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三頭犬の左側 ~残った二頭はバカとエロ~  作者: エル
序章

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ドッグRun!Run!!Run!!! 幕間4


「全く」


 夜の医務室にて。


「無茶をさせる弟である」


 ぐっすりと眠った、シズク殿とレフトのことを見ながらひとりごちる。

 と思ったのも束の間のこと。


「……兄者」


「むぅ、ライト」


 もう眠ったものと思っていたが、ライトも起きているようであった。


「……すまない」


 ライトが何について謝罪をしたのかは聞かずとも分かっている。


「いや、よい。あれのおかげで、我も決心がついた」


「……でも」


「よいと言っている。我とて決めかねていた。今生で、どのように生きるかを。けれど」


 我は、ふぁーと、あくびを一つしてから。


「やはり、我慢など性分ではないのである」


 本心から、そう言った。


「…………そうか」


 我の言葉に、ライトは納得したであろうか?

 まあ、よい。


「それにしても」


 我はその話を打ち切るため、新たな話題を口にする。


「よく我ら三頭分の契約を、あの一瞬で済ませたであるな」


「……え」


 我の疑問に、ライトが疑問を差し挟むような声をあげる。


「む、どうしたのであるか?」


「……オレじゃ、ない」


「なに?」 


「……オレも、てっきり兄者のやったことだと思ってた」


 ライトの発言は、我にとっても予想外であった。


「我ではない、とすると」


「……あの時」


 ライトが、我を見越す。


「……あの子が最初に触れたのは」


 その視線の先にいるのは我のもう一人の弟、レフトだ。


「ふむ、つまり」


「……契約を為したのはレフトだ。それも、多分無意識で」


「なんと」


 意外、というほかない。

 しかし、それ以外には考えられぬ。


「では、やはりレフトも」


「……ああ」



「……なにか使命があって、ここに居るんだ。きっと」



「我らと同様に、であるか」


「…………」


「隠さずともよい。同じことである」


「……そうだな」


 すでに我らは三位一体。

 一つの身体に三つの魂。

 そこに、意味がないはずはないのである。


「これから、きっと大変であるな」


「……ああ」


 物語はすでに始まり、同様に我らは契りを交わした。

 そして、契約は三つ分。


「差し当っての目的は」


 額の印も、三つ。


「シズク殿の、力になること、であるな」


「……それでいいのか?」


「構わん。我の目的など、いずれ勝手に終わることなのである。それより、ライトよ。お前の方こそ、よいのであるか?会いたい者がおるのであろう」


「……いいんだ。俺の方は手がかり一つない」


 それに、と、ライトは言った。


「……あの森で、あの魔女に耳打ちされたんだ」


「ふむ?あの時であるか」


 確かに、ライトは何かを言われていた。

 我の耳をもってしても聴くことは叶わなかったが。


「それで、なんと?」


「……まだ、ちゃんと繋がってる。だから、その時が来れば、自然と会える。……らしい。情けないことに、今のオレにそのつながりを追えるほどの力はない」


 だから。


「……その『いつか』が来たら、兄者、その時は力を貸して欲しい」


「うむ、任されよ。では」


「……ああ」


「寝ようぞ」

 

 ライトとも、腹を割って話せた。

 それに、我も疲れたのである。

 明日のことは、明日に考えればよい。


 今は、番犬が太々しく眠るがごとし。

 明日からはきっとまたあの主と共に。

 騒がしき日々が来るはず、なのである。


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