牛丼チェーン店のお味噌汁
バブル崩壊で就職が大変だった頃、やっと牛丼チェーン店に入社した時の事です。
未経験で入社したものの、店長や先輩に色々と教えて頂き少しずつ戦力になっていきました。
仕事を覚えると、アルバイトの教育を始める事になりました。
アルバイトの教育はマニュアル通りに教えて、項目ごとの仕事が出来たら10円ずつ時給がアップするので、抜き打ちで行う検定は緊張感をもってやっていました。
その項目の中で、味噌汁をよそって提供してから、お椀の中の味噌が沈む前に、お客様が一口飲めば時給アップというのがありました。
それが検定にある為に、提供後のお客様の味噌汁の中を、教育係りが覗き込むというのも疎ましい事でした。
味噌汁を熱いうちに召し上がって頂きたいという趣旨は分かるものの、こればかりは時の運でした。
ですので、なるべく恰幅のいい男性の時にその検定をしていました。
ある日、味噌汁提供で時給アップが望まれるお誂え向きの男性が来店されたので、急いでチェック表を取りに行きました。
そして、新人バイトの女子高校生を呼んで、その方に直ぐに味噌汁を持って行かせたのです。
しかし、なかなか飲もうとしないのでフォローする事にしました。
「お客様、お味噌汁の温度が適温かどうか一口飲んで頂けますか?」
そう伝えてるよう、新人バイトに指示して行かせたところ、お客様が怒ってしまい、
「そんなの俺の勝手だろ、俺のタイミングで飲むからさっさと失せろよ!」
と、怒鳴りつけてきたのです。
新人バイトは、それが余っ程怖かったのか涙目になって堪えていましたが、この日を最後に辞めてしまいました。
この日を境に、味噌汁提供の検定は恰幅のいい男性に拘らず、なるべく人の好さそうな方にすることにしました。
一方、アルバイトの中には、かなりふざけた奴もいました。
味噌汁を作るには、大型の計量カップで味噌を規定の分量でお湯に溶いて、具を入れて混ぜ合わせるたら寸胴に移して90℃に設定したウォーマーに乗せておきます。
それを、ふざけて200℃に設定して、味噌汁の寸胴をウォーマーに置いた新人バイトがいて、まるで地獄谷みたいになっていた時がありました。
この時、試しによそってみましたが、熱くてお椀が持てませんでした。
説教はさておいて、結局は作り直す羽目になりました。
こういう事をやるのは、大概男子高校生でした。
今の時代だったら、さぞかしヤバかった事でしょう。