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4 ★系投稿者C

ボロい会社の独身寮。

本日も知識の浅い独身男子二人によるどうでもいい話が始まる。



「始まりました。レビューレビュー第3回」

「レビューレビュワー、メガネです」

「同じく、短髪です」


「今回のレビュー対象はこちら、‘★系投稿者C’です」

「★系というのは?」

「まぁそう急がずとも、すぐに分かります」

「む……」

「改めまして、今回のレビュー対象‘★系投稿者C’についてです。以降Cと表記させていただきます。敬称がないのはご了承ください。さて、この方の動画投稿傾向についてです」


「ちょっと待ってください。例の言葉は言わないのですか?」

「例の言葉というと?」

「前回有能だという結論に至った、あの言葉です」

「ああ、‘ネタバレ注意’ですか?」

「そう、それです。責任回避のために言うべきでは?」

「そうですね。はい、これ以降は‘ネタバレ注意’です」

「……どうでもいい感じで言いましたね……」


「今回の話にはあまりネタバレはないんですよ。ですが、ある意味ネタバレが記載されているので、なろう漫画レビューを批評家目線で視聴されている方はブラウザパックしたほうがいいです(一文矛盾)」

「批評家目線はダメって、じゃあ何目線で見ればいいんですか?」

「その話はまた後で。動画を視聴しながら話す予定です」

「えー?」

「まぁまぁ。今回のレビューを一言で言うと‘なろう漫画レビュー動画はなろう作品である’です」

「わかりました。では、よろしくお願いします」



再生する動画を選びます。



「メガネさん、分かりました。★系というのはサムネから来ているのですね?」

「その通りです。サムネに★が表示されていますね。各作品のレべルを要素毎に★の数で表現していると思われます。表紙の絵を半分、半分に★の数で投稿者の考える作品レベルを示し、一言を添える。これは非常に分かりやすい」

「なるほど、レビューの掴みとしてはグットポイントなんですね。この表示方法に対して何がご意見はありますか?」


「そうですね。強いていうなら、この★表示で視聴者に何を期待しているのかが分からないところが引っ掛かります」

「ん?さきほど、この★表示は分かりやすくていいと言いましたよね。視聴者としてはありがたいのでは?正反対の評価のように思いますか」


「動画のサムネを単体として評価した場合と、サムネを動画の導入として評価した場合、結果は異なります」

「ふむ?」


「まず、Cの動画を一覧で確認します。サムネから、星の数が確認できますので、星の数が多い方がレビュー対象作品のクオリティが高いんだろう、ということは容易に想像できますよね?」

「はい」


「では、短髪さん、このサムネ、どれをクリックして視聴しますか?」

「え?えーと……★の数が極端なものかなぁ?数が多いのは面白そうだし、数が少ないのは、逆に怖いもの見たさで興味が出てきた」


「なるほど。自然な判断だと思います。人は極端なものに惹かれがちですからね」

「逆に聞いてもいいですか?メガネさんなら、どれを視聴しますか?」

「私なら、何も視聴しません」

「は?」


「だって、レビューがサムネの時点で完結しているじゃないですか。わざわざ動画を再生する必要ありますか?」

「いや、それは……ええ?」


「すいません。ちょっと意地悪でした。ですが、そういうことです。このサムネはレビュー対象作品の評価表示という点では素晴らしいですが、ご新規さんに動画を再生させる呼び水としては弱い。さらなる興味を持たせて動画をクリックさせるための呼び水となるのは一言コメントによる煽りですが、その部分は他投稿者と似たようなものですからね」


「じゃあ、どうしてCはこんなサムネを作成しているのでしょうか?」

「そこは投稿者の心を推測するしかありませんね。容易に推測できるのは、他投稿者との差別化のためではないでしょうか。以前レビューしたA,Bと同じような構成にすると埋もれてしまう」


「ふむ。なろう漫画レビュー投稿者は多いですからね。動画が一覧になったとき、自分の動画に特徴を作りたいと思うのも頷けます」

「有能なサムネであるが故にその動画をクリックさせる誘導力、呼び込む力はそこまで強くない。投稿者に思い入れのない視聴者の立場で言わせてもらうと、むしろ、この投稿者さんはこう思っているのか、では、他の投稿者さんはどうなのか、という発想に至る可能性もある。そういうサムネであると言えます」

「サムネもなかなか奥深いですね」



動画を開始します



「さて、今回は適当に一つ動画を選択して開始しましょう。短髪さん、一つ動画を選んで再生してください」

「はい。ではこれにしましょう。……始まりました。レビュー対象のタイトル読み上げ。テンプレとはいえ、この作業は必要ですね。いいでしょう」


「はい。注目すべきは次です」

「次……。お、いきなり漫画の切り抜きのようなものが表示されましたよ」

「はい。レビュー対象の漫画そのものですね」

「これは、いいんでしょうか?権利的に考えて」

「さぁ?」


「いや、さぁ?って……我々がレビューするのはレビュー動画の舞台装置についてですよね?画面表示がどうなのかというのは立派な検証テーマでしょう?」

「レビュー技術的な意味で評価すると、レビュー対象そのものを画面上に表示しているのですから、分かりやすいのは間違いありません。これで、著作権、権利的なものがクリアされていれば、の話ですが」


