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~新世界の英雄譚~  作者: 宇良 やすまさ
第9章

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861.つつみ

「チッ……!」

〈硬いか……!〉

 ただ、〝神の力〟を封じ込める天使の義体が、やわなわけがない。

 〝波動〟を纏った〝ペンドラゴンの剣〟が、いとも簡単に弾かれる。


「〝コード〟」

 エルトがすかさずフォローに入る。

「〝ゴリラ〟」

 〝センゴの刀〟を納刀しつつ、空気を踏んで急接近。


「〝コング――」

 先ほどのカウンターを警戒し、攻防一体の〝波動術〟。

 空中に作り出したのは、巨大な〝雷の両腕〟。

 エルトが右腕を振りかぶれば、右の〝雷の腕〟も振りかぶり。左腕でガード体勢に入れば、左の〝雷の腕〟も同じ動きをして、エルトを守る壁となる。

「――ナックル〟!」


 右の〝雷の腕〟で、勢いよくぶん殴る。

 ブラックの体勢が崩れるそのタイミングで、拳が届いた。

 〝キューブ〟の横っ面を叩き、バリバリバリッ、とすさまじく〝雷〟が暴れる。


 合わせて、ブラックの分身体も突撃。

 別の角度から、〝雷〟が暴れる面に攻撃を入れる。


〈壊れない……!〉

 タネも仕掛けもない、シンプルな硬さ。

 その事実こそに、挫けそうになる。

 しかしそんなことではすぐに死んでしまう。一瞬の迷いですら命取り。

 キラはすぐに思考を切り替えた。


〈エルト、交代!〉

「――ごめん、〝雷〟、ほぼ使っちゃった!」

 問題ない。

 それを伝えるためにも、スイッチした瞬間にオリジナルの〝コード〟を使う。


「〝術式:流転〟」

 ネメア考案の〝雷〟回収方法——

「〝雷鼓〟」

 〝雷〟の塊をドローンのように展開し、周囲から少しでもエネルギーを吸収していく。

 〝雷鼓〟一つにつき、十パーセント――今はまだ五つしか同時に溜められないが、この段階で〝お守り〟の貯蓄分を使い切るよりかはまだマシ。


「ふうっ――」

 〝雷〟の回復手段を取りつつ、一瞬の間に脳みそをフル回転させる。

 〝キューブ〟も天使の義体も硬すぎる――〝神〟もそれを分かってか無理な攻勢には出ない――かと言って攻撃一辺倒になればカウンターに対処しきれない。


 ただ、隙はある。

 〝キューブ〟の表面に出来た、わずかな歪み。〝雷の神力〟と〝闇の神力〟が効いているという証拠。

 その歪みの治りが、遅くなっている。

 たとえそれがブラフだったとしても、利用しない手はない。


 とはいえ、このまま〝神〟が黙って様子見をしているとも思えない。

 自ら〝神の力〟を封じているのであれば、どんなタイミングであろうと解除は可能であり……段階的に力を解放していくことも考えられる。

 ――攻め手を変えねばならない。


「ブラック!」

 キラは納刀状態の〝センゴの刀〟に〝波動〟を流し込みつつ、簡潔に伝えた。

「この空域の制圧を最優先!」

「――承知」


 ブラックが天使から離れ、入れ替わるようにしてキラが肉薄――天使の背後を取った。

 一瞬で、〝キューブ〟の状況を読み取る。

 間近で見ると、〝波動〟の密度が凸凹に乱れている。マーブル模様にうねり、修復作業を行なっているのだ。


 最も薄いところに目をつけて、

「――〝居合:閃〟」

 ほぼゼロ距離からの、〝飛ぶ斬撃〟の抜刀術。


 刀に乗せた〝波動〟を鋭く飛ばして〝キューブ〟を割り。

 その一瞬後に、〝覇術〟の浸透した刃で内側へと潜らせる。


 そうして、〝神〟を斬った。

 〝覇術〟の乗った〝センゴの刀〟は、天使の義体に大きな傷をつけた。


「人間風情が……!」

 〝亜空の神〟も、流石に動揺を隠せない。

 その隙は、見逃せない。

 本命を叩き込む。


「〝雷――」

 〝雷鼓〟を引っ掴み、

「――業〟!」

そのままぶつける。


 一割ほどの威力でしかなかったが、効果は十分にあった。

 〝キューブ〟を粉々に壊し、〝神〟の体を〝雷〟が貫く。


 惜しむらくは、なおも〝神〟は対処してきたということ。

 咄嗟に小さな〝キューブ〟を張って心臓を守り、〝雷業〟の直撃を免れた。


 ドンッ、という爆発にも似た雷鳴が、天使の肩を穿つ。瓦礫が崩れるかのように、がこ、と左腕が落ちていく。


「くそっ……!」

 この一瞬で得るものは多くあった。

 〝キューブ〟の歪みは、囮などではなく明確な弱点であるということ。

 義体は〝波動〟には強いものの、〝神力〟には弱いらしいということ。

 義体は何か別の〝神力〟で造られており、いますぐに修理できるものではないということ。


 〝亜空〟の力さえなんとか抑え込めば、撃退できる。

 その千載一遇のチャンスを、たった今、逃してしまった。

 戦いは、次の段階へと移行する。

 同じ手は……戦い方は、二度と通用しない。


「よもや……。このような低位の〝界域〟にて……。力を使わねばならんとは……。面倒な」

「……低位? 〝界域〟?」

「――身の程を知れ。俗物」 

 左腕を失った天使から、〝波動〟の流れを感知する。


 キラは反射的に防御面を張り巡らせたが――

「まずは――ソレが邪魔よな」

 この一瞬では、〝センゴの刀〟にまでは意識が向かなかった。


 蛇が絡み付いたかのように、刀身のなかほどに小さな〝キューブ〟が張り付く。

 びきっ、と。

 イヤな音が響いた。


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