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~新世界の英雄譚~  作者: 宇良 やすまさ
9と2分の1章

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897.1-11「反則」

「対話はなし、ね」

 キラは回避よりも分析に集中した。

 小さな盾に変形していた右手が元に戻り、かと思うと、その元に戻った手で左の手首を掴む。


「〝波動術〟もなし」

 抜刀でもするかのように腕を引き抜く。と、剣へ早変わり。

 ぎらりとした刃で振り向けてきた。


「――む」

 真っ向から受けて立つ。

 剣の軌跡を読み取り、正確に弾く――つもりだった。

 だが。


〈すり抜けた……っ!〉

 〝魂之力〟に類する〝力〟の発動には気を遣っていた。事実、門番に宿る〝気配〟には一つの揺らぎもなかった。

 というのに、剣がするりとすり抜けた。

 まるで幻かのように、一瞬だけ、一部分だけ、消えてなくなったのである。

 そうして〝センゴの刀〟をすり抜けた直後、実体を取り戻し――ざくりと胸を斬ってくる。


「反則級……!」

 もちろん、〝覇術〟で防いだ。〝波動〟の乗っていないただの剣にやられはしない。

 厄介なのはその後。

 胸を打つ衝撃に咳き込むのを我慢して、反撃を試みた。


 狙うは門番の右腕。

 寸分の狂いなく関節部を切り裂いたはずだったが、まるで手応えがなかったのだ。これもまたすり抜けたのである。

 こころなしか、石像のような門番の顔がニタリと笑った気がする。


「腹立つ……! 満足に力も出せないポンコツのくせに……ッ!」

 楽しそうだったのが一転し、門番の顔つきが険しくなる。

 今度は、彫刻のような義体そのものが変形する。ぎゅるりと渦巻きながら丸まり、蛇のような龍になった。

 間髪入れずに、その大きな口で噛みついてくる。

 胴体を食いちぎるように、ガブリ。


「力、強っ……」

〈踏ん張って!〉

「無茶言うよ……!」

 飲み込まれないようにするので精一杯。〝センゴの刀〟を突き立てたところで、即座に実体がなくなり手応えが消える。

 下手したらそのまま地面に叩きつけられそうだったが――おかげで、策が浮かんだ。


「――〝ショート〟」

 もがくフリをして、龍の牙にタッチ。

 そのまま〝雷”〟流し込む。


 ぎゃっ、と。声こそ出なかったものの、龍は大きく口を開けてうめいた。

 その隙に脱出して、ちらりと〝くまーの〟の様子を視界に入れる。なにやらぎゃあぎゃあと五月蝿いものの、なんとか戦えている。


〈変幻自在に実体をなくせるってのも厄介だけど……本当に面倒なのは、倒しちゃいけないってこと〉

〈だね。この双子の門番、普通の悪魔じゃなくって、〝魂之神〟と繋がってんだもん。追い詰めたら何が起こるか……こっちも本調子じゃないしさ〉

〈時間稼ぎ……。簡単に言ってくれるよ〉


 〝界域之神〟との戦いから始まり、〝混沌〟もなんとか切り抜け、ようやく帰ってきたと思えばまた戦い。

 快復しているとはいえ、心臓は壊れかけのまま。

 どうにかなりそうではあったが……状況的には好転しつつある。ブラックがリリィとセレナを連れてきており、各地で対処に当たってくれている。

 〝始祖〟の思惑がどうあれ、表舞台に出たくないその性格を考えれば、〝宵闇現象〟以上のことは起こらないはず。


「さぁ……。もう一踏ん張り」

〈うん。頑張ろう〉

 ネメアたちと言い、リリィたちと言い……。安心して背中を預けられるその頼もしさは、何にも負けない原動力になりつつあった。


   ○   ○   ○


 今にも〝紅の炎〟が暴れ出しそうなほど、リリィは怒っていた。

「ああ……それにしても。ここは新鮮な魂が豊富なのね。かわいそうに……」

 謎の魔女が、言葉ほどの慈悲を見せることもなく、〝力〟を使う。パイプでタバコを吸い、ふうっと周囲に吹きかけると、次から次に人魂が姿を表す。


「このワタシが、ちゃあんと、使ってあげましょう」

 魔女は、人魂たちに見せつけるようにして顎をしゃくる。

 すると、人魂は命令に応えるかのように瓦礫に入り込み……悪魔の姿に変身した。


「外道ですわね……! 何度そうして尊厳を踏み躙れば気が済むのですかっ」

「あらぁ。アナタが言えたことではないんじゃない? 何度も焼き払って……死人に二度死ねと言っているようなものよ?」

「……っ」

 人魂が実際のところなんなのか。本当にヒトの魂なのか。

 まだ何もかもが謎に包まれているが……魔女の言葉を真実とするならば、筆舌に尽くしがたいほど悍ましい。


 魔女は、人魂を使役する。

 それも、何か大きな災害に見舞われたリケールで散った命を糧にして、悪魔を造り出してしまうのだ。

 すなわち。今こうして目の前で次々と現れる異形の化け物たちは、リケールで普通に暮らしていた無辜の民かもしれないのである。


「なぜ、キラを狙うのです。目的は?」

 感情に任せたいところをグッと堪えて、リリィは頭を回した。

 一番手っ取り早いのは、〝錯覚系統〟で催眠術をかけること。

 数回試してみたところ、悪魔にも脳みそがあるのか効果はあった。

 が、魔女がそれを解除してしまう。全てを一気に眠らせても意味がなかった。


「もちろん、〝神殺し〟の大罪人だからよ。捕まえて、拷問して、殺す……当たり前でしょう?」

「〝神殺し〟……? 大罪人……?」


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