「ですから、その権利的なものについてのうんちくは……?」

「ここでは説明できません」

「ちょっと!!」

「そのあたりの話は法律的な解釈なり、各出版社や作品のポリシーが関係してきます。また、各動画投稿者さんが個別に許可取ってる可能性もありますので、下手なことは言えないのです。ごめんなさい」


「使えない奴だぜ」

「返す言葉もございません。ただ、この方は、動画の最初の方でストーリーをかなり詳細に説明しており、その際に漫画の画面を多用しております。これは許可を取っているからできるのだと思います。もし許可を取っていないのであれば、あまりにも……悲しい」

「悲しい?」


「リテラシーの問題ですね。感想ブログなども同類ですが、例えば……少し前に問題になったファスト映画、短髪さんはどう思いますか?」

「映画を10分くらいにまとめているものですよね?あれはダメでしょう?著作権の侵害です」


「ふむ。では、ファスト映画がBANされて漫画レビュー動画が生き残っている理由は?」

「それは、目的の違いではないでしょうか?ファスト映画は映画の中身そのものを説明している。それに対して、漫画レビューは漫画の中身ではなく、そこに対してどう思ったかを説明しています、その違いではないかと」


「なるほど、それは一つの解釈になるでしょう。私もその意見には賛成です。では、それを考慮したうえで、この方のレビュー動画に実際の漫画の画像を使うという手法はどうですか?」

「……なかなかグレーな所を責めていますね。漫画そのものの絵を使って、ストーリーの詳細を説明ですからね。許可を取っていなければBANされかねない」


「ええ。通報されたらBANされるようなことはやめて、投稿者の皆さまには、そのあたりのリテラシーを持って投稿して欲しいものですね。そういう意味で、第1回にレビューした投稿者Aは素晴らしいと言えます」



~動画視聴中~



「メガネさん、私、思ったことがあるのですが」

「何ですか?短髪さん」

「これまで視聴してきた、A,B,Cという3名の投稿者ですが、レビュー内容が似ています」

「ほう。例えば?」


「表題と主人公の行動が矛盾している。女の子が主人公に速攻惚れる流れにご都合主義を感じる。主人公の言動や設定、地の文に作者の勉強不足や思想が見えて気持ち悪い。漫画の描き手が原作を生かして/殺している。漫画は上手/下手。……こんなところですね」

「なるほど。確かにその通りですね」


「どうして、こんなにも内容が似通るのでしょうか?」

「それはですね、それが‘なろうレビューテンプレ’だからです」

「‘なろうレビューテンプレ’?」

「はい。その内容を入れておけば、とりあえず視聴者は満足する。そういうテンプレです」


「そんなものが?」

「あります。考えてみてください。多くの作品をレビューすることになるのですよ。投稿者のレビューの軸がぶれていては話になりません。視聴者に動画内容についてツッコミを入れられてしまいます。それでは投稿者自身が行っている‘なろう漫画レビュー’と同じです。鋭い視点からツッコミを入れたのに、そこにツッコミを入れられると、投稿したレビューはレビューではなくコメディになってしまいます」


「そういうコメディ的炎上を狙って投稿する方がいてもいいと思いますが」

「そうですね。むしろ、レビュワーが飽和状態にある現状、炎上芸で稼ぐのはアリだと思います。ですが、多くの投稿者さんがテンプレに沿っている。この現状をどう解析するか、です」


「ほう。というと?」

「すぐに思いつく原因は2点あります。一点目は、投稿者の都合です」

「投稿者の都合……」

「レビュー投稿者は定期的にレビューを投稿しています。色々なレビュー対象に対して、一つ一つ独自の視点なんて持っていては動画投稿ペースに間に合いません。どういう基準で、何についてレビューするかを決めておいた方が楽です」


「なるほど。話す内容を事前に決めて置けば、動画のプロットが半分できているようなものですからね」

「はい。もちろん、同じことばかり言っていれば視聴者もワンパターンで飽きてきます。投稿者の皆さんは、自分の言葉で説明する際、本当に色々な言い方を考えてらっしゃるな、と感心します」


