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突然恋人はいないかと聞かれました。

 ─────……うん?なんでこの竜、固まってんの?


 魔物たちが叫び声のような鳴き声をあげながら逃げていってしまう姿を見送り、頭上から話しかけてきたヒメルファレンドラッヘの方へと目を向けながら、ノアは首を傾げる。

 竜種の表情の違いなど、本来ならば人間にわかるはずもないのに、わかってしまうほど目の前のヒメルファレンドラッヘが目を丸くして固まっていることが理解できてしまった。

 それだけ彼が表情を変えていたのだろう。でなければわかるはずもない。


「逃げるつもりはないかな。最初は逃げようかと思っていたけど、今の私には逃げるって選択肢がないからね。もちろん、キミに武器を向けるつもりもない。向けたところで一撃で終わるのは私の方だろうから。」


 そんなことを思いながら、ノアはヒメルファレンドラッヘの問いかけに答える。

 逃げると言う選択肢がなければここに残っていない。

 腰に携えている剣を抜いたところで、自分が勝てる可能性は全くない。

 穏やかな声音でそう告げて、固まる竜を静かに見上げた。

 相変わらずヒメルファレンドラッヘは固まって動かない。

 いったいどう言う感情だ……?表情の違いはかろうじてわかるが、感情までは読めるはずもないので、ノアの思考は疑問に埋め尽くされていく。


 ─────……可能性として一番あり得そうなのは、竜種を前にしているにも関わらず、魔物たちのように逃げることをしない人間に驚いてしまった……ってことなんだけど。


 だが、どうしてかノアはそれは違うと思ってしまった。

 目の前のヒメルファレンドラッヘが固まったのは、そんな単純な理由ではなく、別の感情からきているようにしか思えなかったのだ。

 それがどのような理由かまで、見当をつけることができるわけではないのだが。


 うんうん頭を捻りながら、ヒメルファレンドラッヘが固まった理由を考えるノア。

 だが、やはりいくら思考を回そうとも、その答えは一つも出てこなくて、さっぱりわからないと溜息を吐く。

 この間もヒメルファレンドラッヘは、彼女のことを眺めて固まっており、言葉を発する気配がない。


「ちょっと。さっきから黙ってなんなのさ?おーい。聞こえてますかー?」


 とりあえず黙り込まれるのはなんか怖いので、ノアはヒメルファレンドラッヘに声をかける。

 言葉を返してくるかどうかはわからないが、じっと見つめられるよりかは何倍もマシだと思ったために。


〔………んだ……〕


 不意に、ポツリと呟くような声が聴こえてくる。

 間違いなくその声は目の前にいるヒメルファレンドラッヘから発せられたものであり、返事をしてくれたと思いながらも、紡がれた言葉を聞き直すために「何か言った?」と問いかければ、先程よりハッキリとした声音で言葉が返ってくる。


〔なんて綺麗なんだ……。〕


 ─────……はい?


 聴こえてきた声は熱を帯び、どことなく甘ったるいものだった。

 突然のことに混乱する。

 この竜は今なんと言った?綺麗だとか言っていなかったか?


〔なあ、お嬢さん。名前教えてくれない?〕


「は?なんなの急に。」


〔いいからいいから。〕


「……ノアだけど。」


〔ノアちゃん……ノアちゃんかぁ……〕


 急に名前を訊ねてきて、答えれば噛み締めるように連呼される。

 この竜はいったい何が言いたいんだ……よくわからない状況の中、無言でいると、ヒメルファレンドラッヘが視線を向けてくる。


〔オレの名前はレーヴォルグって言うんだ。まあ、自己紹介はそれくらいにして!早速なんだけどノアちゃん。キミ、恋人とかいたりするのかい?〕


 ………あ、なんかおかしな方向に話が進みそうな予感しかしないな。




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