7 オール1の退学
俺は入る予定だった学校を退学することになった。
学校の入学式は俺が入院している間にとっくに過ぎており、長期欠席自体は理由を学校側も把握しているため問題にはならなかったらしいが、問題は俺の『ステータス』だった。
俺が得た【ユニークスキル】『トレーニングルーム』によって、俺の全てのステータスは「1」になった。
それでは入学の最低要件も満たさないという。
退学と言うより、入学の取り消し、というのが正しいかもしれない。
手紙で妹に謝られた。
『抗議したけど取り合ってもらえなかった。力になれなくてごめん』
と。
こっちこそごめんなさい、だ。
これでちゃんと稼げる兄貴どころか、中卒ニート兄貴の誕生だ。
妹の方は頭の出来も良く名門の学校に入学したばかりだというのに。
俺のヘマのせいで学業に影響が出ていないか心配だ、と手紙に書くと、「その程度で成績に影響が出るような弱っちい妹じゃありません」と返事が返ってくる。
でも妹の性格上、それが強がりだってことはわかってる。
前に面会を許された時、ほんの少しだけ痩せていた。
せめて、早く帰って元気な姿を見せてやらなければならない。
「……あと、少しだ。あと少しで帰れる」
この調子で快方に向かうなら、あと少しで退院できると主治医の先生には言われた。
相変わらず俺のステータスは全て「1」のままだったが、原因は不明なものの自分で動けることは客観的に確認できるので、患者の希望があれば退院は可能ということだった。
やっとベッドの上で上体を起こし腕を動かせるようになった俺は、退院の同意書類に自力でサインした。
俺は殆どの時間『トレーニングルーム』にいて病室には不在で病院食もいらない為、いくらか割引してもらっているらしいが、ベッドだけの入院費用も馬鹿にならない。
だからなるべく、すぐに出て行く必要があると思っている。
幸いもう目処は立っている。
『トレーニングルーム』での俺のステータスはこうだ。
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御山深人【レベル】1
【筋力値】 23 (* 18.2352)
【体力値】 25 (* 16.8996)
【魔力値】 10
【精神値】 18
【敏捷値】 26 (* 18.7752)
【幸運値】 19
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現実世界では未だに俺のステータスは全て「1」。
少し前の俺なら絶望していたことだろう。
でも、今や現実世界でもちゃんと立って歩けるまでになった。
俺のステータスカードの右側の数値は俺以外には見えないらしく、医者の先生は首をかしげるばかりだが、理屈なんてどうでもいい。
あと少しで家に帰れる。
これ以上、妹に心配をさせなくて済む。
俺にとっての事実はそれだけで十分だ。
まだまだ日常生活を満足に送れるとは言えないが、ここまで来たんだ。
あと、もう少し。
あともう少しだけ頑張ればいい。
そうすれば俺は家に帰れる。
「……帰ったら、絶対、美味い飯を食わせてやるからな」
この一ヶ月と数週間、たった一人で頑張った美羽をねぎらってやらなければならない。
その希望を糧に俺はさらにペースを上げて『トレーニングルーム』でのトレーニングに励んだ。
(総合日間4位になりました。ありがとうございます)




