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~新世界の英雄譚~  作者: 宇良 やすまさ
第9章

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851.照

「それで……。三種類の〝魔素〟が見つかった、っていうのは?」

「〝波動周波数〟にはさ、それはもう何億っていう膨大なパターンがあるわけだけど……人だけが持ちうる周波数、っていうのもあるわけね。言うなれば人由来の周波数に、二種類の〝魔素〟が反応したわけ。あとひとつは自然由来のものね」


「人由来が二つに、自然由来が一つ……。んー……? じゃあ、外から吸収したものがそのまま残ってるものがある、ってこと?」

「そういうことだね。外から〝魔素〟を取り込んだものの、うまく自分のものにできてないカンジ。エルトくんもちらっと言ってたけど、〝魔素〟と〝神力〟は磁石みたいな関係らしくってさ。たぶん、取り込めなかった分は、そのまま排出されるんじゃないかな」

「ってことは……。〝治癒の魔法〟を目一杯に受けられる方法はなさそうだなあ……」


 エルトと親子のような関係にあるキラではあるが、彼の方は随分なリアリスト。徹底的に現実から目を逸らさない。

 悔しそうに唸りつつも、ひとつ呼吸をしてすぐに切り替えた。


「で……。人由来の〝魔素〟が二つあるってところ。一つは、普通に考えて、人に適合した〝魔素〟なんだろうけど……。もうひとつは?」

「答えはもう出てるよ。そのもう一つが、〝妖力〟なんだよ。名付けるなら〝魅了の妖力〟だね」

「え? ……ああ! えっ?」

「ふふ。確認は簡単だったよ。なにせ、私がキラくんの肌に触れただけで、〝妖力〟が強制発動されたんだから。しかも、〝妖力〟が〝波動周波数〟に合わせにいってたんだから……そりゃあ、コントロールも難しいよ」

「い、色々ビックリだけど……。パンツ以外脱がされたのって、やっぱあのためだったの……」


 キラが微妙な顔つきをして、ネメアがそれを笑う。放心状態だったエルトもハタとして意識を取り戻し、興味津々で会話に入る。

 そんな三人の様子に、ブラックは今までにない感情を抱いた。

 ただそれが一体なんなのかわからず……考え込んでいるうちに、話が前に進んでいた。


「キミたちのいう〝妖力〟は、ただ一つの魔法にのみ特化した力だと考えて間違いないよ。そしておそらく、〝覚醒〟ともいうべき幅の広がり方がある」

「……! それ、ここに来る前に……この時代に飛ばされる前に、ちらっと聞いてさ。〝覚醒〟?」

「〝波動周波数〟を当てて探したって言ったじゃん? で、三種類の〝魔素〟を見つけたわけだけど……それぞれ反応の仕方が異なってたんだよ。まず人由来のを見つけて、次に自然由来の。この二つは複数パターンに反応したんだけど……〝妖力〟はそうじゃなかったんだよ」


「その反応の仕方に、広がり方を感じた?」

「そ。さっきからパターンって簡単に言ってるけど、周波数帯のことを言っててね。一から十までをとりあえず一緒くたにまとめて照射、ってカンジで割と大雑把なんだよ。他の二つは一から十まで割と均等に反応したけど、〝妖力〟はランダムでね。反応するところもあればしないところもあって、一秒前まで反応してたのに消えるってこともあったの」


「ふん……? ようは、その周波数帯ってやつを把握して、全部に反応できるようにすればいいんだ?」

「言葉にして言えば、そうなるね。なんでそんなに不安定なのか原因がわかれば、一発な気もするんだけど……。時間がね」

「いやあ、これだけわかれば十分さ。それで、結局のところ、〝波動術〟を使わないとコントロールはできない?」

「十中八九。だから当面の間、〝魅了の妖力〟と〝殺し合いの定め〟を目標に定めて、〝波動術〟体得に向けて動いてくカンジかな。たぶん〝魅了〟を重点的に試していくといいよ」


「? なんで?」

「さっきも言ったように、普通はこっちが〝波動周波数〟を合わせていくところを、〝魅了〟が自ら合わせにいってるんだよ。オート発動。ってことは、感覚的に〝波動周波数〟が動いてることを認識できるはず。そこから掘り下げていけば……」

「けど……。それって、協力者が必要でしょ? ネメアが手伝ってくれるの?」

「う〜ん……残念なことに、私も忙しい身でね。顔を見せることはできるし、手伝いもするけど……。う〜ん……」

 ネメアはひどく葛藤し、頭の中でいろんな計算で、うんうんと唸った。しかし結局は、人類存亡をかけた戦いを前に諦めざるを得なかったようだった。


「あの甘美な感覚を別な女の子に奪われちゃうの、ホントはイヤなんだよ。イヤなんだけど……。仕方がないから……。他のコたちをちょくちょく連れてくるよ」

「そ、そんなに……? いったい、どんな……いいや。聞きたくない」

「聞きたい? ホントすごいんだから……!」

「嫌だ嫌だ嫌だ……!」


 異性ということで何か後ろめたいものを感じているのか、耳を抑えるキラ。しかし、エルトはその逆であり、自分が体験できない感覚について興味があるらしい。

 結果、声にならない声で喚きながら、耳を掌で塞いだり開けたりするという、気が狂ったようなキラの姿が出来上がり……。

 ブラックは、フ、と口角が持ち上がったのを自覚した。


   ○   ○   ○


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