気長に頑張ってね~」


 まるで小学校の教師が生徒に、遠足はお家に帰るまでが遠足です、というように電話の向こうで言う重国。


「あ、おい!」


 「まあ、ちょっとした休暇だと思って楽しみなさいな」


 どこか楽しそうな声音でそう言って重国は通話を終了させた。最後に力也の「頑張れよ」と言う声が聞こえてきた。


 「さて・・・どうするか」


 視線を腕時計に移すと、時刻は九時五十九分。


間もなく作戦開始時刻である。


再び目前の三メートルはあろうかという巨大な漆塗りの門扉を見上げる焔。


 綾瀬川グループといえば、軍事産業からアパレル業までありとあらゆる事業に手を伸ばし、そのどれもで成功を収めている世界有数の大企業である。


 焔の中で金持ちとは、自分の成功の結果として得たモノを他人に見せびらかすことで生きがいを感じている、そんな印象があった。


 だが、世界でも間違いなく超がつくほどの金持ちであるはずの綾瀬川家の門扉は、焔の思う金持ちたちのように他人に見せびらかすような派手さがない。


一見しただけで、この漆塗りの門扉は素人目にもかなり高価であるだろうとは思わせるが、ただそれだけである。


それどころか、この門扉にはどこか懐かしさ・・・いや、大邸宅にありがちな近寄りがたさはなく、人

の心を和ませるような、そんなおかしな感覚を抱かせるものがある。


そう思うと、焔の視線は自然と漆塗りの門扉に注がれていた。


 ギィ・・・。


 突然響いた重低音。


 ギギィ・・・。


 音が大きくなるごとに、焔の前で漆塗りの巨大な門扉が開かれていく。


中からは薄暗い闇が姿を見せた。


そして、その闇は門扉が開くことで、徐々にではあるが少しずつ光が闇を飲み込んでいき、最後には温

かくも優しい光となって焔を照らし出す。


それはまるで、これからの焔の道を現わしているようであった。


 「わあ~、本当に来てくださったのですね!」


 川のせせらぎのように澄んだ、涼やかな声音が焔の鼓膜を刺激した。


門扉を開けて姿を現したのは昨晩焔が救った美しい少女であった。


温かな春の日差しを浴びて姿を現した少女は、桜が舞い散る様が描かれた黄色の着物を着ていた。


肌は透き通るように白く、それでいて今にも消えてしまいそうな儚さと危うさを併せ持っている。


妖しいまでに美しいその姿を見て、焔は少女が光の中からたった今生まれてきたのではないかと感じていた。


美しい―いや、違う。


美しいという言葉だけでは形容しきれない。


現在、人間が扱う言語の中では彼女に相応しい言葉は見つからない。


焔の目にはそれほど少女は魅力的に映った。


あなたの一言が筆者の魂を震わせます!!


はいはい。

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