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~新世界の英雄譚~  作者: 宇良 やすまさ
9と2分の1章

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908.2-6「結果」

「〝宵闇現象〟の詳細はセレナが集めてくれるんだろうけど……。全部ひっくるめて、王国議会への報告は僕に任せてほしい……ってのが本題。で、その際にはリリィかセレナも同席してほしいんだよ」

「任務の責任者でもありますし、もちろんそういたしますが……。なぜわたくしたちを頼りに?」

「や〜……。結果だけ見ればさ? 大失態を犯したというか、なんというか……」

「厳しいことを言うようですが……同意せざるを得ません。わたくしはキラを信頼していますし、実際に胸の大きな手術痕を見ていますから、何かとてつもない事態に巻き込まれていたと納得していますが……。王国議会では、言い訳とみなされても仕方がないでしょう」


「その前にラザラスさんと、ローラ……様に、話を通すつもりではいるんだけど……。実際の議会ってなると、こう、冷静に話を進められるかどうか……」

「キラってば、レナード殿下に喧嘩を売るくらいですからね……。分かりました、わたくしたちがちゃんと手綱を握っておきましょう」

「……うん? 二人とも同席するつもり?」

「わたくしもセレナも、どう話が流れていくか間近で知っておかねばなりませんから」

「あぁ……。今から胃が痛いよ」

 冗談で言ったつもりが、本当にキリキリと痛み出す。リリィにバレないように布団の中で静かにお腹をさする。


「ってか……。アベジャネーダのほうにも顔出さなきゃだよね……」

「王国議会よりもむしろ、こちらのほうが問題かもしれませんわね。今回の一件は〝教国〟ベルナンドからの秘密任務……その思惑はひとえに、アベジャネーダに占領された領地を取り戻したいというもの。とはいえ、もとより戦争による領地奪還は否定的でしたから、〝宵闇現象〟により甚大な被害を受けた事実をどう受け止めるか……」

「うーん……。〝元帥〟が居合わせておいて……みたいな言い方される?」

「そこまであからさまな非難はないでしょう。ただ、そういった見方をされる可能性はあるかもしれませんわ」


「……もうさあ。三回死にかけたんだよ……? 首刺されて、心臓破裂して、そのあとも追い込まれて……。こっち戻ってからも戦い通しで……あの空の裂け目なんとかしたじゃん……。そりゃあ、深くは言えないんだけどさあ……なんだかなぁ」

「大丈夫ですわよ。わたくしたちがちゃんとフォローします」

 感情が声に乗っていたのか、リリィは心配するでも怒るでもなく、ただひたすらに寄り添ってくれた。ベッドにのりこんで、手を握りつつ、背中もさすってくれる。

 よっぽど嫌な言い方をしてしまったのだろうと少し反省したが、この際にキラは鬱憤をぶちまけることにした。


「っていうか、話と違うじゃん?」

「話、とは?」

「エステル……様から話を受けた時は、戦争は極力避ける方針、みたいな口ぶりだったのにさ。〝アルマダ騎士団〟……ていうか、〝なんたら哨戒基地〟の人たちがリケールの城を占拠しようとしてて……。それに合わせて行動しなくちゃいけなくて……。くそ」

「こら、はしたないですわよ。そういえば、かなり混沌とした状況でしたわね。――軽くおさらいしておきましょうか」

 何やら考え込みつつ提案するリリィに、キラは素直に応えた。


「まあ、細かいとこは正直ぼんやりしてるんだけど……。僕らが到着した時点で、アベジャネーダって国は分裂しかかってたんだよね。あの国は〝イエロウ派〟が中心で、その過激派があんまりにも攻撃的になってたから……それをよく思ってない人たちが、打開のために動いてた、って感じ」

「すでに内部分裂していた、ということですわね」


「で……なんだっけな……。ああ、そうだ。その〝反イエロウ派〟の中心にいるのが、〝アルマダ騎士団〟が立ち上げた〝アサシン〟。〝アサシン〟たちは〝イエロウ派〟過激派の暴挙が許せなくって……。〝哨戒基地〟の〝アルマダ騎士団〟と一緒に、秘密の侵攻作戦を推し進めてた……」

「今振り返ってみても難しい状況でしたわね……。そのうえで、〝バレンシア・ファミリー〟が動き出してましたから」


「ああ、そうだ……! 〝聖母教〟過激派の……! あれが原因で、アベジャネーダの裏社会を潰しておかなきゃって、〝マフィア狩り〟しなくちゃいけなくって……一週間寝る間もなかったんだよ。わぁ……思い出したら腹立ってきた!」

 あの時キラは、〝市民軍〟入りした新人としての昼の生活と、〝マフィア狩り〟をこなす〝赤目の少年〟としての夜の生活と、二重生活を送っていた。

 デモ行進直前には、歓楽街を牛耳る〝コアッツェ・ファミリー〟を壊滅させるという荒仕事もこなさねばならなかったり……。

 今思い出すだけでも、どっと疲れてため息が出てしまう。


「まあ、まあ。そのおかげで、少しばかり光明が見えてきましたわよ」

「ん……? こーみょー?」

「認識や連携の甘さを非難するというわけではありませんが……。それでも、ほぼ選択肢のない状況と判断を任されたことについて、きちんと説明をしてもらわねばなりません」

「っていっても……。あっちはあっちでがんとして認めないんじゃない? 〝宵闇現象〟による被害が甚大なのは事実だとかなんとか……」

「そこは流れによりますわよ」


「んー……どういうこと?」

「どのような形で、どういった面子が、話し合いの席につくか……。そしてわたくしたち竜ノ騎士団が、どのような姿勢であるかを示さねばなりません」

「わかんなくなってきた……。め、目が回る……」

「ん……。熱が上がってますわね。さ、横になって。催眠術をかけますわ」


 〝界域之神〟との戦いが始まってから、おそらくは一時間も経っていない。

 この短時間のうちに三回も生死を彷徨ったのだ……一生分の時間を使い果たしたようにすら感じていた。

 そのせいか、リリィの寝かしつけがなくとも、泥のように眠りについた。


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