6話 決闘
決闘当日。僕はしっかり準備を整え学校へと向かった。そして授業を受け、放課後の決闘までエギル達とは一言も話さなかった。
「いよいよですね。準備は大丈夫ですか?」
「うん。勝とう、シル」
今、僕はシルと共に決闘場の決闘場所にいる。反対方向にはエギルが杖を持って立っていた。
僕の持ち物は電撃銃、それからポケットに魔道具を何個か。そしてシルだ。
「ま、せいぜい楽しませてくれよ」
エギルは僕にそう言い放つ。お互い勝つ気満々のようだ。僕はエギルの発言に黙って頷き、銃を強く握った。
「それではこれより決闘を開始する! 武器ありだが危険そうならすぐ止めるからな!」
審判はこの前の先生がやってくれている。武器ありでも黙認してくれるのは正直ありがたい。
「はい!」
「さっさとやれ」
「それでは……決闘開始!」
先生の掛け声が聞こえた瞬間、僕はエギルに向かって電撃銃を乱射する。この銃は連射性能に優れていて、一発でも当たれば痛みで相手は動けなくなる。
「おい舐めプか? そんなもの防御魔法で一発だ」
エギルは微動だにせず防御魔法で防ごうとする。そこに僕は閃光弾を取り出し彼に投げつけた。
「チッ! てめえなにしやがった!」
閃光弾で彼の視力が奪われ、隙が生じる。僕はその好機を逃さず威力の上げた電撃弾を撃つ。
「うがっ……雑魚が……小賢しいことを考えるなぁーッ!」
するとエギルほ見えないまま辺りに爆発魔法を放つ。僕はそれをシルの貼った防御魔法で防いだ。
「もう油断はしねぇ。これでてめえをぶちのめす! 食らえ、ラピスファイア!」
エギルが魔法を唱えた瞬間、彼の杖が光輝き、こちらに向けて青い炎が放たれる。
――まずい、逃げ場がない!
僕は咄嗟にポーチから一つの球を出し、宙に放り投げる。これだけの威力の炎だ、防御魔法は貫通される!
球は宙で破裂し、中から風が吹き荒れる。そして風は炎をいなし、無力化する。
この球は魔法を一つまるごと保存して使用できる消耗品。その名も「レスマジック」……自分のネーミングセンスがないのは分かっている。
そして今のはレイラの風魔法「テンペスター」を封じ込めた物だ。レイラに感謝しないとな。
「嘘だろお前、いまので倒れないのかよ!? それなら……エナジーソード!」
エギルは杖から謎のエネルギーを放出し、まるで剣のようにエネルギー状の刃を作り出す。
「マスター!」
「シル、分かってる!」
あれにまともに当たれば軽症ではすまない、下手したら死ぬ!
シルは金属の棒を取り出し、僕に渡す。僕はそれを受け取り、構えを取る。
「あん? そんな棒一つで何ができる!」
エギルは意に介さず、そのまま僕に杖を振り下ろした。
だがそれは僕の持つ金属の棒によって防がれた。この棒こそが、僕の切り札。避雷針だ。
この国の雷は魔力を帯びている時があり、その時の破壊力は凄まじい。それゆえ、非常に強度の高い避雷針が必要となる。
そこで僕が開発したこの避雷針は、強度最高の金属、キーニウムを使用している。そして更にこの避雷針は防御魔法も搭載されている。
つまるところ、防御特化の魔道具だ。これにシルのサポートを加えることで、近接戦闘ではかなり強く出れる。
「な、何で防がれてんだよ畜生!」
エギルは怒りの余り杖を出鱈目に振り回すが、全てシルの力で先読みされ防がれる。
そして僕はエギルの隙をつき、杖を彼の手から叩き落とす。
「しまっ……ぐはぁっ!」
エギルが反応した瞬間、僕の避雷針が彼の土手っ腹に命中し、彼は気絶した。
「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1決闘終わり! アレスの勝ち!」
「よしっ!」
正直、総一朗君のアドバイスを活かしきれていたかは怪しいが、勝ちは勝ちだ。
「おめでとう! まあ勝つとは思ってたけどね」
「ありがとう、ちょっと待ってて」
レイラがこちらに駆け寄って来て、タオルを渡してくれた。僕はそれで体を拭くと、倒れているエギルに近づいていく。
僕はエギルに気つけをすると、そっと手を差し出す。エギルは僕を一瞬睨んだが、大人しく僕の手を握り立ち上がった。
「次は負けない」
エギルはそれだけ言うと、足早に決闘場を後にした。エギルの取り巻きは後を追うように走り去って行った。
「あいつ、珍しく素直ね。何故かしら?」
「んー、あいつは良くも悪くも頑固だからな。決闘の結果には従う。それだけだと思うぞ」
レイラの後ろからひょいっと総一朗君が現れる。元々、エギルと総一朗君はそこまで仲は悪くない。そんな彼が言うのだからそうなのだろう。
「ふーん、なんかそういう所だけは好感を持てるわね。まあとにかくこれであいつらももうアレスをいじめないでしょ!」
「だといいけどね。まあとりあえず早く帰ろうか」
僕がそう言うと、二人はなぜか目を丸くする。どうしよう、僕何か変なこと言ったかな?
「いや、ただ帰るわけないだろう? 打ち上げだ打ち上げ」
「え……それ今日じゃなくてよくない?」
普通そういうのは別の日にやるものだと思うんだけど。僕の常識がおかしいのかな?
「駄目よ。鉄は熱いうちに打てって言うでしょ? お金は総一朗が全額負担してくれるから」
「ちょっと待て冗談だよな?」
総一朗君が酷く慌てた顔でレイラの両肩を掴む。総一朗君の家は貧乏らしく、そのせいか彼はかなりの節約家だ。
総一朗君自身は大会の賞金などでかなりお金は持っているが、そのほとんどは貯金と実家へ送っているらしい。
「ふふ、そんなにビビらなくても大丈夫よ。割り勘にするから」
「待て。それお前が一番と……」
「さあ行くわよ二人共!」
レイラは総一朗君の言葉を遮り、僕を引っ張っていく。この子、完全に押し切る気だ!
こうして僕達はレイラに連れて行かれ、打ち上げを強硬することになった。
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