美しい方々は私の家族です
よろしくお願いします。
「ふわぁ〜〜」
(眠い。非常に眠いんだけど。なんでこんなに眠いのよぉ〜。)
私は揺りかごに揺られながら、風に当たっていた。
穏やかな時間と風が流れてきて、とても居心地がよかった。後ろで私の手を握っている人を除いたら。
「たぃやあ!たぅたぁ」
(ちょっと、いい加減私の手を離しなさいよー!)
ずっと後ろで私の手をギュッと握っている美青年に私は困まり果てていた。何せ、私が起きてからずっとこの状態なのだ。
ーー振り返ること数時間ほど前。
「うぅ…。」
眩しい光と共に私は目を覚ました。
私が寝ている時に感じた不思議な気配を逃したくなくて、動こうとした。だが、どこからか熱烈な視線を感じて、私は動くことを止めた。
「俺のかわいい妹よ!ようやく目が覚めたんだな!」
声が聞こえたと共に、その人は私に抱きついてきた。
(びっくりしたぁ。何なの!?この心臓に悪い目覚ましは!もうちょっと優しく起こしてよ。うざいったらありゃしない。それと私が可愛くて仕方ないのは分かったからそのバカ力をなんとかせい!)
朝のせいか、いつもより口調が悪いのは気にしないで欲しい。なぜなら、突然抱きついてきたギルダーツに私はイラッとしていたから。
ーーお前の口調が悪くなったのはいつものことだろ。
私の脳内で誰かがそう言った。
(誰だ。そんなこと言ったの。今すぐ出てきて謝れ。さもなくば、私のキッビシいぃ地獄の説教がくるわよ!て、そうじゃなくて!)
私は一人ツッコミをやめて、ずっと私に抱きついてるギルダーツを引っぺがそうと頑張った。
「あう、あいあ、たう‼︎あい、あうあ、たい‼︎」
「ははは、なに言ってるのかさっぱり分からない。でも多分俺に挨拶だろ。おはよう、フィルラ」
(あっ…、挨拶してないんだけど、そう捉えたのね。別にいいけど、あの、そろそろお願いだから離してくれないかな?流石にきつい…。)
私のSOSを読み取ったのか、身体を抱きしめる力を緩めてくれたけど完全に離してくれないギルダーツ。
そして私は諦めの境地に入り、そよ風に揺られながらぼーっとしていた。
そういうわけで、かれこれ数時間はギルダーツに抱きつかれていたり、手を握りしめられていた。そのため寝たくても寝れないという悲しい状況が出来上がったのだ。
ーー眠い原因はギルダーツのせいなんじゃないの?
私の脳内で誰かが囁いた。
(全然気づかなかったよ…。ていうかギルダーツ!私の体の自由だけじゃなく睡眠までも奪うの…?て、そうじゃなくて、そもそも何でギルダーツは私に構うの?意味がわからないんだけど…。)
私が心の中で悪態をついているとどこからか誰かが走ってきている音が聞こえた。そしてその音がだんだん近づいてきたと思ったら、扉が壊れ、ロリが現れ、煙を巻き上げながらやってきた。思わず2度見してしまったが、もう一度見た時は扉は壊れていなかった。
(どういうこと?)
もう一度今の状況を説明しよう。
私がギルダーツから離れようと奮闘していた所に、走っている大きい音と共に扉が壊れたのだ。煙を巻き上げながら現れたロリの後ろをもう一度見たが扉は普通に開いていただけだった。
(待って、理解できない。)
私がそうやって今の状況を解説して、結局理解できないとなった時、変な声と共に身体がフワッと軽くなった。
「ぐえっ」
(ぐえ?て、あれ?ギルダーツは?)
私を抱きしめていた人が急に消えてしまい、気になって辺りを見渡していると、ギルダーツはお腹を抱えて転がっていた…。
(何やってんのよこの人。)
床で転げ回っているギルダーツを見て私は呆れた目で見つめていた。
「ってぇなぁ!何すんだよ、フィリエル!いてぇじゃねぇかよ!」
突然お腹を殴られてビックリしたギルダーツは、殴ってきた本人に文句を言った。
「あんたが可愛い可愛いフィーちゃんを思いっきり抱きしめるからよ。この子がどれだけ苦しがってたのか私の腹パンでそこで反省してな。」
「くっ、そうなのか?フィルラ…?」
私は何を見せられているんだろう…。
ギルダーツの質問を無視して2人のやり取りを聞いていたが、私は未だにこの2人が何者なのか分からなかった。あまりにも2人の正体が気になりすぎてじーっとフィリエルを見つめていたら、彼女の背中に翼が生えていることに気づいた。
私が気になってずっとガン見しているとフィリエルが聞いてきた。
「この翼が気になるの?」
フィリエルが私の視線に気づいて私の近くまで来てくれた。そして翼を触ってもいいよとでもいうように、私に背を向けて翼を見せてくれた。
「別に触ってもいいのよ?私の翼、凄いでしょ?多分フィーちゃんも5歳になったら生えると思うよ?だからそれまで待っていたら良いのよ。」
「あい!」
「うふふ、可愛い妹が出来てよかったわ」
フィリエルの発言に私は思わず固まってしまった。
(…妹?ってことはフィリエルは私の姉?え、じゃあギルダーツがいつも俺の妹よ!って叫んでいたのは本当だったってこと?私、誘拐とかされたんじゃなくて?)
突然のカミングアウトに私は驚いてフィリエルの翼を触る手を止めてしまった。そんな私の心を知っているのか知らないのか、フィリエルは自己紹介をしてくれた。
「そういえばフィーちゃんには自己紹介してなかったわね。
私はフィリエル。フィリエル・フィン・レボルヴァ。
年齢は13歳よ。よろしくね。
次!次はそこに転がっている人、早く挨拶しなさい。妹であるフィリエルの命令よ。」
「俺の自己紹介は今しようとしていた所だ。だから急かすな。
俺はギルダーツ・フィン・レボルヴァだ。歳は15歳で、フィーとフィリの兄だ。よろしくな。」
私は突然の自己紹介が始まって驚いていた。
美青年の兄とロリの姉が急に出来たのだ。驚くのも無理はない。
(ロリのお姉ちゃんとイケメンのお兄ちゃん。なんて最高なの…!!)
私が心の中で喜んでいると、どこからかイケメン戦闘狂と絶世の美女が現れた。
「あらあらぁ、私たちも自己紹介したいわぁ。
私はキャサリン。キャサリン・フィン・レボルヴァよぉ。年齢は秘密だから言えないけど、ギルダーツとフィリエルとフィルラのお母さんよぉ。」
「次は俺だな。俺はフィニック。フィニック・フィン・レボルヴァだ。年齢は35歳で、お前ら3人の父親だ。よろしくな、フィルラ。」
「どう?みんなのこと少し分かった?」
突然出来た家族に私はボーッとして聞いていたけど、
優しく自己紹介をしてくれるこの人たちはいい人だと私の本能が悟った。
「あぃ!あいあー!」
フィリエルが私の姉、ギルダーツが私の兄、キャサリンが私の母で、フィニックが私の父。
みんなそれぞれ個性的で豊かな人たちだなと思わず笑ってしまった。
この笑いは異世界に来てから初めて心から笑えたのではないのかなと後になって振り返るとそう思う。
(その前にこの人たち、大丈夫かなぁ?赤ちゃんに挨拶しても普通は分かんないと思うよ?まぁ私は例外だけど…。とりあえずよろしくね。残念な美形さんたち。)
私は脳内日記にそう綴った。
これからフィルラはどんな人生を歩んでいくのでしょうか?
とても楽しみですねぇ。