「同じことを言っているのに、表現は違う、と」

「そういうことです。例え話を多用される方がいますが、あれはとても重要なテクニックです。例え話にすることで、同じ内容を違う視点で言っているように偽装できますから」

「なるほど。……で、もう一つの原因は?」


「それは、‘それが視聴者の要求だから’です」

「視聴者の都合、ですか」

「はい。投稿者としては動画を投稿するわけですから、視聴者に再生してもらうことを目標にします。当然、視聴者の意向が与える影響は大きい」

「ふむ」


「前回のレビューでも言いましたが、レビュー動画の視聴者は、レビュー動画を購入の参考にしようなどとは考えていません」

「では、何のために」

「私が推測するに、それは‘自分が気持ちよくなる’ためです」

「‘自分が気持ちよくなる’?」


「自分はなろう漫画を読んで喜んでいるような低能ではない。冷静になろう漫画をレビューでき、矛盾点を発見、理解できるほど有能である。そういう自分を実感したいのです」

「……また、色々なところを敵に回す発言ですね」

「……はい、私もそう思います。ですが、なろう漫画レビュー動画を見れば見るほど、そういう思いが強くなりました」


「理由を教えてもらってもいいですか?」

メガネがそう思ったから、というのが理由なのですが……では、ちょっと深掘りしてみましょう。そもそもの発端は、上に述べたような項目(表題と主人公の行動が矛盾している。女の子が主人公に速攻惚れる流れにご都合主義を感じる。主人公の言動や設定、地の文に作者の勉強不足や思想が見えて気持ち悪い。漫画の描き手が原作を生かして/殺している。漫画は上手/下手。)について評価しているからです」


「ふむ?」

「例えば……貴方はドラ〇もんという漫画を知っていますか?」

「知っています。国民的漫画です」

「あれ、なろう漫画レビューと同じ視点で評価するとどうなると思いますか?」

「……酷評でしょうね」


「どうしてですか?」

「だって、そもそもロボットの設定自体に無理があります。あんなのが町中にいたら、あっという間に話題になってマスコミのおもちゃですよ。不思議道具一つで世界が変わる。にもかかわらず不思議道具を小学生レベルで悪用する話ばかり。回りの大人や主人公関係者の知能にデバフがかかっているとしか思えません。世界大戦が起こるようなガチの悪事や金儲けには使わない。リアリティがありません。作者によるご都合主義です」


「ですが、そんな視点でのレビューは、あまりありません」

「まぁ、昔の作品ですし」

「そういうことです。’作品‘には’無意識の前提‘があるのです。上記の例だと、小学生向けの作品である、というような。そして、’なろう作品’にとっては‘なろう作品である’がその‘無意識の前提’にあたります。そして’作者’サイドと‘レビュワー’サイドの‘無意識の前提’は多くの場合異なる。」


「無意識の前提……」

「‘作者サイドは‘ざまぁ’や‘俺つえー’、‘ハーレム’を前提にしているが、レビュワーサイドはその部分は当然とみなし、さらに物語の整合性を求める」

「どうして?」

「そこが、批判しやすいからです。なろうには誰でも投稿でき、‘ざまぁ’や‘俺つえー’要素が分かりやすいものがランキング上位にくることが多い。つまり多少技術力に劣る物書きでも上手くいけば一発当てることができる。ですが、結局は毛が生えた素人。物語に穴は多い」


「ふむふむ」

「多くの場合、そこに穴があると分かっているのであれば、それをテンプレにすればよい。投稿者がもともと考えていた‘なろうレビューテンプレ’に即した動画を作りやすいのです。投稿者は物語の整合性が取れたなろう作品など求めていない。自分が話したいこと、視聴者が求めていることが先にあり、そこに従って作品を批評するのです」


「なるほど……ちょっと待ってください!これまでの話は視聴者が‘自分が気持ちよくなるため’に動画を見る理由にはなっていませんよ」

「そうですね。少し遠回りをしてしまいました。視聴者が動画を視聴するのは、視聴者の分身であるレビュワーが正論でなろう漫画をボコボコにしているからです。正論で相手を叩きのめすことほどスカッとするものはありません。それは、なろう小説ランキングの上位をみていれば疑いようはありません」


「そうですね」

「そして、メガネでもなろう小説には物語の整合性に難があるだろうな、ということが予想できる。なろう漫画レビューを多く見ている視聴者であればもっと容易に予想できるでしょう。物語の不整合を叩くという、変わり映えしないレビュー動画であると予測できる。そんな動画を見る理由に‘自分が気持ちよくなるため’以外が思いつかなかったのです」


「うーん。私たちの推察力の限界ですかね……」

「このあたり、読者の皆さんの意見を聞いてみたいですね。……皮肉なことに、なろう漫画の主人公がやっていることを、なろう漫画レビュー投稿者、視聴者がやっているんですよ。微妙にツッコミどころを残しつつ、正論っぽい意見で悪と認定した何かを断する。まさになろう小説です」


「視聴者は、投稿者に自分を重ねている?」

「はい。私はそう解釈しました」

「異論がありそうな意見ですね」

「もちろん、この最後の部分に関してはメガネの意見です。違う意見である、という方はぜひコメントいただきたいです」

「感想、おまちしております」



~動画視聴中~



「と言っている間にCの動画が終わっていますね。どうですか?感想は?」

「いいんじゃない?しらんけど」

「……意見に対しては意見を述べないこの姿勢、ゆるぎねぇな……」



動画を終了します



「さて、今回のレビューレビュー如何でしたでしょうか」

「このなろう小説では、皆さまにレビューしてもらいたいレビューを募集しております」

「今回のようなしょうもない話ではありますが、レビューしてほしいという方、お待ちしております(嘘)。また、ブックマークや評価、感想がいただけると、我々が続きを書くモチベーションになります」

「最後に、今回の内容を総括すると…?」

「‘なろう漫画レビュー動画は本質的になろう作品と同じ’」

「「ありがとうございました」」


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